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住宅関連 制度・マーケット情報

日本の総人口は2008年頃をピークに減少を始めています。また、世帯数についても2019年頃まで増加し、その後は減少に転じるという予測が立てられており、住宅市場はいよいよ本格的な縮小期を迎えることになります。
一方で人口が増加すると予想されている地域もあります。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口によると、2010年時点から2020年までの間で人口が増加すると予想されている都道府県は、東京都(15.6万人増)、神奈川県(7.4万人増)、愛知県(3万人増)、沖縄県(2.4万人増)、滋賀県(3千人増)の5都県のみとなっています。特に東京都、神奈川県といった首都圏では、企業や雇用の増加により人口が集中するという予測が立てられています。
人口が増えると住宅のニーズは高まりますが、住宅建築といった点から見ると都市部は地価が高く、その分敷地が狭くなるという問題があります。そのため、地方や郊外の住宅とは違い、建物の縦方向への活用が必要になってきます。従来、都市部の戸建は3階建までが一般的でしたが、住宅メーカーでは4階建やそれ以上の階層の商品も投入しています。また、用途として賃貸併用、店舗併用といったように、価値の高い都市部の土地を有効活用するものが増えています。

1首都圏限定で5階建併用商品を投入〜旭化成ホームズ

旭化成ホームズは都市部に特化した戦略を進めてきた住宅メーカーで、3階建以上の販売棟数規模で年間1,000棟以上のボリュームを持っています。同社では古くから重量鉄骨工法の3階建商品を展開してきましたが、2010年頃より「重鉄3階建」といったキーワードを使って重鉄商品の魅力を訴求し始め、直近では重鉄5階建の商品も販売し始めました。
重量鉄骨工法とは、厚さ6mm以上の構造用鋼材を使用し柱と梁を強固に接合するラーメン構造の事で、厚みのある鉄骨を使うことでブレース(筋交い)や耐力壁を不要とし、高い耐震性を保ちながら広い空間を取ることができるものです。都市部の敷地には、斜線制限や防火地域等の法規制がありますが、旭化成ホームズでは、このような厳しい条件下において明るさや開放感を感じることができる住宅であるという提案を得意としています。

旭化成ホームズ

最近の動きとしては、重量鉄骨フレックスの5階建商品を首都圏にてトライアル販売し始めています。階層を増やすことで、賃貸併用や店舗併用といった様々な用途を提案しようという訴求内容です。
同社の最大の特徴は戸建の営業マンでも、賃貸住宅を販売できる併売体制としている点で、住宅展示場に来場した戸建検討客に対しても、併用型の多層階商品を提案して単価アップを目指しています。3・4階建については住宅メーカーの中でも、トップクラスの販売シェアを誇ってきた同社ですが、5階建や併用といった新しい切り口で多層階の強化を図っています。

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2多層階住宅への注力で収益力を拡大〜積水ハウス

積水ハウスは戸建住宅1棟あたりの単価を上げることで収益力の拡大を目指しているハウスメーカーで、中高級商品の投入や3・4階建住宅の拡販に力を入れています。これにより2015年度の戸建の平均価格は3,700万円と3年前の2012年度と比較して356万円もアップしました。また、3・4階建として床面積の大きな住宅を建てるだけでなく、商品自体の高級化もポイントで、2015年度の3・4階建戸建住宅の平均請負金額は6,100万円で3年前の2012年度4,700万円から1,400万円も増加しています。
同社が単価アップを図り始めた2012年度に投入したのが重量鉄骨商品「ビエナ」です。同商品は上下の通し柱を不要とし、各階で自由な間取りを実現することが可能な「梁勝ち」を採用している点が特徴です。この躯体を活かすことで、2方向オーバーハングとして、1階に駐車場を設け、その上の2・3階は居住空間として有効活用するといったプランや、上下2層の大きな窓による吹抜けリビング、最大5.5m×5.5mの吹き抜け空間など、フレキシブルな空間の訴求が可能となりました。魅力的な商品で差別化を図り、建物自体の高額化にも成功しているということです。

積水ハウス(ビエナ)

また、2015年10月には4階建の重量鉄骨工法「βシステム構法」で型式適合認定を取得しました。これにより設計や建築確認許可の簡略化が可能となり、4階建でもスピード対応を図ることで更なる受注拡大を目指せる体制となっています。

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3業界最高7階建アピールから3階建強化へ〜パナホーム

多層階向けの新商品を次々と投入し、その性能の高さをアピールしているのがパナホームです。同社初の多層階住宅「スリーF」を発売したのが1977年で、2000年に4階建、2004年に5階建というように高層階への対応を図ってきました。2014年には工業化住宅として初の7階建対応を可能とした「ビューノ」、2015年には店舗・事務所併用商品として「ビューノ・プロ」を投入しており、多層階住宅の累計販売実績は約17,000棟に上ります。
パナホームの多層階商品には重量鉄骨「NS構法」が採用されています。NSとはNon-welded Solid:ノンウェルデッドソリッドの略で「無溶接」という意味です。一般的に重量鉄骨工法は、溶接により柱と梁を強固に固定しますが、同構法は独自開発の高力ボルトにより接合します。施工現場で溶接を行わないため精度が安定し、施工の効率化、品質の均一化、コストダウンといったメリットに繋がると訴求しています。
パナホームではこのような自社商品の特徴を訴求する場として、ビューノプラザという多層階専用の拠点を展開しています。2015年4月にオープンした東京都新宿区、台東区、神奈川県横浜市の3拠点を皮切りに、現在までに全国10拠点がオープンしています。

パナホーム(ビューノプロ)

7階建を可能とする商品力や、ビューノプラザという独自の販売スタイルを確立した同社の次なる戦略は3階建の強化で、今年4月に「ビューノ3S」という軽量鉄骨3階建の商品を発売しました。軽量鉄骨→重量鉄骨、3階建→4・5階建といったように徐々に対応できる階層を増やしていく他社とは違い、一気に7階建を可能とする重鉄商品を投入することで技術力をアピールし、ボリュームゾーンの3階建でも拡販を狙うというユニークな戦略です。どこまで3階建の棟数を増やすことができるかに注目が集まります。

(テキスト/株式会社住宅産業研究所 関 和則さん)