戸建住宅関連企業さま向け情報

住宅&住宅設備トレンドウォッチTOPへ戻る

印刷用PDF

分譲住宅地のコミュニティについて 〜藤村龍至氏に都市生活研究所が訊く〜

要点

地域コミュニティ研究をしている東京ガス都市生活研究所が、建築設計やその教育、批評に加え、公共施設の老朽化と財政問題を背景とした住民参加型のシティマネジメントなど、幅広く活躍中の藤村龍至氏に、分譲地におけるコミュニティについて伺いました。

《都市研》
今回、東京ガス都市生活研究所では戸建てのミニ分譲地(数戸から10戸くらいの同時期に建てられた分譲地と定義)について、どういったメリット、デメリットを感じるかの生活者の声を集めました。(表参照)

■ミニ分譲地について
メリットデメリット
1. 住環境
暮らしやすい隣接しているため、騒音や建て替えが問題となる
不審者にすぐ気づきそう同じ世代が一気に入居すると、数十年後には高齢化してしまう
防犯意識が高まる日当たりが悪い恐れがある
2. 住宅仕様
景観、外観が良い同じような外観の家が並んでいて個性がない
お互いの視線や、風通し、日当たりに配慮して設計されている似たような家が並んでいて、帰る家を間違えそう
使い勝手が良さそう狭い、庭が狭い
3. 価格
比較的価格が手ごろ修繕費用が高そう
4. 人間関係、近所付き合い
同じような年代、生活水準の人が集まり、仲間意識が高くなりそう近所づきあいが面倒、大変そう
家族ぐるみの付き合いができる気が合わない人がいると大変
同時期に引越してくるため、近所付き合いがゼロから始められる一度トラブルが起きると大変
何かあった時に心強い、助け合えるゴミ当番など、当番がすぐにまわってくる
都市生活研究所調べ 2016年9月 n=212

メリットとしては「価格の手頃さ」「きれいで整った街並み」などの意見のほか、「同じような年代、生活水準の家族が集まる」「家族ぐるみの付き合いができそう」「近所付き合いが0からスタートできる」「防犯意識が高まる」といったコミュニティ、人間関係に対する期待が多く見られました。反面、「一回こじれてしまうと人間関係が煩わしい」など、密になりがちな人間関係をデメリットに感じている方も一定数います。生活者がメリット、デメリットに感じていることに対して、ハード面、ソフト面で、我々企業としてでできることはどんなことでしょうか。
藤村さんが手がけられた「白岡ニュータウン リフレの杜 コミュニティガーデン街区」は、これからのコミュニティのあり方の具体例として、大変注目しています。

《藤村》
「白岡ニュータウン リフレの杜 コミュニティガーデン街区」は、1987年から総合地所さんが開発している大規模分譲住宅地である白岡ニュータウンの一角にあります。空いていた変形敷地に建つ、5棟の戸建てミニ分譲です。東京理科大学の石原舜介教授の指導によりプランニングされ、30年かけて地道に開発してきた、コミュニティの活動も活発な地域です。その点を意識し、家族単体ではなくコミュニティとして機能する分譲地として考えました。

《都市研》
分譲地において、コミュニティとして機能させるために特に意識されたのはどういった点でしょうか。プランニングをする上で、想定した年齢層やライフスタイルについても教えてください。

《藤村》
藤村氏インタビューの様子分譲住宅のプロジェクトは、基本的にターゲットとなる人を35歳前後で計画します。しかし今、70年代、80年代に開発された多くの分譲地で高齢化が進み、高齢者の孤立化や空き家、廃屋が増えています。現在その問題に取り組んでいることもあり、人生の一瞬である35歳だけにフォーカスするのではなく、共に歳を取り、“終の住処”としても考えられる家やコミュニティを作るべきだと考えています。個別の住宅のクオリティ、生活のクオリティを維持するというのは、それは結局コミュニティを維持していくことなんですね。ですから、隣同士、近隣住民と繋がりやすい家であることが大切だと思っています。
そこで提案したのが、緩やかに各住戸同士が繋がり、外に開いている家。具体的には、各住戸2台分の駐車スペースの半分を緑化して、分譲地内で公園のように緩やかにつなげています。そして、その庭に対して開いているリビングです。もちろんそれぞれの家の間口が鉢合わないように、角度はちゃんと計算していますが。
庭や外構はランドスケープデザイナーの石川初さんにアドバイスをいただいたのですが、石川さん曰く、庭の一番のメリットは「家の中を片付けなくても人を呼べること」。そこで、リビングから直接出られる半屋外空間として、ウッドデッキを大きく張りださせました。それも大人数がいっぺんに座れるウッドデッキです。また、隣家の人と朝の挨拶が交わせるよう、ポストの位置も工夫しています。リビングは天井高を2.9mとちょっと高くして、ここにもたくさんの人が座れるベンチを配しています。このリビンクからまた外のデッキにつながって……と、人を呼びやすい、集まりやすい家を提案しました。
コミュニティを意識したときには、家族を超えたちょっとしたグループが内包できるようなスペースを作るということが、すごく大事だと考えています。

