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住宅&住宅設備トレンドウォッチ

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制度・マーケット情報 地価上昇は本格化へ、立地で二極化は進む

INDEX 2018.4.20

全国26,000地点を対象に実施された、2018年1月の公示地価が3月末に発表になりました。その上昇率を見ると、商業地だけでなく、住宅地でも地価上昇が鮮明になってきています。全用途平均と商業地は3年連続の上昇となりました。地方圏でも地価がプラスに転じたのは、バブル期以来のことです。
一方で、地価動向は二極化を強めているという傾向は変わりません。上がっているところと、下がっているところがはっきりと明暗が分かれています。県別でも上昇県と下落県の差は大きく、同じ県内でも都市エリアと郊外エリアは二極化です。駅からの距離でも明らかに差が出ています。地価の動向は、住宅市場に与える影響も大きく、トレンドを読むという意味でも重要です。

1都市部と地方・郊外の地価二極化が更に進む

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地価の回復が鮮明になってきました。2018年1月時点での全国住宅地は0.3%上昇し(前年は横這い)、住宅地がまともに上昇に転じたのは10年ぶりです。三大都市圏の住宅地は0.7%上昇し、中でも人口流入も多い東京圏の地価上昇率は1.0%(前年0.7%)と、ついに1%台に乗せました。名古屋圏も堅調で0.8%、大阪圏はわずかですが0.1%上昇しました。また今回は地方圏の住宅地平均でも限りなく横這いに近づいていて、商業地は0.5%上昇、全用途でも0.041%と、地方で地価が上昇するのは26年ぶりということです。

地価上昇の要因は、一つには全国的に雇用・所得環境が改善に向かっていることで、利便性の高い地域を中心に、実需としての住宅地価が回復しているということがあります。多くの地方都市でも地価がプラスに転じています。例えば上昇が目立ったところでは、佐賀市が前年の0.8%の下落から、今年は0.7%上昇へと大きくプラスとなりました。

また訪日客の増加に伴い、店舗・ホテル需要が旺盛であることも要因です。インバウンド需要が拡大して、不動産投資の主役がオフィスから店舗・ホテル、更には工業地である物流にも移行しているといいます。よって商業地の地価は全国で1.9%上昇(前年1.4%)、地方圏でも0.5%上昇とプラス圏に入りました。

全国的に回復傾向ではありますが、地価動向は二極化が進み、都市圏と地方、都市中心部と郊外とでは、大きく差が開いています。三大都市圏と地方の地価の差は開く一方で、地方圏の地価を牽引しているのは、札幌、仙台、広島、福岡の地方中核4都市を始めとした一部地方都市です。この中核4市の地価上昇率は3.3%(前年2.8%)で、年々上昇幅が上がっています。また調査地点の中での上昇地点の割合という点で見ても、地方4都市では85%の地点で上昇しています。東京都全体でも上昇したのは83.4%ですから、それよりも上昇地点の割合が高いということです。

2今年地価が上がったところはどんな立地か、インバウンド効果も

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今の地価動向には特徴があります。一つは、「名よりも実」、ブランドよりも利便性という傾向です。例えば、東京23区内の地価上昇率を見ますと、2018年の1位は荒川区の6.1%上昇、2位は北区で5.6%上昇となりました。上がり過ぎてしまった都心部よりも、まだそこまで地価が上昇していない城東エリアに比較的人気が集まっていると言えます。また千葉県では君津市が5.5%上昇と、アクアライン効果が出ています。このことは、地方中核4市で起こっていることと似ていて、東京の中心部からその周辺へ、三大都市から地方へという地価の波及効果が出ていると言えます。

2つ目は、「駅からの距離」がより重要な要素になっているということ。これも利便性ということと近いものですが、駅に近づくほど地価上昇率が高くなり、離れるほど下落率が大きくなります。三大都市圏で見ると、駅から2km未満であれば0.1%上昇、1km未満であれば1.3%、500m未満となると1.7%上昇となっています。逆に駅から5km以上離れると、1.1%下落しています。この傾向は全国的ですから、分譲住宅を手掛ける際には、駅からの距離は大きく地価に影響を与えると言えるでしょう。

3つ目は、インバウンドの影響もあり、「観光地での地価」が上昇しています。ちなみに今年の住宅地地価上昇地点のトップ3は北海道の倶知安町でした。スノーリゾート人気で山麓地域から駅周辺まで波及し、リゾート従業員向けの住宅需要も増えたと言います。

また県別での住宅地1位は沖縄県で5.5%上昇、那覇市は6.3%も上昇しています。商業地での上昇率では、観光地が集積する京都府が6.5%プラスと全国1位となりました。商業地では大阪府の最高地価で、初めてミナミがキタを上回って逆転したことも、今年起こった変化の一つです。またローカルエリアでは、外国人人気の高い岐阜県の高山市の一部商業地地価が上昇したことも、象徴的な動きでしょう。

今の地価の上昇は、都市部も地方も上がったバブルの時とは異なり、上記のような選ばれた地点においての地価が上昇しているということです。そういう点からしても、用地選別の目はより重要になっていると言えます。

3バブル期以来上昇に転じるエリアもあり、勝ち負けが鮮明に

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都市部、主要エリアへの一極集中も、より鮮明になってきました。例えば東北エリアでは、宮城は2.7%プラス、仙台も4.6%の地価上昇率ですが、秋田は1.8%下落と全国一の下落率と差が開きます。また県全体は下落が続いていても、県庁所在地はプラスに転じたという新潟市の例もあります。新潟市は26年ぶりに上昇に転じました。

人口動態も、地価には影響を与えてきます。都市圏の中でもはっきりと明暗が分かれていて、例えば千葉県流山市は、行政の子育て支援政策が功を奏して、郊外でも人口増が続いている自治体です。人口増加率は2.5%増、千葉県内で2年連続1位であり、特に30〜40代の子育て住宅取得層の人口が増えています。周辺では柏市などの人口が減少し、地価下落が続くのとは対照的です。流山市も地価自体はまだ下げ止まったといった程度ですが、人口がこれだけ増えているとなると、住宅需要は上がるはずで、地価も上昇基調に転じてくると見られます。

2018年1月の地価動向を見て来ましたが、地価上昇は住宅市場動向にはプラス要素となるはずです。今までは不動産投資といった点から商業地の地価上昇が目立っていましたが、実需を中心とする住宅地でも、地価は上昇へと転じました。但しずっと上がり続けることはないため、何処かで調整はありますし、また利便性などで明暗は今後も分かれてくるはずです。不動産の価値という意味でも、選別の目を持って慎重に地価動向を見ていく必要があります。

(テキスト/株式会社住宅産業研究所 関 博計さん)