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2015年度の上期(4〜9月)の住宅着工戸数は、全体で前年同期比6.9%の増加と回復の傾向を見せています。その牽引役となっているのが貸家・アパートです。貸家全体では10.8%の増加で、着工戸数は半年間で19.6万戸。年間40万戸ペースに上がっています。
この貸家ブームの背景にあるのが、今年1月に行われた相続税の改正です。基礎控除の4割カットや高額贈与税率の上昇など、富裕層や土地持ちの世帯にとっては、大きな増税となります。その節税対策の一つとして、賃貸住宅は大きな意味を持ちます。ただ改正前の駆け込みから改正後まで、長期に亘って貸家の着工増が続き、供給過剰ともとれるため、その他の手段での相続税対策も必要です。
相続税対策は、賃貸住宅に限られたものではないので、二世帯住宅や住宅資金贈与における贈与税非課税枠の活用、相続時精算課税の特例など、様々な提案ができると良いでしょう。

1絶好調に推移する賃貸着工

2015年1月に相続税が改正され、最も恩恵を受けているのが賃貸住宅市場です。まずは消費税増税と相続税改正へ向けて動き出し、消費増税後もまだ着工は落ち込みませんでした。更には改正を機に動き出すという流れもあって、好調を維持しています。月別の着工を見てみると、2012年9月以降、3年間に亘ってほとんど前年割れすることなく、着工が増え続けています。2011年度の29.8万戸から、2012年度は32.7万戸、2013年度は37.5万戸と増加、2014年度は中高層が多少減って、36.6万戸となりましたが、今年度は再び増加基調。2015年度の賃貸住宅着工は、40万戸ペースで推移しています。
一方で、着工が好調すぎて供給過剰になっているのでは、という見方も出て来ています。実際に人口が減少していることには違いなく、だからこそ建築エリアの選定は最重要項目になってきます。現状、賃貸ニーズがあると見られるのは、やはりまだ人口が増えている都市部エリアが中心でしょう。

また人口増加エリアでないとしても、建て替えならば可能性はあります。賃貸住宅は戸建に比べて早いサイクルで建てられるケースも多いため、古いアパートを建て替えるという動きは、空き家問題や景観、防犯などの意味でも必要になってきます。
そして需要と供給のバランスから見ると、必要な場所に、必要な大きさ・間取り、必要なサービスを兼ね備えた賃貸住宅は、まだ足りない部分もあります。例えば、高齢者向け、ファミリー向けの高性能賃貸、ペット居住用賃貸、シェアハウス、戸建賃貸、子育て世帯のコミュニティ賃貸、多世代居住型賃貸、外国人向けサービスアパートメントなどです。
今後も賃貸住宅の需要はなくなることはないでしょう。また相続税は亡くなった時に支払うものですから、これから対策をというケースもあると見られるため、これからも一定数の相続税対策賃貸住宅のニーズはあるものと思われます。

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2都市部での多層階住宅需要が増える

相続税対策は、もちろん賃貸住宅のみではありません。二世帯住宅、賃貸や店舗と自宅の併用住宅、タワーマンションの購入などもあります。
なかでも大手ハウスメーカーが注力するのは、都市部の多層階住宅です。一つ例を挙げると、この分野でパナホームが成功しています。
同社では、多層階住宅「ビューノ」の受注実績が好調です。非住宅用の「ビューノ・プロ」も本格的な展開を開始しており、上期で50棟を受注しています。注目されるのは、一般の戸建住宅が苦戦しているような、反動減の影響を受けていないということです。
パナホームの2015年度上期の多層階住宅売上は340億円、棟数にして400棟となりました。前年同期比で17%の増加です。8割が東京、神奈川などの首都圏で、特にプロ用の場合は9割が首都圏ということです。やはり多層階というと都市部での需要となるでしょう。また金額では6割が3階建てで、残りの4割は4階建てなどと、大型建築の占める割合が高いというのも特徴です。

成功要因の一つは、多層階モデルハウスと相談窓口的なショールーム「ビューノプラザ」による2本立てで、多層階建設に適した地域に密着した営業展開を行っていることです。相続税絡みのニーズがあるエリアを狙い撃ちしていくというやり方をとっています。現在首都圏6ヶ所で展開するビューノプラザには、新規客が月平均100組来場しているといいます。また新宿の多層階モデルハウスには4〜9月の上期で累計1900組が来場したそうです。
今後もパナホームは、多層階モデルハウスを東京の王子、石神井、千葉の市川に、ビューノプラザを浦和、名古屋駅前、神戸元町にオープンし、地域密着営業を行っていく方針です。

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3次の消費増税もすぐそこに

今、好調に推移する賃貸住宅や多層階住宅といった分野は、相続税の改正という制度変更によるいわゆる特需と言えます。つまり徐々にそのニーズのボリュームというのは、減っていくものと思われます。
そして消費税の10%への再増税も近づいてきました。予定通りであれば、増税まで1年3ヶ月、注文請負契約の経過措置の期限までは、あと9ヶ月余りです。再び消費増税前駆け込みは起こると見られますが、その後の反動減は必ずやってきます。賃貸住宅や多層階住宅でもやはり消費税増税前駆け込みは起きるでしょう。特に前回の消費増税であまりダメージがなく、3年間に亘って着工を伸ばしてきた賃貸住宅は、それだけ需要を刈り取ったということも出来ます。つまり、消費税が増税された後、今までの反動減が一気に起きる可能性も否定できません。増税後の需要減を見据え、用途(ターゲット)を絞った賃貸住宅の提案が有効でしょう。

賃貸住宅以外での相続税対策も勧めていきたい提案です。例えば、子世帯への住宅資金という形で贈与を促す政策も拡充しています。贈与税非課税枠は、現在省エネ住宅においては1,500万円までです。来年1,200万円まで一時的に縮小しますが、10月以降、消費税が10%に上がった時には、一気に3,000万円まで拡充します。この税制がうまく機能すれば、消費税再増税後の落ち込みを補える可能性が出てきます。
また相続時精算課税の特例でも、現状2,500万円までの贈与が非課税となり、特に収益物件の贈与は相続税対策になる可能性があります。住宅会社としての相続税対策提案は、メリットとデメリットを的確に提示できることも必要になってきているといえるでしょう。

(テキスト/株式会社住宅産業研究所 関 和則さん)