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要点

住宅市場、特に戸建注文住宅の市場は、依然として回復基調という雰囲気になっていません。大手ハウスメーカーの受注も、前年に比べればプラスであっても、増税前の水準には戻れないままです。ただ全てが落ち込んでいるわけではありません。盛り上がりに欠ける住宅市場の中でも、堅調な販売動向と言えるのが、富裕層向けの住宅と相続税対策としての住宅販売です。
富裕層向けというのは、都心部の好立地マンションもそうですし、設計・デザインにこだわった戸建の邸宅もそうです。また相続対策としての住宅とは、賃貸住宅、多層階賃貸併用住宅、二世帯住宅、タワーマンションといった住宅です。相続絡みの需要も、それなりに地価の高い立地で土地を持つ地主か、現金を不動産に変えるという需要になりますので、富裕層顧客が対象ということになるかもしれません。富裕層はいつの時代も魅力的な消費者と言えそうです。

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富裕層向けの高額住宅が売れる

大手ハウスメーカーが、高額商品、富裕層向けの住宅に力を入れていますね。

そうですね。収益的に見ても、やはり高額住宅は高い利益を生みますし、大手ならではの差別化という意味もあるでしょう。元々ハウスメーカーの住宅は、ビルダーに比べて高額ですが、最近はより価格が上振れして来ています。
住友林業は、富裕層向けの住宅で成功しているメーカーの1つです。同社では富裕層向けのモデルハウスとして、東京世田谷の駒沢展示場、名古屋の八事展示場に高級モデルを出展しています。例えば名古屋では1ヶ月に1棟ペースで1億円以上の物件が売れているということで、平均価格も6,000万円を超えるくらい高額です。

そして「邸宅設計プロジェクト」と銘打って、富裕層向けには全国選りすぐりの設計チームが対応しています。自分だけの特別な邸宅を作ってもらえるというプレミア感があるわけです。住友林業では高額物件が増えていることで、直近の四半期決算では受注単価が前年度よりも140万円程度上昇しました。富裕層向けのチーム、また富裕層が多く来場しそうな場所に、高級モデルを出展するということがポイントになっているようです。

他のメーカーも高額化しているようですね?

はい、確かにハウスメーカーは全体的に高級路線にシフトしているという方向性にはありますね。例えば積水ハウスでは、現在3,000万円超の高価格帯住宅の割合は5割程度ですが、2017年1月期にはこれを8割にまで高めるといった計画です。ZEH仕様のグリーンファースト・ゼロという商品の強化や3〜4階建の住宅が増えていることで、年々平均単価は上昇しているのが現状です。15年1月期は前年に比べて100万円以上アップしました。更に商品刷新によって、コンクリート外壁パネルの厚みを増したり、表面の凹凸を目立たせて重厚感を高めるなどといった工夫も行っています。それに合わせてパネル工場の月産体制も強化しています。
また大和ハウスでも富裕層向け商品「ジーヴォΣ」の生産能力を3倍に引き上げ、月産350棟体制にするなど、各社富裕層向けに生産体制から強化を進めている状態です。

富裕層というと、やはりハウスメーカーが中心になるのですか?

必ずしもそういうわけではないのですが、ハウスメーカーの強みは、ブランド力と共に人材が豊富というところでしょうか。設計士もたくさんいますから、その中からエキスパートのチームを組むことが出来ます。
ビルダーでも富裕層を中心に売っている会社は多く存在します。例えば最近目立っているのは、米国の建築家フランク・ロイド・ライトの建築デザインの理念を取り入れた、日本オーガニックハウスというFCが好調です。加盟店も今年度に入ってから10社以上増加、80社に増えています。中でも東海圏で手掛けるロイヤルウッドという会社は、170棟規模の受注と好調に伸ばしていて、平均受注単価も3,000万円を超えました。大手に比べるとややリーズナブルで、プレミア感のあるライトのデザインを受け継いでいるという認定プレートなど、富裕層にとっては魅力あるデザイン住宅となっています。同社もやはり名古屋の八事展示場に2棟出していて、大手ハウスメーカーと互角以上に売れているようです。

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都心部マンションは即完好調、インバウンド消費も

高額住宅、富裕層向けの住宅というと、都心部のマンションもそうですよね。最近は億ションが即日完売しているという話もよく聞きます。

そうなんです。青山や目黒、新宿といった好立地の高級マンションが、平均2〜3倍は当たり前、最高数十倍という倍率で即日完売しています。 2020年の東京五輪へ向けて、都内都心部や湾岸エリアに続々とマンションが着工、販売されていますが、今は特に都心部は地価も上昇に転じていますし、更に労働力不足から建築費が高騰しています。特にマンションは多くのビルを手掛けるゼネコンが請け負うケースが多いため、人手不足、価格高騰は深刻です。
つまり普通のサラリーマンでは手が出ないほどに新築マンションの価格は高くなってしまいます。最近の都内23区の平均価格は6,000万円を超えていますし、首都圏全体でも22年ぶりに5,000万円を超えてきて、バブル期以来の高値になっています。それでも売れ行きは上々ということですから、これは富裕層や海外インバウンドによる購入が増えているということでしょう。

