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入浴とヒートショック 〜シニアの入浴環境の実態と意識〜

「ヒートショック」とは、暖かい部屋から寒い部屋への移動などによる急激な温度の変化によって血圧が上下に大きく変動することをきっかけにして起こる健康被害のことです。失神や不整脈を起こしたり、急死に至る危険な状態で、気温の下がる冬場に、体全体が露出する入浴時に多く見られます。ヒートショックは身体に重大な影響を与えうる現象ですが、生活者はヒートショックについて意識しているのでしょうか。
また、ヒートショックのリスクが高いシニアが実際にどのような浴室環境で入浴しているのでしょうか。一都三県の20〜70代男女を対象に、生活者の意識と実態を調べるアンケート調査を実施し、さらに一都三県の55〜69歳の男女を対象に入浴環境の温度測定調査を行いました。

1ヒートショックに関する生活者の意識
半数以上が、「ヒートショック」を知らない

[図1] 「ヒートショック」の認知度「ヒートショック」という言葉の認知度を聞いたところ、半数以上の人がヒートショックを知らない(聞いたことがあるが、どのようなものかは知らない+聞いたことがない)ことが分かりました(図1)。

ヒートショック」を自分の事と捉えている人は約2割

[図2] 「ヒートショック」の危険を感じるかまた、ヒートショックについて説明をしたうえで、「今後、自分がヒートショックにより意識を失ったりする危険を感じるか」を聞くと、危険を感じるのは全体の2割弱でした(図2)。ヒートショックを自分の身に起こる事と捉えている人は少ないようです。男性は50代以上、女性は70代で、危険を感じる割合が高まりますが、それでも3割弱にとどまっており、ヒートショックリスクの高まるシニアであっても、自分の事と捉えている人の方が少数であることがわかりました。

2浴室暖房の現状
築20年以上の住宅の約8割は、浴室に暖房がない

続いて、浴室にある暖房器具について聞いてみました。浴室にある暖房器具は戸建住宅、集合住宅ともに築年数が浅いほど浴室暖房乾燥機が浴室にあると答えた人の割合が高く、築10年未満では約7割となっています(図3)。シニアの多くが住む築20年以上の住宅では、約8割が浴室に暖房器具がない状況でした。

[図3] 浴室にある暖房器具

3冬季入浴環境の実態
浴室暖房設備がない住宅は、浴室温度と湯温の差が大きく、ヒートショックによる事故が起きやすい環境である

入浴中の浴室温度と湯温の測定を行いました。調査対象は、浴室暖房設備を保有していない戸建(築20年以上)と、戸建(築10年未満)、浴室暖房乾燥機を保有し利用している戸建、集合住宅にお住いの方々です。
浴室温度は8.5〜31℃、湯温は38.6〜44.3℃となっていました(図4)。

[図4] 入室時浴室温度と入浴中最高湯温

[図5] 浴室暖房設備の有無による湯温・浴室温度(平均値)の違い図4を「①浴室暖房設備なし」「②浴室暖房設備あり」で集計し、暖房設備の有無による湯温と浴室温度の違いを見ました(図5)。
「①浴室暖房設備なし」においては、浴室温度と湯温の差が大きく、ヒートショックによる入浴事故が起きやすい環境で入浴している実態が明らかになりました。これは、浴室が寒いことから湯温を高く設定してしまうことが原因と考えられます。一方、「②浴室暖房設備あり」で、浴室暖房を使用した場合は、浴室が暖かいことでぬるめのお湯につかる傾向が見られることから、浴室を暖かくすることはヒートショック対策に有効であると考えられます。

4ヒートショック対策の意識と実態
シニアほどヒートショック防止に役立つ取り組みをしているが、浴室・脱衣室の暖房や適切な湯温設定を意識しているのは2〜3割にとどまる

