戸建住宅関連企業さま向け情報

住宅&住宅設備トレンドウォッチTOPへ戻る

印刷用PDF
要点

日本はこれから急速に高齢社会へ向かっていきます。既に65歳以上の高齢者数は、全国3,296万人で、全人口の25.9%を占めます。この数が2040年には1.2倍となり、高齢者比率は36%に上昇する見込みです。それも都市部ほどこれからの高齢化のスピードは速く進んでいくと見られています。
よって最近のハウスメーカー各社の事業展開でも、高齢者向けのビジネスは目立ってきており、本格的に力を入れ始めていることが窺えます。若年層が減って、高齢者が増加するという逃れられないトレンドで事業を発展させていくには、ニーズの高まる高齢者を対象にしたビジネスは、明らかに将来性の高い事業と言えます。

1
高齢社会における高齢者住宅の必要性

高齢者がこれからどんどん増えていくということは、よく知られていますね。また最近、高齢者の介護難民が急増するなど、近い将来、劇的に増える高齢者に対しての住まいや介護施設などが不足していくという話題にも注目が集まっています。

そうですね。地方消滅という警鐘を鳴らした日本創成会議が、今度は東京都内の高齢者人口の増加により、10年後には介護難民が13万人発生するという予測を出しました。その受入れ先として、地方のある程度規模のある都市への移住を提案しています。
平成26年9月時点で、全国に3,296万人いる65歳以上の高齢者数は、現在全人口の25.9%を占めますが(総務省統計局)、2040年には3,860万人と1.2倍に増え、ピークを迎える見込みです(国立社会保障・人口問題研究所予測)。この時高齢者比率は36%に上昇します。75歳以上に限れば、現在の1,590万人が2,220万人へ増加と、1.4倍です。75歳以上に関してはまだ増え続け、ピークは2055年、2,400万人までに増加すると予測されています。
特に、東京都内の高齢者人口の増加率は高く、また2050年まで増加が続く見込みです。高齢者人口のピークは440万人となります。

これから40年くらいは高齢者が増えていくのですね。生産年齢人口は減っていくことが分かっていますから、ますます高齢者比率が高まっていくわけですね。それは受け入れる施設が不足するというのも頷けます。

そうなんです。高齢者の数が減り始めても、高齢者比率は高まっていきます。2055年には4割を超える見込みです。
よって新築住宅の減少という方向性の中でも、高齢者が住む住宅というのは、ニーズが高まっていくわけです。最近のハウスメーカー各社の事業展開でも、都内を中心とした高齢者向けビジネスの新規事業展開は目立っています
サービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホーム、デイサービス、グループホームなど、高齢者向けの住宅や施設の建築実績は各社増やしていることと思われます。それだけでなく、高齢者ビジネスは住宅業界と密接に関わって来ます。在宅介護住宅もそうですし、健康管理、介護支援機器まで、更に手軽なニーズとして、バリアフリーリフォームも高齢者向けのビジネスと言えます。

なるほど、確かにそうですね。ところで、最近よく聞く「サービス付き高齢者向け住宅」は、どういう住宅になりますでしょうか。

各社が力を入れているので、よく聞かれるようになりましたが、名称が長いため、「サ高住」とか「サ付き住宅」と略称で呼ばれることが多いようです。
高齢者向けに供給される賃貸住宅のことですが、介護が必要な高齢者用と自立した高齢者用と大きくは2つに分けられます。まず建物の条件としては、バリアフリー構造で、手すりなどが設置されていること。また個室の専有面積は18㎡以上水洗トイレと洗面設備は各室に必要です。自立型の場合は、台所、収納設備なども必要になってきますし、広さも25㎡以上が基本です。
ソフトに関しては、安否確認サービスと生活相談サービスが付いていることが条件になります。ケアの専門家が少なくとも日中は常駐して、相談できることが必要です。介護型の場合は、介護・医療・生活支援サービスなども提供されます。
補助金が出ることもサ高住のメリットです。要件を満たして登録すれば、新築、改修共に1戸当り上限100万円(新築補助率10分の1、改修3分の1)、高齢者生活支援施設の場合は、上限1,000万円が補助されます。

このページのトップへ

2
積水ハウスは特に供給が少ない自立型のサ高住を強化

「サ高住」は、これからの賃貸住宅の供給形態として、ニーズは高そうですね。大手ハウスメーカーでも、力を入れていくはずですね。

積水ハウス、大和ハウス、パナホームなどが力を入れて、サ高住ビジネスを手掛けています。賃貸住宅建築の延長としての施工請負が中心です。工期が掛かり、単価も高騰しているRC工法に対して、プレハブ工業化住宅であれば、短工期など施工のメリットが大きいということもあり、商品化してアピールを強めています。
特に積水ハウスの方針で特徴的なのは、介護を必要としない自立した高齢者向けの「自立型サ高住」です。最近はアクティブシニアと言われるように、自立した元気なシニアも多いですよね。実際に自立した高齢者は2,702万人いて、全高齢者の82%を占めます。つまり介護認定者は594万人と、全体の2割に満たない少数派なわけです。

