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住宅&住宅設備トレンドウォッチ

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ビルダー販促事例 木質系新建材「CLT」の住宅活用」

INDEX 2018.11.16

住宅市場の縮小を見据え、大手ハウスメーカー各社は、住宅以外の事業施設・商業施設等も手掛ける総合建設業へと姿を変え始めてきています。その象徴的な動きと言えるのが、ここ数年で一気に進んでいる、ハウスメーカーとゼネコンとのグループ化や資本提携です。現在は大和ハウスとフジタ、積水ハウスと鴻池組、住友林業と熊谷組、パナソニックと松村組、ミサワホームと大末建設、旭化成ホームズと森組などが資本参加や提携の関係にあります。

中大規模の非住宅はRC造や鉄骨造で建てられるのが一般的です。しかしながら、東日本大震災以降、セメントやH形鋼等の建築資材費や職人の人件費は高騰しており、東京オリンピック関連施設の建設需要が一服するまで、この傾向は続くと見られます。そこで、RC造や鉄骨造と比べるとコストが安く、工期が短く、税制メリットもある木造への注目度が高まっています。東京五輪のメインスタジアムとなる新国立競技場も、大量の国産木材と鉄骨を組み合わせた構造・意匠が話題となりました。国内の森林の環境保全や低炭素化、林業再生の観点からも、国では国産木材の活用を推進しています。公共建築物の木造率は年々高まってきており、今後さらに木造率を高めるには、多くの木材を使用できる中大規模建築物の木造化が大きなテーマとなります。そういった中大規模木造建築の新建材として、近年注目度が高まっているのがCLTです。

1大規模木造の新建材として注目されるCLT

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CLTとは、ひき板を繊維方向が直交するように積層接着した木質建材で、欧米では既にCLTを使った高層建築が施工されています。厚みのある大きな板で、構造材でありながら断熱材・遮熱材の役割も兼ねるため、そのまま外観や内観に現しで使うことができ、木の素材感が感じられる意匠性も評価されています。
日本でも13年12月にJAS規格が制定され、16年4月にCLT関連の建築基準法告示が公布・施行されたことで、一般利用が本格的にスタートしています。国産木材の活用という観点からも様々な支援制度が設けられ、構造材の一部にCLTを使用した混構造の建築物は徐々に増えてきました。

工場で生産・加工するCLTパネルは一つ一つが大きな面材のため部材点数が少なく、現場での施工が容易で工期が短縮できるというメリットがあります。一方で、パネル1枚が重く搬入にはクレーン等の重機が必要なため狭小地には向かない、厚い木の固まりのため現場で細かい加工や調整がしにくい、一般的な住宅用の構造材と比べると価格がまだ高い等の理由から、現状では住宅よりも中大規模木造建築での利用価値が高いと見られます。
CLTが住宅用の建材として普及するにはまだ時間が掛かりそうですが、モデルハウスの構造や意匠の一部に取り入れるような事例も見られるようになってきています。さらに実験的な取り組みとして、住宅の構造材としてCLTを全面的に活用する事例も出てきています。

2総合展示場にCLTモデルを出展…アキュラホーム「キラクノイエ」

アキュラホームでは、今年は創業40周年事業として各地で提案型の新モデルハウスをオープンしています。そのうちの一つ、今年5月に神奈川の港北展示場でオープンした新モデルハウス「キラクノイエ」は、外壁と屋根、小屋裏床材に5層構造・450mm厚のCLTパネルを使用しました。

建築家とのコラボによる“週末別邸”をコンセプトとした別荘風のモデルハウスで、3棟の小さな小屋を組み合わせたような形となっています。CLTの躯体のみで構造を支えているため、各棟の内部は柱や構造壁の無いワンフロアで、内装は構造材をそのまま現しとして、外装はCLTの上に遮熱材とガルバリウム鋼板を施工しました。
ゴールデンウィークに事前公開したところ、他社のモデルハウスへの来場者は平均60組だったのに対し、同モデルはその3倍を集めたそうです。モデルハウス全体の延床面積は約120m²で建築費用は約5,000万円と、やはり一般的な木造住宅よりも割高になりました。今後は同モデルに使用した小屋ユニットを1棟70~80m²の準規格住宅として販売する計画もあるということです。

アキュラホーム「キラクノイエ」

3CLTの住宅活用実証実験…木のいえ一番協会「CLT HUT」

SE構法のVC本部のNCN、ログハウスのBESSのFC本部であるアールシーコアを中心に、木材を現しで使用する住宅の普及を促進する「木のいえ一番協会」では、協会内にCLT事業部会を設けています。その活動の一つとして、CLT低層住宅の実験事業「CLTHUTプロジェクト」を発足し、今年6月に実験棟を公開しました。

実験棟の壁材と屋根材には150mm、床材には210mmのCLTを採用しました。パネルは銘建工業の生産・加工のものです。階段や玄関ドア、室内ドアもそれぞれ1枚のCLTパネルを削り出して製造しました。
構造設計と専用金物の開発はNCNが行い、屋根以外は現しとした内外装の美観を損ねないために、接合金物が表に露出しないように工夫したそうです。外壁4辺の中央部のパネルで構造を支え、主室の角は二面開放の大きな引き戸とすることで外部デッキとの連続性を持たせ、風雨や日射から外壁を保護するため、2階床と一体の1160mmの深さの庇で周囲を囲むようにしています。
施工は普段アールシーコアのログハウスを施工している職人が担当しました。建設期間は17年10月~18年2月。パネル加工の制度が高く、遊びの部分が無かったため施工に手間がかかることがあり、工期は当初の計画よりも長引いたそうですが、実験棟建築の成果の一つとして新たな改善点が発見できたということです。
実験棟は山中湖の北側にあるアールシーコアのタイムシェア別荘地内に建てられ、冬寒く、夏は高温多湿な環境の中でCLTパネルの経年の変化を測定し、壁に付加的な断熱を施さずに室内の熱環境を継続的に観測する計画です。

CLTが普及し生産量が増え、パネルのコストが下がれば、新たな住宅の建材ユニットとして、一般の木造住宅よりも短工期で生産性を高められる可能性もあります。大工不足が叫ばれる中で、生産性の向上は住宅会社が抱える課題の一つです。新建材や新工法を取り入れるという選択肢も増えてきそうです。

木のいえ一番協会「CLT HUT」

(テキスト/株式会社住宅産業研究所 布施 哲朗さん)