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住宅&住宅設備トレンドウォッチ

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住宅新商品トレンド 『人生100年』時代を見据えた次世代商品戦略

INDEX 2019.3.22

最近メディアなど様々な場面で目にするようになった「人生100年時代」。元を辿れば、この言葉はリンダ・グラットン氏の共著書「LIFE SHIFT」の中で提唱された言葉です。背景にあるのは、現在、世界で急激に進んでいる長寿化現象です。過去200年間のデータを見ると、10年毎に2年ずつ寿命が延びており、先進国においては1967年生まれの半数は91歳まで、2007年生まれに至っては2人に1人が103歳まで生きると予測されています。また、日本では世界的に見ても長寿国の1つであり、2007年生まれの半数がさらに4歳長く、107歳まで生きるとのことです。

この長寿命化社会と云える時代の到来を見越し、日本政府は2017年に「人生100年時代構想会議」を創設しました。「人生100年時代」が認知され始めたのもその頃でしょう。その後の施策としては、幼児教育の無償化や高齢者雇用の促進、介護人材の処遇改善などが挙げられ、「生産性革命」と「人づくり革命」の2軸でこの課題に立ち向かおうとしています。
住宅業界としてもこのような国の動きに倣い、大手ハウスメーカーでは、住宅で長寿化を見据えた健康や生活をサポートできる構想や商品の開発が進められています。

1わが家を世界一幸せな場所にする「プラットフォームハウス構想」~積水ハウス

積水ハウス「プラットフォームハウス構想」

積水ハウスは、2019年米国ラスベガスにて開催された世界最大級の電子機器の見本市「CES2019」において、「プラットフォームハウス構想」を発表しました。同社はこれまで「安全・安心」に着目した耐震性・耐火性、さらに「快適性」の向上を追求してきました。2020年で設立60周年を迎えると共に、今後のビジョンとしては、住宅を介して人生100年時代を見据えた「幸せ」の場を提供していくことを掲げました。この構想が目指すところは以下の3点です。

  • (1)住まい手に寄り添いながら、幸せづくりのパートナーになる
  • (2)新しい価値として「健康」「つながり」「学び」などの無形資産の幸せを提案
  • (3)事業領域を住まい手の住み方と生活サービスまで拡大し、今後の事業成長につなげていく

目下取り組んでいるのは、「急性疾患対応システム」の開発です。脳卒中や心疾患などを想定したものですが、特に脳卒中は年間約29万人が発症し、発症場所に関しては「家」が79%を占めるというデータがあります。このシステムでは、住宅内で発生した居住者の転倒などを検知し、遠隔のサービス窓口から音声などで呼びかけ、反応がないなどの異常が分かれば窓口から救急を呼ぶなどの対応を可能とします。オンライン化したドアホンなどの機能を使い、救急の到着を確認したら玄関を開錠し、転倒場所などの情報を提供し、速やかな救助活動の実現を目指します。

また「経年変化」に対するサービスとして、住まい手の心拍数、呼吸数などの生体データを取得して、病の予兆を読み取る可能性も高めます。「予防」としてのサービスとしては、生体データと住環境データを連動させ、温度、湿度、照明などをコントロールし、快適な生活サポートという点も進めていきます。この春には慶應義塾大学理工学部の大槻知明教授の主導のもと、複数の大学病院にて臨床研究を開始し、夏以降は実証実験をスタートする予定です。この事業は、NEC、日立製作所など、他業界の企業ともアライアンスを組み、2020年春頃の「プラットフォームハウス」発売を予定しています。

2都市ストレスの軽減を図る「森が家」~大和ハウス

大和ハウス「森が家」

大和ハウスは、ちょっと視点の異なるシニア向けの住宅を開発しました。50~75歳の世代に向け、「森が家」をコンセプトに設定した都市なか3階建ての木造モデルハウス「xevoGranWood都市暮らし森が家コンセプトモデル」を、2019年1月に品川シーサイド展示場にてオープンしました。
この住宅は、予防医学研究者である石川善樹氏と共に「都市ストレスから解放され、健康で充実した人生を謳歌できる家」を目指して開発したモデルハウスであり、都市特有のストレスから解放するため、「五感のゆらぎ」と「人とのつながり」をテーマとしています。

1階のエントランスはオンとオフを切り替える「森の入り口」と捉えています。ダーク調でまとめられた落ち着きのあるダイニングは、都市ストレスを感じる人工的な空間ではなく、森の陰影の中で五感がゆらぐインテリア・植栽で空間としてデザインされています。内と外とを緩やかにつなぎ、地域の方との交流も生まれる動線設計としています。
2階は自然と家族や仲間が集まる「森の隠れ家」です。木の温もりを感じさせるリビング・ダイニングを設け、リビングの中央には暖炉を配置しています。視界に占める植物の割合を意味する緑視率を10%以上に保ち、火のゆらぎが都市ストレスからの解放、心身ともに自然体な状態へと導くとのことです。
3階のコンセプトは静けさの中で熟睡できる「森の寝床」。寝室では、日本各地で収録された森や川の音を流しています。都会にいながらも、人里離れた静かな旅館に泊まっているかのような心地よい眠りの提供を可能としています。
人とのつながりが希薄になっていることが、健康力に悪影響を与えている可能性が高いと、予防医学によって実証されています。家族・地域と自然とつながる仕組みを家につくることで、生涯活躍できる健康力を高めます。

34世帯がつながる家を提案「五世代の家」~LIXIL住宅研究所

LIXIL住研「5世代の家」外観
LIXIL住研「5世代の家」内観

LIXILグループで住宅FC事業を展開しているLIXIL住宅研究所は、人生100歳時代の未来型住宅として、五世代4世帯の家族が1つの住宅の中で暮らせるコンセプトホーム「~人生100歳時代の未来住宅~五世代」のモデルハウスを昨年7月に公開しました。
このコンセプトホームでは、五世代が、各世代に合った別々のユニットに住みつつも、一つ屋根の下に小さなコミュニティを形成して、互いに見守り助け合えるようなプランを提案しています。このモデルハウスでは、「4世帯がつながる家」「IoTで進化する家」「からだを鍛える家」「未来に受け継ぐ家」という4つのテーマを設けています。

「4世帯がつながる家」では、独立して暮らしながらも、自然な距離感を保つために、家の中央には生活を共有するスペース「コネクティング・フロア」を設けています。各世帯間はフロアの高さに差を設けることで区分し、各世帯の生活スペースは充実させつつ、共有スペースには大きな吹き抜けを設けることで、開放的な空間としています。

「IoTで進化する家」では、スマートフォンやタブレットを通して家電製品や玄関ドアの施錠の遠隔操作できる他、新しい技術としてデジタルコミュニケションツール「Mirror Concierge(ミラー・コンシェルジュ)」により、居住者の健康や快適な住生活をサポートします。

「からだを鍛える家」では、子どもの「運脳神経」を高め、運動の基礎となる動作を学べる工夫を盛り込むと同時に、プランの工夫によって高齢者も日常生活を送るだけで、からだに適度な負担をかけられる仕様となっています。

「未来に受け継ぐ家」では、多世帯が末永く住み継ぐことを目的に、様々な災害から命や財産を守るための安全・安心の工夫を盛り込んでいます。太陽光発電や蓄電池、LPガスを設置することで、万が一ライフラインが途絶えた時にも不自由なく生活できることを訴求しています。

(テキスト/株式会社住宅産業研究所 斎藤 拓郎さん)