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住宅&住宅設備トレンドウォッチ

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ビルダー販促事例 コミュニティ創出型の街づくり

INDEX 2018.7.20

現時点での住宅着工は、建売住宅のみが堅調に推移し、持家や貸家は苦戦しています。ただ注文住宅でも各社受注回復の兆しも見られ、消費増税の8%契約期限の経過措置が終了する19年3月までは、持家の受注が徐々に膨らむでしょう。期限が近づくほど現場は逼迫し、引き渡し時期は後ろにズレ込んでいきます。そして購入を決めたらすぐに入居できる、建売住宅の需要も高まると思われます。

建売分譲を主力とするビルダーの多くからは、増税前駆け込みの土地無し客対策として、また増税後の反動減の時期に売れる物件を確保するため、建売分譲用地の仕入れや完成在庫の確保を進めているという声が聞かれます。各社の仕込み強化の状況からすると、18年度の建売分譲の着工戸数は17年度よりも増加すると予測されます。
ただし、今年度の増税前駆け込みの波が引けば、住宅市場は縮小に向かい、売り残した完成在庫を多く抱えることはリスクになります。建売分譲が売れる要因は、やはり立地と価格。地価の動向を見ても人気エリアと不人気エリアの差は鮮明で、売れるエリアの用地を仕入れる見極めが重要となります。一方で、利便性の高くない立地でも街づくりにこだわり、そこに住まうことの付加価値を高める分譲団地の企画を得意とする住宅会社もあります。

分譲団地の街づくりというと、街区計画や外観の統一、外構・植栽の作り込みなど、デザイン性を高めることが基本です。最近の新たなトレンドとして出てきているのが、住民同士の交流を促す、コミュニティ創出型の分譲団地です。“シェア”の概念で団地内の一部を共有し、自然と住民同士の交流が生まれるような工夫をしている分譲団地の事例をご紹介します。

1子育て家族で中庭を共有~ミナモト建築工房

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岡山のミナモト建築工房は、営業マン全員が建築士の資格を持ち、資金計画から土地探し、設計、工事監督、アフターまでを1人の担当者が一貫して担当する「マンツーマン工法」で、1人当たり売上1億円超の全国トップの生産性を上げているビルダーです。周辺環境や通風、採光に配慮した環境共生型の設計を得意とし、ほぼ全棟で外構もセットで提案します。

以前は注文住宅を主力としていましたが、数年前からはコンセプトを設けて街並みを作りこむ、付加価値創出型の分譲団地を手掛けています。
その第一弾が、2015年に手掛けた「日本一幸せな住宅団地 平田107」です。建売ではなく全棟自由設計の売建てですが、各戸の縁側を中庭に向ける、セットバックの距離や軒の高さを揃える等のデザインコードを設け、1棟ごとに異なるデザインでも統一感のある街並みとしました。
この分譲団地の最大の特徴は、敷地の中央に共有の中庭を設け、それを取り囲むように11戸を配置する街区計画です。住民は中庭の所有権の1/11ずつを有する持ち分所有としました。中庭を共有することで程よい距離感で住民同士がつながるというコンセプトを元に、外部の設計士の協力でマスタープランを作成し、説明会で購入希望者を集め、座談会やワークショップを繰り返して最終プランをまとめました。造成から竣工までの間にも、BBQや中庭へのデッキ敷設などのイベントを行い、住む前から住民同士の交流を図りました。計画当初からコンセプトに共感する住民が集まり、街区設計から住民が参加しながら、自然にコミュニティが生まれる街づくりと言えます。

2様々なものを住民同士でシェアする分譲団地~アキュラホーム

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アキュラホームが今年6月から一般公開を開始した51区画の分譲団地「ヒルサイドテラス若葉台」は、住民同士で様々なモノ・コトをシェアすることでコミュニティを育むことをコンセプトとしています。

第一に空間のシェア。各区画面積は200m²弱の広さですが、各戸が30~40m²を拠出して、3~4戸ごとにまとまった「コモンスペース」を設けています。子どもたちの遊び場や主婦同士の井戸端会議の場として、各戸に属さない少し広めの庭としてBBQ等を楽しむスペースとして活用することを想定しています。
また、街区内には共有で使える「センターハウス」を設けています。住民同士の集会や子どもの遊び場として自由に使用でき、プロジェクターがあるため、映画鑑賞会やスポーツ観戦で集まることもできます。ミニキッチンや来客用駐車場、宅配ボックス等を備えている他、防災用品の備蓄や、テント・BBQコンロ等のキャンプ用品の貸し出しも行います。

第二にエネルギーのシェア。センターハウスの運用や植栽の管理は、住民同士の管理組合で運営します。そのため分譲マンションと同じように、住民からは管理費を徴収します。この管理費には太陽光発電の売電収入を充当します。各戸に6~8kWの太陽光発電を設置し、これだけでは全量買取の対象とはなりませんが、センターハウスにも24kWの太陽光発電を設置し、まとめて一括申請することで、20年間の全量買取で売電できるということです。1戸当たり毎月8,000~10,000円の売電収入が得られると想定しています。このうちの5,000円を毎月の管理費に充当し、全量買取期間中は各戸で差し引き5,000円弱の売電収入を得られます。

都内にアクセスの良い京王線若葉台が最寄駅ですが、駅からは徒歩15~20分の距離で、バスも通っていないため、決して利便性が高いわけではありません。しかしながら、団地の裏側には里山が広がり、近所には大きな公園があって自然には恵まれています。また団地内は無電柱で豊富に植栽を施し、都会では難しい街並みの美しさも実現しています。交通の利便性だけを求めない客層にとっては魅力のある環境と言えます。

街づくりにこだわり、とことん差別化することで、デメリットをカバーして、魅力のある分譲団地は作れます。むしろこういった分譲団地のほうが、住民の満足度は高まるかもしれません。

(テキスト/株式会社住宅産業研究所 布施 哲朗さん)