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住宅関連 制度・マーケット情報

消費増税の後、住宅着工の落ち込みとは反対に、着工を伸ばしてきたのが賃貸住宅です。賃貸住宅が底を打ったのは、リーマン・ショック直後ではなく、2010年度~震災のあった2011年度で、着工は給与住宅も含めて30万戸を割りました。
その後2012年度に30万戸台を回復し、2016年度には43.3万戸と着実に市場規模を拡大させてきました。市場拡大の背景は、2015年の相続税改正、更には史上最低水準となっている金利動向、また落ち込み過ぎたところからの反動増もあるでしょう。賃貸住宅は過剰であると、多くのメディアで賃貸へのネガティブ報道も行われました。それでも2016年度の着工までは、大きく伸ばしてきたわけです。
住宅市場を牽引し、前期100万戸近くまで牽引したのは、賃貸住宅の活況があったためです。ところが、2017年度に入ってから、住宅着工の動向に変化が起きています。連続着工増で来た賃貸住宅がいよいよマイナスに転じ、曲がり角に差し掛かったと言えます。
それでは、今年度の着工は大きく減るのでしょうか。今年度以降の着工動向を予測してみます。

1賃貸住宅着工が曲がり角、2017年度はマイナスに転じる?

賃貸住宅の着工は月別で見ても、前年比プラスを続けて来ました。2015年11月から2017年の5月まで、19ヶ月連続での着工増となりました。相続税が改正されたことによる相続対策としての賃貸住宅建築、更には2016年頭からマイナス金利が導入され、金利は史上最低を更新して来ました。そういった背景の下、賃貸を供給するハウスメーカーの積極的な営業攻勢もあり、多くの賃貸着工ニーズが動いてきたわけです。
また一方で、賃貸住宅に対してはマイナスの情報も多く報道されてきました。アパート建築の過熱、空き家の増加問題、オーナーとの家賃保証に関するトラブル、アパートローンの融資姿勢厳格化などです。追い風傾向だった賃貸住宅市場には、まさに逆風が吹き荒れて強まってきた状態と言えます。
それでも2016年まではニーズが上回り、賃貸受注、着工を支えて来ました。その曲がり角に差し掛かってきたというのが、今の状態と言えるでしょう。2017年度に入ってから、数字になって現れ始めました。
堅調に業績を上向かせてきた大手ハウスメーカーの賃貸請負受注もいよいよ第Ⅰ四半期にはマイナスに転じ始め、賃貸着工は2017年の6月に20ヶ月ぶりにマイナスとなりました。そして3ヶ月連続でマイナスとなっています。6月は2.6%減、7月は3.7%減、8月は4.9%減とマイナスが続き、4~8月の集計で見ても1.6%減と前年割れの状態です。確かに人口減少期において、着工が増え続けることはあり得ませんから、調整を迎える時期が来るのは当然です。次に消費増税という壁も来ますし、そこでまた駆け込み、反動減といったことも起きてくるものと考えられますが、今賃貸住宅着工がマイナスに転じて来ているのは、過熱感を抑える時期だと言って良いでしょう。
ただ大手ハウスメーカーの賃貸事業の多くは、まだ受注残を抱えている状態です。よって今年度急激に賃貸着工が大きく減少するということはないようにも思います。また中高層賃貸の方が大きなマイナスで、低層アパートは現状は何とかプラスですし、首都圏の低層アパートはまだ6.1%増加しているなど、エリア差もあります。

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2建売分譲住宅は堅調、分譲ビルダーの攻勢続く

今年度、賃貸住宅の着工がマイナスになると、全体の新築住宅の着工もマイナスとなる可能性は高くなってきています。
持家着工もマイナスが続いており、着工が増加するという要素もあまり見当たりません。
唯一、堅調な着工動向を見せているのが、分譲住宅です。これは戸建の建売分譲と分譲マンション共に伸びを示しています。
マンションの供給戸数(発売戸数)は、価格の高止まりで2016年は大きく落ち込みました。首都圏でも新築マンションの供給が減り、中古マンションの成約件数が初めて新築を上回るなどの現象も起きました。今年は昨年に比べると増えているようですが、まだ低い水準です。
マンションの着工となると、発売戸数とは時期はずれてきますが、やはり供給規模の大きい物件があったり、また用地取得の問題や市場背景などで、戸数の増減のバラつきが大きくなります。よってあまり月ごとの着工動向を前年比でみることでは動向は見定めにくいのですが、現状は最も大きく着工を伸ばしているのがマンションです。4~8月の5ヶ月間では前年比で8.1%の着工増となっています。

建売住宅は、中期的な着工の推移を見てみても、非常に安定しています。基本的に供給側の積極性が建売の着工動向に影響を与えますから、大きなブレが少ないということも言えます。そしてここ最近は、新築マンションの高騰により、マンションが減っている分、建売市場がその受け皿になっているということもあるでしょう。
ただ建売も以前のような大型開発は土地自体の出物がなく、減少傾向にあると言います。一方で、相続から発生するミニ開発のような分譲案件は増えて来ています。飯田グループなどの攻勢、都内ではオープンハウスが小さな土地を2つに割って、3階建てを建てるといった手法で供給を増やしています。こういった土地の供給と需要はまだまだあると見られ、次の増税までは建売市場は比較的安定して推移するのではないかと思われます。
建売住宅の着工は、今年度に入ってからも好調で、4.6%程度プラスで推移しています。2016年度に13.9万戸まで着工を伸ばしていますから、今年度はおそらく14万戸超えとなって着地すると見られます。昨年度まで市場を牽引してきた賃貸住宅が失速して、今年度の着工全体を支える主役は、建売住宅、マンションといった分譲住宅になってきそうです。

(テキスト/株式会社住宅産業研究所 関 博計さん)