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「集客」戦略の基本的な考え方は、文字通り「客(人)を集める」ことですが、消費税5%→8%の駆け込み以降の2014〜15年度にかけて、以前と比べてなかなか人を集められないという悩みをよく耳にします。今年は消費税10%の前にもう一度駆け込みが来ることが考えられますが、それ以降は住宅需要は徐々に縮小し、「広告を打ってモデルハウスやイベントに呼び込む」という一般的な集客戦略だけでは、人を集めるのは難しくなると思われます。
そこで、「人を集める」のと同時に「人が集まる場所」を意識した集客戦略を考えてみるのはいかがでしょうか。例えば、「人が集まる場所」である大型ショッピングモールに営業拠点を出す、もしくはショッピングモール内でイベントを行う。最近では、営業拠点にモデルハウスやショールーム以外の機能を持たせて地域のコミュニティとして開放し、「人が集まる場所」を創出して潜在客を集める戦略を取っている住宅会社も増えてきています。

1生活情報提案ショップで集客〜斉藤林業

群馬県で林業・製材業を創業し、年間50棟を手掛ける斉藤林業では、総合展示場と単独常設の2ヶ所のモデルハウスを持っていますが、2011年9月に生活情報提案ショップ「グリーントゥモロー」を開設して、同店舗を中心とした集客戦略にシフトしています。
「グリーントゥモロー」は、1階はセレクト雑貨店、カフェ、多目的ホール。2階にはセミナールーム4室という構成です。1階の雑貨店では、食器や子供用品、オーガニック食品、書籍など、子育て世代の主婦に好まれる商品を取り揃え、自社で製作する木工家具、地元作家が作る雑貨なども販売しています。カフェでは卵、牛乳、バターなどのアレルギー物質を使わない蒸しパンの販売も行い、ベビーベッドやキッズコーナーも設けているため、地元主婦の間で口コミで評判が広がっています。2階のセミナールームや1階の多目的ホールでは、ヨガやフラダンス、アロママッサージなどのカルチャースクールを、定休の水曜以外はほぼ毎日開講し、1講座当たり10名前後の受講者を集めています。セミナールームは1時間1000円で地元の主婦の会合などにも貸し出しています。
店舗での買い物やカフェでの食事、カルチャースクールの受講には金額に応じてポイントが発行され、ポイントが溜まれば同店舗で使える商品券と交換できるようになっています。ポイントカード会員数は現在約9000人に達し、地域の人が集まるコミュニティとして機能していると言えます。

この店舗で集め、ファン化した客に対し、住宅に目を向けさせる次のステップが、完全予約制セミナーの「疑問すっきりセミナー」です。セミナーは店舗内のセミナールームで月1回開講し、資金計画、間取り・設計、土地の探し方の3部構成としています。店舗の客層は子どもが小さい主婦層=住宅を考え始める一次取得層が多いので、住宅に関する初歩的な疑問を解決する内容としています。

セミナー参加者で商談を進める客に対しては、本社製材工場の見学会、入居者宅訪問、宿泊体験でランクアップします。セミナー、工場・入居者宅見学、宿泊体験の3つのステップに参加した客の成約率は約7割となり、以前の展示場集客からの追客よりも営業効率が高まっています。
展示場での集客をメインにしていた頃は、売上に対して約5%の広告宣伝費をかけていましたが、「グリーントゥモロー」集客からの3ステップにシフトしてからは、広告宣伝費は売上の1〜2%に抑えられるようになったといいます。他社との競合も減り、工場見学によって木への理解が深まるため、木材のヒビなどに対するクレームもほとんど無くなったということで、集客戦略のシフトが奏功している事例と言えます。

2高齢者層をターゲットとした複合型拠点〜森住建

森住建は岐阜県池田町の本社と岐阜支店からそれぞれ30km圏内に営業エリアを限定して年間30〜40棟を手掛ける、典型的な地域密着型ビルダーです。
2014年5月に本社を移転し、複合型拠点「おうちLABO」として新規オープンしました。移転先は、本社のある池田町の地域住民が日常の買い物に使う商業施設の「イオンタウン岐阜池田」内のテナントです。以前から同施設内の空きテナントを利用して、リフォームフェアなどのイベントを行っていましたが、横並びの3店舗で空きが出たため、新築・リフォームのショールーム、デイサービス、スポーツジム等を開設し、それぞれの店舗が内部でつながっている構造としました。

「おうちLABO」の特徴は、シニア向けパソコン教室、老化予防トレーニングジムなど、まだまだ元気な高齢者をターゲットとして、健康促進のための老化予防サービスを提供している点です。スポーツジムでは、筋力を維持することで、腰・膝の痛みや、肩こりを解消するという触れ込みで、高齢者の体力低下を低減するための筋力トレーニングを行っています。老化予防のためには、体を鍛えるだけでなく、指先と脳を働かせることも必要であるとして、シニア向けのパソコン教室では、パソコンの基本的な操作方法や、タブレット端末やデジカメの使い方講座も行っています。

体と頭を鍛えることで、地域で要介護・要支援の対象となる高齢者を減らそうという取組ですが、もう一つの狙いはリフォーム需要の掘り起こしです。老化予防サービスの利用者は、築年数の古い住宅に住んでいることが多いため、リフォームの需要が高く、子供世帯の新築の相談が持ち込まれることもあります。
地域の元気な高齢者が集まれるコミュニティの場を提供することで、住宅に関する需要を掘り起こし、集客力を高めている好事例と言えます。

工務店・ビルダーの強みは「地域密着」であるとはよく言われますが、住宅に限らず、地域に幅広いサービスを提供してコミュニティを形成することが「地域密着」を強めることになり、住宅の受注増加にもつながるのではないでしょうか。

(テキスト/株式会社住宅産業研究所 布施 哲朗さん)