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住宅&住宅設備トレンドウォッチ

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住宅新商品トレンド 都市部では多層階、郊外では平屋の人気が高まる

INDEX 2018.3.16

最近の大手ハウスメーカーの新商品動向の一つのテーマは、都市、郊外といったエリア毎のニーズ対応力強化です。これまで価格面では、高級商品から普及価格帯商品まで用意し、幅を利かせた訴求をしていますが、エリアによって偏りのあるユーザーニーズに対しては、多層階商品や平屋商品を商品ラインナップに揃えるケースが増えています。
国土交通省の「建築着工統計」によると、居住系建築物における3~5階建ての2016年度住宅着工棟数は41,762棟。消費増税を実施した2014年度以降、堅調に推移しており、4~5階建てに限定すると、2013年度実績を上回る3,666棟でした。これは2015年度の相続税改正により、下層階に賃貸住宅やテナントを設ける賃貸併用型のニーズの高まりが現れた結果と言えるでしょう。
2016年度の1階建て着工棟数に関しては、3.8万棟でした。全居住専用建築物の棟数におけるシェアは8.4%。この割合は2010年以降、年々増加しています。特に人気が根強いエリアは、九州で27.1%、次いで四国が13.8%となっています。このエリアでは台風被害が多いことから、風の受けにくい平屋がユーザーから好まれてきましたが、暮らしやすさや適度な広さといった面からも、平屋ニーズが増加しているようです。 今の住宅トレンドとして、都市部は多層階、郊外は平屋といったように、住宅の階層もエリアによって二極化していると言えます。

1都市部向けの多層階商品~狭小地でのニアリーZEH、法的規制にフレキシブル対応、賃貸併用では音に配慮

積水化学「デシオ アーバン」

都市部向けに、ハウスメーカーは3階建以上の多層階商品を強化しています。
都市部は地価が高く、狭小地での住宅建設となるケースが多いため、居住面積に関しては住宅を縦に伸ばすことで確保していますが、ZEHに必要な太陽光発電システムについては容量が小さくなる傾向があり、ZEH達成のハードルが高いというのが実情です。そんな都市部の狭小地でもZEHを目指すべく、開発されたのが積水化学の「デシオ アーバン」です。
同商品は、サッシ枠に断熱材の追加等を施した「高断熱アルミ樹脂複合サッシ」の採用やトリプルガラスを選択可能としたことで、大開口とZEH断熱仕様の両方を兼ね備えることができます。PVに関しては、設置効率とパネル1枚当たりの発電効率を向上させたことにより、3階建てでもエネルギー自給自足率80%を理論上実現可能としました。同社は住み心地の良さにもこだわった「デシオ アーバン」で、年間300棟の販売を計画しています。

パナホーム「Vieuno3E」

法的規制の厳しい都市部住宅用地向け商品として発売したのが、パナホームの「Vieuno3E」。3階建てを想定しており、新開発の異勾配屋根により、斜線制限のクリアを目指しています。通常であれば3階部分をセットバックするところ、勾配屋根により断面的に40%の空間拡大を実現しています。また、ユーザーに対しては眺望の良好な3階部分に最高天井高3.1mのリビングを設けられることも訴求ポイントです。
多層階住宅では、下層エリアに賃貸やテナントを設け、収益物件として活用することも可能です。そして、これら複数の世帯が快適に過ごすため開発された商品が大和の「skye+サイレントスタイル」。遮音性能の向上に注力しています。

高密度ALCパネルと高比重防音マット、粘弾性梁上防振材などを組み合わせた同社オリジナルの界床構造「SRスラブ55」を新たに開発し、上下階の床の遮音性能を向上させました。子どもの飛び跳ね音等の重量床衝撃音遮断性能はLH-55、食器の落下等の軽量床衝撃音遮断性能はLL-45、話し声等の空気音遮断性能はD-50を有します。上下階だけでなく、両隣にも配慮しています。住戸間の壁も、間隔を空けて配置した2本のスタッドと、厚みの異なる2層の石膏ボードで構成した壁の中に吸音材を充填した「遮音スタッド界壁」とし、D-50の遮音性を実現。賃貸住宅でも、子育て世帯などでは子供の泣き声で周囲に迷惑をかけることを気にかけるユーザーもいるでしょう。このようなケースも含め、多くのユーザーに訴求できる商品と言えます。

大和ハウス「skye+サイレントスタイル」外観
大和ハウス「skye+サイレントスタイル」構造(1)
大和ハウス「skye+サイレントスタイル」構造(2)

2郊外では平屋人気高まる~シニア層・若年層を両方狙う積水化学、小屋裏空間も上手く活用する住林

積水化学「そだての家」

平屋は足腰に不安を抱え始めるシニア層に求められるケースが多いと思われるかもしれませんが、小さくまとまっていて暮らしやすく、動線も楽などのメリットもあり、郊外では若年層にも平屋人気が高まっています。
積水化学の平屋の主力商品は、「たのしみの家」「そだての家」です。「たのしみの家」は40代後半~60代、「そだての家」は30~40代の子育て世帯による居住を想定しており、平屋のメインターゲットであるシニア層に加えて、比較的若い世代もカバーしている点が特徴です。
同社が販売する平屋のうち、30代以下の占める割合が2006年度時点では17%でしたが、2010年度の平屋商品第一弾「楽の家」発売後、2015年度に30代以下は28%まで増加しました。これを背景に若年層を狙った「そだての家」を投入し、さらに深耕しようという狙いがあると言えます。従来の平屋商品のターゲットは、子供が独立したシニア夫婦世帯でしたが、地面を近くに感じながら過ごす落ち着いたスローライフは、近年の若者にも受けられ始めているのでしょう。同商品では、自宅をカフェのようにくつろげる空間とする「おうちカフェ」や、LDKから繋がるテラスにテーブルを置いてアウトドアリビングとするなど、自然に親しみやすい暮らし方提案でも需要を喚起しています。

ハウスメーカーで最も平屋比率が高いのが、住友林業です。2016年度は販売棟数のうち、22%が平屋でした。同社が打ち出す平屋商品に、「グランドライフ+プラスキップ」 という商品があります。平屋を基本としながら2階建てや部分2階建てへの増改築、また小屋裏空間 を利用した増改築にも対応しています。この小屋裏空間は吹抜けにすることで、広い空間を印象づけるデザインことが可能で、多目的スペースとすることで、多様な用途に活用できます。木造ならではの可変性の高さをアピールすることは同社の強みと言えます。
関東圏であっても平屋比率は上昇傾向です。都心部は難しいですが、郊外エリアでは平屋は無視できない存在になって来ています。

住友林業「グランドライフ+プラスキップ」平面図

(テキスト/株式会社住宅産業研究所 斎藤 拓郎さん)