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住宅関連 制度・マーケット情報

住宅購入検討者は業者選びをする際に、各社を比較検討するために様々な情報を集めます。主な関心事は、その会社の構造や性能、設計の自由度、アフターの体制、予算内で建てられるか等です。これらの情報は、各社のホームページや資料で得られますし、住宅営業マンの接客を受け、質問をすることで疑問を解消できます。ただし、住宅会社がホームページ等でアピールする情報や、営業マンが他社との差別化として伝える情報は、基本的にはその会社が強みとしていることであり、マイナスイメージの情報は得られにくいものです。
その会社の良い点も悪い点も知りたいとなると、実際にその会社で建てた人の話を聞くことが一番だと考える人は多いでしょう。インターネット上には各種の口コミサイトがありますが、匿名による書き込みは、例えば競合他社が施主になりすますようなこともできるため信頼性に欠けます。より信頼性の高い情報として、ホームページや会報誌にOB客の声を顔写真入りで掲載している住宅会社は少なくありません。

見込み客がOB客に直接話を聞く機会として、入居宅見学会を行っている住宅会社もあります。アポを取って見込み客を入居宅に案内した時点で営業マンは席を外し、自由に会話をしてもらいます。会話の内容は「なぜこの会社を選んだか」「どのように家づくりを進めたか」等が中心となりますが、見学に協力してくれるOB客はその会社に対して好意的であるため、良いことを言ってくれることが多いです。「もう少しこうしておけば良かった…」というようなネガティブな話も出るかもしれませんが、これから建てることを考えている見込み客にとって参考になる有益な情報であり、OB客に正直に話をしてもらう関係性を築いている会社への信頼も高まります。

1入居宅=モニターハウスをクロージングに活用〜ヤマト住建、エスケーホーム

兵庫県のヤマト住建は、近畿圏を中心に広域展開し、関東にも進出して棟数・売上を伸ばしている有力ビルダーです。営業拠点として各地に出店しているのが、ロードサイド型店舗の「住まいのギャラリー」です。同店舗は構造や性能を説明する模型や主要な設備を展示するショールームと、打ち合わせスペースの構成で、チラシやホームページからこの店舗に集客します。店舗集客からの次のステップが、各店舗の周辺1km圏内に建てている分譲モデルへの案内です。モデルハウスは外部設計士とのコラボで、屋上庭園やスキップフロアを設けるなど、凝ったプラン、デザインにしています。
店舗近隣の分譲モデルが客のイメージに合わない場合や、他の実例も見たいという場合には、OB客がすでに暮らしている入居宅の「モニターハウス」に案内します。

同社の家づくりに対する満足度が高く、営業マンがコミュニケーションを取って仲良くなっているOB客をピックアップして、各店舗で約10件はいつでも見せられる物件を確保しています。見込み客の家族構成に近い物件や好みに合いそうな物件に案内することで、入居後の暮らしのイメージを膨らませます。営業マンが説明しなくてもOB客と見込み客の間で自然と会話が盛り上がり、モニターハウスの案内まで商談が進めばほぼ成約になるということで、同社のクロージングの決め手となっています。
熊本県のエスケーホームでも、モニターハウスとして各エリアにいつでも案内できる物件が複数ある状態を保っています。OB客にモニターをお願いするのは、建てた後ではなく、建てる前の商談初期の時点です。モニター登録者には設備グレードアップなどの特典を設けています。間取りや設備の打ち合わせの段階でそれを伝えることで、契約客の9割はモニター登録をするそうです。家を見せてくれる側にもメリットを持たせることで、見せられる物件を数多く確保しています。

2自由に選べるインフィルのイメージを膨らませる〜無印良品の家

MUJI HOUSEがFC展開する「無印良品の家」は、間仕切りを設けない大空間のスケルトン&インフィル構造で、インフィルとして「無印良品」の家具等を配置することで家を完成させるというコンセプトの住宅です。「無印良品」ブランドのファンである客層が大半を占めます。
間取りや仕様の変更はほぼ無いため、商談の中身でメインとなるのはインフィルの提案です。家の中の場所ごとの用途に合わせ、間仕切りは壁を設置するのが良いか、家具で仕切るのが良いか、収納家具は入居時にどこまで揃えるか等を、「無印良品」の商品をベースに、施主の要望をヒアリングしながら提案するのが営業マンの役割です。
商談が始まって早い段階で必ず行っているのが、すでに「無印良品の家」に住んでいる入居宅の見学です。

「無印良品の家」のインフィルを完成させるために、どのような家具を買ってどのように配置し、どのように暮らしているかを、同じく「無印良品」ブランドを好む見込み客に見せたい、話したいという入居者が多いため、見学の協力が得られやすいそうです。無印良品のシンプルな家具と、デザイン性の高いインテリア雑貨の組み合わせ方等、住まい方の参考にできることが多く、この見学会を行うことで「自分ならどのようにインフィルを仕上げるか」のイメージが膨らみ、購入意欲が高まります。

入居宅見学は、見せてくれる施主の協力を得ることのハードルは高いですが、実施できれば参加者の気持ちを高められ、クロージングの決め手になるイベントと言えます。

(テキスト/株式会社住宅産業研究所 布施 哲朗さん)