《都市研》
庭をコミュニケーションの場として使い、分譲地内だけでなく、地域全体に対しても開いた家にするということですね。これは敷地にゆとりがある郊外ならではの工夫ですね。都市部の狭小地での戸建てミニ分譲についても、同じようなことができるでしょうか。

《藤村》
やりようはあると思いますよ。コミュニケーションが図れるように構えを作っていく、というような。私の師である塚本由晴先生は「シータブル」、家の中に作り付けのベンチなど、座れる場所を作るということをとても重視しておられましたが、家の前にたたずめる場所を作るとか、ちょっとベンチを置くとか、そういったものが実はとても大切なのだと思いますね。

《都市研》
家に招くほど面倒がなく、でも程よく交流できる場所があるというのはいいアイディアですね。ただ、生活者の声には「人間関係が煩わしい」、「付き合いが面倒」といった回答も見られました。こういったミニ分譲ならではのデメリットについては、どのように考えていらっしゃいますか。

《藤村》
隣近所と相性が合う、合わないといった運にも左右されるでしょう。ただ、意識改革が必要ではないかと思うんです。今は気がつかないんですが、75歳くらいになると、地域とつながっていない限り、本当に孤立してしまいます。そういうことがわかれば、少し意識を変えていかなきゃいけないと思うかもしれません。私の父は2年前に亡くなりましたが、最晩年の男性高齢者って、こんなにも一人でいるんだと気づいて、私自身の考え方も変わりましたね。
今地域で活躍されている方は、40歳くらいから、60歳以降の生活をイメージして少しずつ地域活動などを積み重ねてきたと言います。ライフデザインとしてそれくらいのスパンでやっていたから上手くいっているというところもあると思うんですね。こういう社会状況の中で、自分はどこの地域で余生を送るのかというのを40代くらいから考え始めるというのも、大事なんじゃないでしょうか。

都市研インタビューの様子

《都市研》
ソフトの面において、コミュニティを活性化させるにはどんな工夫がありますか。マンションですと、最初にデベロッパーさんがコミュニティ形成支援的な取り組みをされていたりするんですね。具体的には「挨拶会」みたいなものだったり、自由参加のイベントだったり。戸建て分譲でも、分譲地内や今までの居住者とのつながりを手助けする仕組みのようなものを、今後作っていけたらいいなと思うのですが。

《藤村》
住宅価値をキープし、いまだに若い人の流入があって活性化している分譲地は、自治会や管理組合がしっかりしているところが多いです。ただ、デベロッパーさんや住民主体でやるには限界がありますから、都や県、市町村などの行政、民間などの力を合わせていくことは、今後ますます必要になると思います。
東京ガスさんのように戸別に検針業務を行っている場合、今後有料サービスとして、地域の見守りを行うといった取り組みも期待されるかもしれませんね。また、ホームパーティに役立つ料理教室など、ガス会社ならではのイベント開催といった、コニュニティ形成の手助けができそうなアイディアはたくさんあるような気がします。

弊社はエネルギー会社として、これまでも検針作業や料理教室などの地域の皆様との接点はございました。これからは、時代のニーズを見据えた地域への貢献の仕方もあるのではないかと改めて考えさせられました。今後も、エネルギーを通じて、さまざまな形で皆様の暮らしに寄り添っていきたいと思います。本日は、ありがとうございました。

藤村龍至
東京藝術大学美術学部建築科准教授
RFA主宰

1976年東京生まれ。2008年東京工業大学大学院博士課程単位取得退学。2005年より藤村龍至建築設計事務所(現RFA)主宰。2010年より東洋大学専任講師。2016年より東京藝術大学准教授。建築設計やその教育、批評に加え、公共施設の老朽化と 財政問題を背景とした住民参加型のシティマネジメントや、日本列島の将来像の提言など、広く社会に開かれたプロジェクトも展開している。

東京ガス都市生活研究所では、地域コミュニティをはじめ都市に住む生活者の暮らしなど、さまざまな調査・分析のレポートを発信しております。ご興味のある方は、以下のホームページからダウンロードして下さい。

地域コミュニティに関するレポートページはこちら

都市生活研究所ホームページはこちら