なるほど、外国人旅行者による家電や日用品のインバウンド消費も話題ですが、不動産でも海外勢の購入は目立っているんですね。

はい、特に中国、台湾、シンガポールなどのアジア系の方々が不動産を購入しているケースも目立ちます。中には5割以上が外国人によって購入されたというケースも出ているようです。今は円安ですから、日本の不動産はより割安になっています。
外国人による購入は実需ではなく、投資型です。ですから入居してみたらマンション内の多くの世帯が賃貸であったり、空室になったりということも出てくるかもしれません。少し心配になってきますね。

今、中国経済の失速で、世界中の株価が下落するなど先行き不透明感が増していますが、住宅市場への影響もありそうですね。

やはり影響は出てくるでしょう。日本の富裕層もそうなんですが、高額不動産の売れ行きは、株価に連動しやすいと言われています。株で上がった資産で不動産を購入ということなのでしょう。ですから中国などの外国人富裕層も株価が急落した場合、不動産購入は手控えるということになるはずです。
それだけならまだ良いのでしょうが、今度は今まで購入した不動産をウリに出し始めると、不動産市場は混乱してしまいます。もし中古で大量に不動産が出回るようになると、住宅市場全体に冷や水を浴びせかねません。これは住宅業界全体として、注視しないとならないところです。

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相続絡みの賃貸住宅は依然として堅調

富裕層といえば、相続税改正の影響もあって、相続対策のために住宅購入というケースもありますよね。賃貸住宅だけでなく、二世帯や併用の多層階住宅やタワーマンションも活況だと聞きます。

相続の代表例と言えば賃貸住宅ですが、最近は少し供給過剰ではないかという声も出てきています。ですから安易に相続対策でアパートというのは、リスクを伴います。ただ本当に必要であるアパートであるならば、空室リスクも少ないわけですし、相続対策にもなるわけです。
高い家賃が取れるような好立地で高品質、更にセキュリティやその他サービス面も含めて、入居者にとってもメリットのある賃貸住宅はまだまだ必要とされています。その一つはサービス付き高齢者向け住宅で、そのエリアのニーズにあった自立型、介護型などを適正に供給できれば、理想と言えるでしょう。

また高層階のタワーマンションというのは、相続対策の効果が高いとされていますので、相続のためにタワーマンションを購入しているケースも間違いなく多いと思われます。都心部マンションが好調という背景には、富裕層の相続対策も影響しているわけです。

二世帯住宅はどうですか?多層階住宅も増えているようですね。

相続税改正では、基礎控除額が4割減額となった一方で、土地の評価額が8割減額となる小規模宅地の特例が拡充されました。宅地面積が240m²から330m²まで拡充されたので、小規模宅地に二世帯で住む場合には、非常に相続税削減の効果があります。また二世帯住宅としなくても、自宅と賃貸住宅、また店舗などの併用住宅も人気です。住みながら、家賃収入が入ってくるという稼ぐ住宅というわけです。
ハウスメーカーの商品には、多層階のものが増えて来ています。この背景にはコンクリート住宅などの建築費高騰という影響もあります。従来はRC造で建てられていたケースが多かった多層階住宅も、鉄骨プレハブ工法などで対応が可能となったことで、建築費や工期でのメリットが出てきます。単価も億を超えるような大きなものになることも多いでしょうから、大手ハウスメーカーが力を入れているわけです。

相続税が改正されて、もうすぐ1年になろうとしていますが、これからも相続絡みの住宅需要は続くのでしょうか。

相続は亡くなった時に発生しますので、2014年末に改正前の大きな駆け込みというのはありませんでした。むしろ改正後にも、各社のアパート受注は好調であったりと、相続に対しての意識がより顕在化しているようにも思われます。ですからこれからも相続対策としてのニーズが大きく減退するということはないでしょうが、今度の消費増税は一つのカギになって来ると思われます。つまり「相続対策も消費増税前に」と考える層が動くことも考えられるため、ある程度増税前には一巡するのではないかということです。
ただ先ほど申しましたように、相続は亡くなった時に発生することなので、まだ先にと考えている消費者もいると思います。むしろ株価の動向などは大きく影響してくるでしょう。もしも株が大暴落ということになるとまた相続どころではないということにもなりますが、相続絡みの住宅ニーズは、今後も一定数に動くものと思われます

(構成/テキスト:株式会社 住宅産業研究所 関 博計さん)