戸建住宅関連企業さま向け情報

住宅&住宅設備トレンドウォッチTOPへ戻る

印刷用PDF
要点

2014年度の新設住宅着工戸数は、10%減の88万戸となりました。今後、人口減少や住宅ストックの増加などが要因で、中期的に新築住宅の着工は減少していくと予想されていますが、一方で注目を集めているのが、今ある優良な既存住宅の活用です。
そして将来、ストックが重視される社会になった時に、新築時にどういう家を購入し、どうやって暮らし、メンテナンスをしてきたかが、モノを言うようになります。つまり資産価値の維持が大切なのです。
大手ハウスメーカーでは、「スムストック」という、優良中古住宅を高い価値で流通させる取り組みを本格化しました。昨今は空き家ストックの増加も問題視されるようになっています。これからは、将来に亘って価値ある住宅として流通できるような新築住宅を、供給していかなければなりません。

1
中古の価値ゼロを見直す!ストックで流通できるような住宅供給を

日本は新築人気が高く、中古住宅の流通が欧米に比べて進んでいないと聞きます。確かに性能面、耐震性などからしても、新築の方が魅力的で、中古住宅は何となく不安だという気がします。

確かにそういう認識が一般的ですね。以前の住宅業界はとにかく大量生産してはスクラップ&ビルドで、20〜30年のサイクルで建て替えられてきたという流れがあります。そして現状、中古住宅(木造戸建住宅)の査定では、築20年もすると資産価値がゼロになってしまうのが実情です。結果として、日本全体の住宅投資累計に対して、資産額が500兆円も目減りするという事態が引き起こっています。
価値がゼロのものに不安があるのも当然で、中古住宅は流通しても、取り壊されて建て替えられるというケースが多かったと思われます。

そうですか。実際にはまだまだ使える住宅も、たった20年で資産価値がゼロになってしまうんですね。しかし日本全体で500兆円の価値の減耗とは、すごくもったいない話ですね。中古でもいい家があると思うのですが・・・。

その通りです。今の査定方法では、一律で価値が目減りするようになっていますから、大げさに言えば、優良な中古住宅でも、ボロボロの中古住宅でも価値の差が徐々に縮まり、ゼロになってしまうというわけです。これでは大切に住んできた良質な中古住宅を売るのがバカバカしくなります。これが中古が流通しにくい理由の一つで、良質な建物の資産価値が適正に評価されずに大きく損なわれるのは、本来おかしいことです。
既に2006年には住生活基本法が施行され、長期優良住宅の制度も普及してきました。つまり住宅は簡単に壊さずに、中古住宅として使っていきましょうという考え方に変わってきているのです。新築住宅の性能も上がってきて、耐久性も高まっています。そろそろ中古住宅が価値ある住宅として認識されるようになるべきです。それには、第一に、良質なストックを増やすこと。第二には、資産価値を維持できるように、適切なメンテナンスを必要な時に施すことです。

適切なメンテナンスや点検を行う長期優良住宅は、中古になっても高い価値が維持され、適正な価格で取引されているのでしょうか?

長期優良住宅の制度が施行されたのは2009年ですから、まだ何年も経過はしていないのですが、そもそもは100年住宅、200年住宅として、長く住み継いでいく住宅を普及させるための制度です。当然高い価値で取引されなければなりません。
長期優良住宅は、メンテナンスや点検もしやすいように工夫されていますし、家歴書を作成することも義務付けられています。

このページのトップへ

2
大手ハウスメーカー10社の「スムストック」で優良中古流通を促進

中古住宅の流通促進に向けて、住宅会社ではどんな取り組みがなされていますか?

今までは中古住宅は不動産仲介業者を中心にして取引されてきましたが、最近では新築住宅メーカーが本格的に、優良ストック流通の動きを強化しています。
住宅メーカーの大手10社は、価値ある中古住宅を適正価格で流通させることを目的として、2008年7月に、優良ストック住宅促進協議会「スムストック」を立ち上げました(発足時は9社)。同団体では、建物価値の適正な評価、流通時の信頼性、購入の安心を目指しています。中古になっても適正価格で取引されるということは、実は将来に亘って安心ということで、新築住宅にも追い風になるんです。

そうですね。優良な住宅を建てれば、将来に亘って安心できます。一般の中古住宅と、どう違うのですか?