次に、ヒートショック対策の意識と実態について見てみます。ヒートショック防止に役立つと言われている内容について実施状況を聞いた結果です(図6)。ヒートショック防止のためかどうかは限定せず、日常的に気を付けていることや行っていることを回答していますが、シニアほど様々なことを意識して入浴していると言えます。
ヒートショックによる入浴事故防止のためには、浴室や脱衣室を暖かくし、お風呂の湯温はぬるめにすることが特に重要となりますが、実施率が高いシニアであっても2〜3割にとどまっていることがわかりました。

[図6] 入浴時に行ったり、気を付けていること

浴室を暖房機器で暖めていても、浴室が十分に暖まらない状態で入浴している場合もある

浴室の暖房機器を使用しても、浴室が十分に暖まらない状態で入浴している人がいることがわかりました(図7)。

[図7] 入室時浴室温度と暖房機器に関する意識

浴室が十分に暖まっていなくても「寒さを感じていない」人もおり、感覚に頼ることは危険

20℃以下の浴室で入浴しても寒さを感じていない人が見られました(図8)。高齢者は20℃でも血圧変動が大きくなる可能性が報告されていますが、「寒いときには浴室暖房をつける」というような感覚に頼る方法では、気が付かずにヒートショックが起きやすい環境で入浴する可能性があることがうかがえます。高齢者は暑さや寒さを感じにくくなるため、特に注意が必要です。
ヒートショック防止のためには「浴室を暖める」だけではなく、「入浴前に予備暖房を行う」「室温を確認して浴室暖房を使用する」など、暖房の使い方をよく知ることが必要であると考えられます。

※「健康に暮らすための住まいと住まい方エビデンス集」健康維持増進住宅研究委員会/健康維持増進住宅研究コンソーシアム

[図8] 入室時浴室温度と寒さに関する意識

シニアの入浴とヒートショックについて、アンケート調査と温度測定調査の結果をまとめました。
アンケート調査の結果、ヒートショックの認知度は低く、自分の事と捉えている人は少ないことがわかりました。
温度測定調査からは、暖房設備がない浴室では、湯温と浴室温度の差が大きくなっており、ヒートショックによる入浴事故が起きやすい環境で入浴しているという実態が明らかになりました。
さらに、温度測定調査対象者への記入シートの回答と測定した浴室温度の関係を分析したところ、低い浴室温度で入浴していても、浴室の寒さを感じていない人がいました。このことから、感覚に頼ると、気が付かずにヒートショックが起きやすい環境で入浴する危険性があることがうかがえました。
これまでヒートショックを気にしたことがなかった人も、意識をしていた人も、改めて下記の対策をぜひご家庭で実践していただき、ヒートショックによる入浴事故を防ぐための一助となれば幸いです。

ヒートショック対策のポイント

温度のバリアフリー化 〜浴室や脱衣室を暖かくし、お風呂の湯温はぬるめにする〜

ポイント①
脱衣室や浴室を
あらかじめ暖める
● 脱衣室や浴室の温度を確認し、浴室暖房や脱衣室暖房を使って入浴前にあらかじめ暖めておく。
● 温風式の浴室暖房の場合は、水にぬれた身体に風があたると寒く感じるため、入浴時には暖房を切る。
● 脱衣室暖房がない場合は、浴室暖房を行うときにドアを開けて脱衣室も一緒に暖めると良い。
● 専用の暖房がない場合は、高い位置にシャワーを固定して、浴槽にお湯をためると浴室全体が暖まる。湯温が下がるため少し高めの温度にすると良い。
ポイント②
湯温を41℃
以下にする
● 給湯設備の湯温設定を41℃以下にする。
● 湯温が設定できない場合は、温度計で測る。

その他のポイント ● 気温が下がる深夜や早朝の入浴は避ける。
● 急な血圧変動を抑えるため、浴槽につかる前に手足など身体の末端からかけ湯をして、お湯に身体を慣らす。
● 高齢者で家族と一緒に住んでいる場合は、家族の注意をうながすため、入浴前にひと声かける。

都市生活研究所の本編のレポート「入浴とヒートショック」も、ぜひご覧ください。

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