一方で、登録されている全国約18万戸のサ高住のうち、介護型中心となる18〜25㎡未満は74%、自立型中心の25㎡以上のものは26%と、大半は介護型が占めます。もちろん自立している高齢者は自宅に住むケースが多いのですが、受け皿の実態としては需給ギャップが起きています。自立した高齢者がサ高住に住みたいと思っても、手狭で住みにくいものが多いというわけです。

それで自立型を多く供給しようというのですね。確かに自立したシニアにとっては、要介護者が多く住んでいる場合、コミュニティが築きにくいですよね。

そうですね。確かに自立した高齢者同士の方が、コミュニケーションは取りやすいので、その辺りのバランスも必要です。例えば、積水ハウスでは、アクティブシニアの単身者及び夫婦世帯をメインターゲットにした、自立健常型サ高住として、「グランドマストシリーズ」を展開しています。このシリーズでは、住戸面積40㎡ 前後〜60㎡ 程度のものを供給し、キッチン、浴室を全戸完備して、快適な生活が送れるような住戸です。万一の場合の通知ボタンや人感センサーは装備されています。
一方、介護型サ高住は、住戸面積は25㎡程度の住戸が中心となります。大手介護事業者であるメッセージと連携を取って、合弁会社である積和サポートシステムが介護サービスを提供します。これは「Cアミーユ」シリーズとして展開しています。

賃貸住宅オーナーとしても、経営的なメリットがあるのでしょうか。

そうですね。これも立地やその周辺住民のニーズというところによるのでしょうが、高齢者が増えていくということ、また一般の賃貸住宅よりも供給数が少ないこともあり、長期安定経営が見込めるということでは、将来性は高いと言えます。
サ高住と子育てファミリーの両方の入居を促す「多世代交流型賃貸」も、一つの方法かもしれません。積水ハウスでは都内の2ヶ所で多世代型の物件を請け負いました。新しく完成した神楽坂の物件では、45戸がサ高住、残り71戸は一般賃貸住宅としています。季節イベントなども多く企画して、入居者間の多世代交流、更には地域住民との交流も狙っていく方針です。

このページのトップへ

3
グループで介護サービスも提供、事業参入相次ぐ

介護サービス自体は、他社と提携して手掛けるというケースが多いのですね。住宅以外の施設系では、どんな取り組みがありますか?

介護施設運営ということでは、古くから自社での運営を行ってきたミサワホームのマザアスという事例もありますが、他の企業を買収したりして運営するケースがしばしば見られます。
大和ハウスは、東京電力から介護会社を買い取って、現在自社での運営も手掛けていますし、ミサワホームも自社のマザアスに加え、セントスタッフをグループ化、更に三菱UFJリースと業務提携し、共同出資でトリニティ・ケアを設立し、介護・福祉施設の建設や運営を強化しています。

住友林業も高齢者ビジネスでは、2007年にグループに加えた「フィルケア」で、東京・神奈川を中心に現在は計10施設の介護付き有料老人ホームを運営しています。最近ではデイサービス事業も開始しました。BF構法を使った平屋建てを中心に建築し、柱や梁があらわしになった木質感は温かみのある空間を作っています。

デイサービスの利用者は多そうですね。

現在のデイサービスの事業所は全国で3万9千ヶ所があると言います。利用者数は242万人と、介護サービス利用者の4割を占めています。高齢者住宅に入居するよりも、気軽に利用される方も多いでしょう。住林グループの場合、「本当の家族のように寄り添う介護」をモットーとしていて、様々なリハビリ・レクリエーションプログラムの中に、園芸療法なども取り入れ、木や緑を感じながら個々が自由にくつろげるデイサービスとしています。

介護予防のような取り組みも必要ですよね。

その通りですね。日本創成会議の提言した「高齢者の地方移住」も、その一つと言えるかもしれません。元気なうちに、地方に移住して健康に暮らし、万一介護が必要になっても受け入れられる施設キャパがあるという仕組みですが、大都市部から地方都市部への人口移動で需給マッチングを図るという狙いは間違ってはいないと思います。地方創生を、ということも狙いでしょうが、賛否両論がありますし、実際に地方に移住する人がそれほど出てくるかがカギでしょう。
また最近、介護予防で注目を集めるのは、高齢者向けのスポーツジムやパソコン教室といった運営です。デイサービスの延長のような感じで、会員制で自由に来てもらい、簡単な運動をしたり、頭を使ったりして、介護が必要にならないような健康づくりということを狙いとしています。
今後間違いなくニーズが増えてくるビジネスばかりだと思いますし、住宅産業には関わってくる点も多く見られます。施工、運営、共に高齢者向けのビジネスに取り組んでいく必要はあるでしょう。

(構成/テキスト:株式会社 住宅産業研究所 関 博計さん)