まず3原則として、① 住宅履歴データが整備されている住宅②50年以上に亘って、「長期点検・補修制度」を守り続けることが出来る住宅③一定の耐震性能(新耐震基準)を有している住宅、この3つをクリアすることが前提となります。
次に3手法として、査定方法、査定する資格者、査定価格の表示方法が従来と異なっています。従来の査定は、建物の価値をまるごと一括して、築年数に応じて一律に減価していくという方法ですが、スムストックの査定方法は、耐用年数が異なるスケルトンとインフィルに分けて考えています
査定はスケルトン部分が6割、インフィル部分を4割として、償却期間をスケルトンは50年、インフィルは15年とし、別々に適正な査定を行います。また査定を行うのは、「スムストック住宅販売士」という独自の資格を保有したスタッフに限られます。現在、2,300名以上が資格を取っており、査定から販売までを行います。
そして査定した価格を、土地と建物を分離して表示するのも、スムストックの特徴です。従来の中古価格表示は、土地と建物の一括表示でした。スムストックの透明性が高いことがよく分かります。

確かにハウスメーカーはアフターやリフォームにも力を入れていますから、しっかりメンテナンスが行き届いているように思います。

いくら新築時に良質な住宅であっても、やはりメンテナンスは必要です。そのために、先ほどの3原則にもあったように、住宅履歴や50年以上に亘る点検制度が必須となってきます。そうすることで、長期に亘り、資産価値を極力落とさず、価値ある住宅として維持できるというわけです。

このページのトップへ

3
築20年を超えても平均価格は500万円以上を維持

スムストックの考え方がよく分かりました。では実際にどのくらい高い価値で流通できるのですか?

実際の成約実績2,500件の実例で集計したデータで見てみましょう。まず建物平均価格は1,113万円でした(平均延床面積129㎡)。平均経過年数は15.1年です。
築年数別の割合では、20年以内が7割、21年以上が3割です。意外に5年以内の流通もあって10.8%、5〜10年、10〜15年、15〜20年以内が、それぞれ20%強あります。
また築年数ごとにも平均価格を出していて、5年以内であれば、建物の平均価格は、2,090万円でした。築年数が経てば少しずつ価格も下がっていきますが、15〜20年以内の建物でも、査定価格は836万円となりました。そして一般的には資産価値ゼロとなる、築20年を超えたストックの平均価格も517万円でした。スケルトン部分を50年で設定していますから、高い価値を維持できているわけです。

築20年を超えてもゼロにならないスムストックなら、確かに安心ですね。こういう新築住宅をもっと増やして、中古になっても取り壊さずに流通させるべきだと思います。今、年間のスムストック流通はどれくらいあるのですか?

現在のスムストック流通数は、2014年度で約1,200件です。ハウスメーカー10社のストックで、年間14,000件程度の中古住宅が流通していると見られますから、捕捉率はまだ9%程度になります。しかしこれも徐々に増加傾向で2013年度の764件から、6割近く増加しています。各社が力を入れ始めているのが分かりますね。今後も更に捕捉率は上がっていくと思われます。

一般の住宅も、査定方法を変えていくことは出来ないのですか?

その通りですね。国交省でも「中古住宅市場活性化ラウンドテーブル」として、報告書をまとめていて、価格査定マニュアルも改定していく方向性です。一般の住宅でも、スケルトンとインフィルに分けて、耐用年数は新築時の性能でまずグレード分けし、更に個別に行うインスペクション結果から判明した劣化の状況によって、評価を加減する方向に変わっていきます。
インフィル部分に当る設備面でも、査定の判断は変わってくるでしょう。例えば、エネファームなどは、10年フルサポートが付いていますので、安心ですね。
将来のことを考えると、イニシャルコストを削減して家を建築するよりも、耐久性の高い価値のある住宅を建築し、快適な設備を整え、それを適正にメンテナンスしながら住み継いでいくという考え方が大事になっています。

(構成/テキスト:株式会社 住宅産業研究所 関 博計さん)