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住宅関連 制度・マーケット情報

住宅購入検討者が業者選びをする際に、求めるものは様々です。多少予算を上げても間違いのない家づくりをしたい、高性能で安心できる家に住みたいという客層は、ハウスメーカーのブランドを重視するでしょう。
ブランドに捉われなくても、住宅の性能や設計、デザイン、素材など、こだわるポイントがある客層は、こだわりのポイントで評価が高い地場ビルダーを選ぶ傾向にあります。最近では、ハウスメーカーや建築事務所ほど高くなく、ローコストビルダーよりも設計の自由度が高い提案ができるビルダーが、この「そこそここだわり層」を掴んで成長してきています。

一方で、住宅に対するこだわりがほとんどないという客層もいます。それまでに住んでいた賃貸住宅よりも広くて部屋数の多い戸建住宅で、自分の支払い能力に収まれば満足できるという客層です。この客層が重視するポイントは価格です。同じような間取り・仕様であれば安いほうがいい、または、同程度の価格・間取りであれば、よりグレードの高い仕様の会社を選びます。所謂ローコストビルダーが得意とするターゲット層で、かつてこの客層を取り込んで全国に勢力を拡大してきたのがタマホームです。新潟県のイシカワやパパまるハウス、石川県の秀光ビルドは、現在もこの路線でエリア・棟数を拡大しています。

都道府県別のビルダー着工棟数ランキングを見ると、特に地方圏では、地場のローコストビルダーが棟数を伸ばしてきています。現在の若者は消費欲が低いと言われますが、賃貸住宅の家賃とそれほど変わらないローン月額で、新築の戸建を土地と合わせて購入できるのであれば、所得が高くない地方の若年層も住宅を購入する意欲はあるということではないでしょうか。このような、こだわりの少ない若年層を掴んで、地域で一定のポジションを確立しているビルダーの事例をご紹介します。

11200万円のローコストで、オプションを取らない代わりに値引きもしない〜丸商建設

丸商建設は、宮崎という全国でも市場規模の小さいエリアで年間300棟内外を手掛け、6年連続で売上二桁増という急成長を遂げているビルダーです。
同社の主力商品である「ステキ1000シリーズ」は、本体価格1,200万円(税込)で、総2階120m2、平屋110m2以内であれば、価格据え置きで間取りは自由にできます。クロスは250種類、屋根材は25種類、外壁材は500種類から選べますが、水回り設備はそれぞれ1社・1製品に限定し、一括購入によるスケールメリットを活かしてコストダウンしています。
標準本体価格1,200万円に対し、平均受注金額は1,300万円です。営業マンのほうからオプションを提案することは無く、できるだけ標準仕様で建てることを勧めるかわりに、値引きは一切受け付けません。設計や仕様に対するこだわりの強い客は追わないようにして、賃貸住宅とほとんど変わらない支払月額で新築戸建に住めるだけで満足できる客層のみをターゲットとしています。

そのため商談期間は短く、初回接客から契約までは約1ヶ月・3〜4回の商談で決まるといいます。設計担当を置かず、営業マンが間取りの図面までを描き、内外装や建具などの仕様決めは現場監督が担当することで営業効率を上げ、生産性を高めています。
集客は県内各エリアで行う完成見学会のみです。県内各エリアで用地を仕込んで分譲モデルを建てて、展示場として1ヶ月程使用した後、展示即売会と銘打って建売で販売します。見学会は県内5拠点で同時開催し、テレビのスポットCMで告知します。見学会では、今見ている家が標準仕様の1,200万円で建てられることを説明する以外は、売り込むようなトークはせず、客の情報を引き出すことを重視します。
特に重視するのが土地探しの進捗状況です。同社の客層は土地無し客がほとんどですが、家づくりを考えて見学会に来る客は、ポータルサイト等で事前に土地を探していることも多いです。当たりをつけている土地がある場合は、その土地を一緒に見に行くアポを取り、予算や敷地形状等に問題が無ければそのままプラン提出に進みます。まだ土地を探していない客に対しては、予算の目安を伝えて「先に土地を探したほうがいいですよ」と、客自身に土地を探させます。本気度の高い客は土地を探して戻ってくるため、営業マンが土地探しに時間を費やすことなく、追客もほとんどしません。これも無駄を省いた営業効率化の一つと言えます。
オプションを取らず、複雑な設計もせず、土地の斡旋もしない。ローコスト住宅を標準仕様そのままで売ることだけに特化することで、高い生産性と利益体質を築いています。

2住宅ローンは多く抱えないほうがいいと説明してローコスト住宅を売る〜中央建設

島根県の中央建設も、ローカルで近年好調なローコストビルダーです。島根・鳥取という小さな市場で、年間150棟内外を手掛けています。
同社の主力商品である「ニコニコ住宅」は、プラン固定の規格住宅です。本体価格は19坪・768万円〜40坪・1,236万円で、付帯工事やオプションを加えても1,500万円前後に収まります。土地と合わせた総額のローン月額は5〜6万円台に抑えられるという価格訴求が地域に浸透してきたことで、棟数を伸ばしてきました。
常設展示場は持たず、完成見学会を月2回行う他、年間20区画程度は自社で土地を仕入れて分譲モデルを建てます。初回からしっかりと接客するために、見学会の来場数は土日10組程度で充分としています。ホームページには見学会の予約フォームを設け、特典を付けることで予約来場者を増やし、予約状況に合わせてチラシの量を調整して広告費を削減しています。

営業トークの基本となるのは、資金面の不安の解消です。現在の収入や家賃等を聞き、将来的な子どもの学費や老後資金も考慮すると、住宅ローンは多く抱えないほうが良いという説明をして、土地から取得してもローン月額を5〜6万円台に抑えられる「ニコニコ住宅」を勧めます。資金面の不安が解消できれば契約まで進むのは早く、プランも固定のため商談期間は1ヶ月以内、長くても3〜4ヶ月に収まることが多いそうです。
以前は注文住宅を主力としていたため、規格住宅で客が本当に満足してくれるのかを不安視していましたが、それまでアパートに住んでいた層が、家賃とさほど変わらない支払い月額で新築戸建に住めるというだけでも満足度は高いそうです。プランが決まっているため、現場での細かい合わせの必要がなくなり、労務状況が改善されて社員満足度も高まっています。

ローコスト住宅は「なぜ安くできるのか」、「なぜ安い住宅を勧めるのか」を説明して、会社の姿勢を理解してもらうことで、他社との価格だけの競争に陥らず、成約率を高めることができます。

(テキスト/株式会社住宅産業研究所 布施 哲朗さん)