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住宅関連 制度・マーケット情報

住宅会社の集客戦略において、常設モデルハウスを持たない中小ビルダー・工務店の場合は、完成見学会や街中モデルのオープニングイベントを主な集客源としているケースが多いです。
完成見学会は、住宅の計画がある程度具体化している客層を集客でき、実際に自社で建てた住宅を見てもらいながら、建物(性能、構造、間取り、デザイン)や会社の説明ができます。しかしながら、引き渡し前の施主宅を借りて行う完成見学会は、会場内に商談スペースや営業ツールを整えにくく、その場で具体的なところまで商談を進めるのはやや難しくなります。資金計画や土地探しをきっかけとして次回アポを取り、営業拠点に来場してもらって、そこから具体的な商談を進めて行くのが基本的な流れとなります。
一方で、最近の傾向として、これとは逆の流れで集客〜商談を進めているケースも増えてきています。最初から営業拠点に集客すると、初回から長時間の着座商談がしやすく、来場客の情報収集や今後の家づくりの進め方を組み立てやすくなります。ここで自社を依頼先の候補の一つとして選んでもらった上で、完成見学会などで実際の「建物」を見てもらうことで、歩留まりを高めることができます。このような商談の進め方で上手くいっているビルダーの事例をご紹介します。

1初回からショールームで1時間接客〜アルプスピアホーム

長野県のアルプスピアホームは、地元の松本から県内広域に拠点を展開し、年間約150棟を手掛け、創業以来15期連続で増収を続けている成長ビルダーです。
常設モデルは持たず、集客はショールームが6割、完成見学会が4割です。完成見学会の集客力は高く、毎回100組以上を集めていますが、一人一人とじっくり話をすることが難しく、たまたま現場が近所にあったから見に来たというような、薄い客も少なくありません。そこで数年前から、見学会は新規客の集客を図るよりも、管理客を回遊させるためのイベントという位置づけとし、初回来場はなるべくショールームに呼び込み、早期にファン化するという戦略にシフトしています。
ショールームのメインとなるのは住宅設備の展示です。設備ごとにブースを分け、キッチンは3台、システムバスは2室というように、標準仕様で選択できる各メーカーの最新設備を展示し、メーカーごとに商品の特徴を比較・実演しながら説明して行きます。商品知識については設備メーカーの社員に匹敵するほど勉強し、毎週ロープレを行ってトークを磨いています。この設備の説明は「ジャパネットたかたのようだ」と評されることも多く、水回り設備への関心が高い主婦層を掴んでいます。この設備説明トークのロープレには、総務や経理の社員も参加し、営業マンがショールームに不在の時でも、来場客に対応できるようにしています。

設備の説明の後は、構造コーナーで建物の説明をした後、玄関〜リビングの室内モデルを見せて着座を促し、資金計画や土地探し、完成見学会などの次回アポに進む流れを確立しています。
このショールーム見学のトークの流れはマニュアル化し、1組当たり1〜2時間をかけています。ここでのポイントは、「しっかりと商品の説明ができる」ということではありません。同社の商品は、性能や構造、標準設備のグレードは他社に見劣りしない自由設計ですが、特に際立った特徴があるわけではなく、商品説明が差別化になっているわけではありません。ポイントは、「初回から1〜2時間の接客ができる」ことです。完成見学会では、すべての来場客に1時間の接客をすることは難しいですが、同社ではショールーム来場者に確実に1〜2時間の接客をすることで、営業マンとの心理的な距離を縮め、会社の考え方をしっかりと説明し、信頼を得ることができています。そして、初回接客で自社のファンになってくれた管理客を完成見学会に呼び込んで、実際に建てた家を見せて家づくりへの想いを膨らませて、資金計画やプラン提出に進みます。ショールームで同社との商談を開始した客の4組に1組が成約となるということです。

2常設モデルで集めて見学会で具体化〜アート建工

鳥取のアート建工では、以前は完成見学会での集客が8割を占め、年間600組を集めていました。しかし、見学会の場では具体的な商談を進めにくく、次回アポを取って常設モデルのある営業所で本格的な商談に入るというステップを踏むこととなり、集客数からすると成約の歩留まりが低いという悩みがありました。そこで2年程前から、周辺へのポスティングやWEBによるイベント告知などを強化して、できるだけ営業所の常設モデルに直接呼び込む戦略にシフトしています。
米子営業所のモデルハウスは50坪の広さで、実際に建てる家よりは広めですが、周辺にリアルサイズの40坪、30坪で、デザインテイストの異なる分譲モデルを常に3〜4ヶ所用意して、次々と案内できるようにしています。営業所モデルでは、モデルハウスに採用している標準仕様や会社の説明をし、土地の有無、予算、建築希望時期などをヒアリングします。その上で、周辺の各モデルをひと通り案内すると、予算や家族構成に合わせてちょうどいい間取りや広さが想定でき、資金計画やプラン提出に進みやすくなります。また、プランの打ち合わせでは、パントリーや家事室、リビング階段など、各モデルで気に入った仕様を選びながら、施主の希望をプランに反映させやすくなっています。

現在も完成見学会はほぼ毎月行っていますが、来場数は年間300組程で、集客・商談の場というよりも、同社で建てている施主が多いことを地域に知ってもらうための広告宣伝の意味合いが強くなっています。
また、米子の常設モデルの認知度を高めるため、1年前からは「ひるままクラブ」として、平日の昼間にモデルハウスを地域の主婦のコミュニティに開放しています。ベビーマッサージ教室やキャラ弁教室、ドーナツづくりなど、親子で参加できる主婦向きの企画が多く、運営は主婦のパート社員が担当する。各講師からは会場使用料を徴収するのではなく、逆に謝礼を渡すことで、講師の間で口コミで評判が広まり、回を重ねるたびにイベント参加者数も増えています。

新規客を集めて管理客を増やすことだけでなく、そこからどのようなステップで商談を進めていくかを想定して、集客戦略を考えましょう。

(テキスト/株式会社住宅産業研究所 布施 哲朗さん)