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住宅&住宅設備トレンドウォッチ

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ビルダー販促事例 就業者数が減少する職人の確保と現場効率化

INDEX 2019.3.22

日本の人口は2008年をピークに減少に転じ、生産年齢人口が減少しています。労働市場に参加していない女性や高齢者の働き手を増やし、現役世代の長時間労働を是正して生産性を高めるため、昨年6月に「働き方改革法案」が成立し、今年4月から運用が開始されます。営業マンや設計担当者の残業、休日出勤が常態化している住宅会社は少なくないでしょう。「働き方改革法案」は住宅会社が労働時間を短縮し、時間当たりの生産性を高められるような体制づくりに移行するきっかけとなりそうです。

住宅業界で特に労働力の不足が懸念されるのは、施工に携わる現場の職人です。国勢調査によると、2015年時点での大工の人数は35万人。30年前と比較すると半分以下となっています。特に2000年以降は毎年約10万人ペースで減少しています。野村総研では、今後も大工の人数は減り続け、2030年には21万人まで減少すると予測しています。大工の高齢化も進み、2015年時点では60歳以上の大工が38.7%を占めるようになっています。高齢となった大工が次々と現役を退いている一方で、新たな人材が流入してきていないことは、住宅業界が抱える大きな問題として顕在化してきています。

1大工不足への一般的な対策

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このまま大工不足が進行すると、住宅着工の減少にも直結していくことになります。業界全体の大工不足という課題に対しては、以下のような対策が考えられます。

(1)新しい大工のなり手を増やす
労働市場に参入してくる若者にとって魅力ある就職先の選択肢となるように、労働環境の改善や業界全体でイメージの向上に取り組む必要があるでしょう。大工を社員として採用し、育成しているビルダーも少なくありません。外国人労働力の受け入れも今以上に必要となってくるでしょう。

(2)施工の効率化
大工1人当たりの負担を減らすため、より施工しやすい部資材や工法の開発によって現場の工数を減らし、生産効率を高めることが求められます。プレカットの普及によって木造住宅の工業化は進んでいますが、プレハブ工法やユニット工法により近くなってくるかもしれません。

(3)新しい技術・システムの導入
大工の数が減っても生産性を維持できるように、施工する大工の負担を軽減するような新技術や、間接部門の業務を効率化するシステムの開発が進み、住宅会社への普及も加速すると見られます。

2自社で大工を教育・採用・育成…ポラスグループ、新和建設

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全国のビルダーに先駆けて大工を育成する教育機関を開設したのが、埼玉のポラスグループです。「ポラス建築技術訓練校」を創設したのが1987年。訓練校の卒業生は延べ約770名を数え、ここ数年は毎年20~30名が入校しています。同行の卒業生で現在ポラスグループに社員大工として在籍しているのは50名。意外に残っていないようですが、社員大工としてポラスグループに入った後、現在は設計や工事監督、営業、訓練校の指導者などに職種を変えてポラスに残っている社員が約250名います。卒業後に独立し、ポラスの専属として同社グループの物件の施工に携わる大工も少なくありません。家業の工務店や大工を継ぐための技術習得を目的とする入校性も全国から集まります。自社の物件を施工する大工を確保するためだけでなく、業界全体の大工不足問題に貢献する教育機関と言えます。

創業時から一貫して大工の育成に取り組んでいるのが、愛知の新和建設です。毎年5~10高卒大工研修生を採用し、現在は約100名の棟梁・研修生が在籍しています。
高卒で入社した研修生は寮に入り、道具の使い方等の大工の基礎研修を2週間、外部の管理者養成学校で社会人としての基礎教育を10日間受けた後、自社の大工学校に入学して2年間の技術教育を受けます。大工学校への入学と同時に、協力業者の棟梁の元で修行を開始し、6年間で技術を習得します。採用から7年目のお礼奉公を終えると独立し、ほとんどが同社の専属大工となると言います。独立後も隔月実施の棟梁会で常に情報共有し、現場の施工品質専任の検査員によって400ページにわたる品質基準を元に管理され、技術向上が促進されています。

3現場管理をIT化し、職人を現場の主役に…マルコーホーム

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和歌山県のマルコーホームは、従業員1人当たり1億円超を売り上げる高生産性ビルダーです。営業以外の業務の多くをアウトソースして、社内・社外で分業することによって生産性を高めています。設計は基本的に外部の建築家が入り、施工管理については工事監督という役職を置かず、管理部門の社員がクラウドを介して現場の進捗を管理しています。
約120社の協力業者全員にiPadを支給し、工程管理ソフトを使って現場の情報を共有しています。口頭の指示や書類のやり取り等の無駄を省くことで生産性を高めるという狙いもありますが、それ以上に同社が重視しているのは職人に裁量を与えることです。家づくりの主役は現場のプロである職人であり、営業マンはそのサポートに徹するようにしています。元請けと下請けという上下関係ではなく、職人の仕事に対するプライドを尊重して裁量を与えることで、パフォーマンスを最大化することが狙いです。管理はIT化し現場は職人に任せるという、現代版の棟梁制度とも言えるのではないでしょうか。

毎月行う職人の勉強会では、工程管理システムの使い方や現場マナー、顧客対応等の指導は行いますが、基本的な現場の進め方は職人に任せています。監督ではなく職人が施主とコミュニケーションを取ることを推奨し、現場で施主から細かい要望が出た時には、職人の裁量によってその場で対応して良いことにしています。職人一人一人に働き甲斐を感じてもらうことで優秀な人材を確保し、クラウド管理による効率化で若い職人にも働きやすい環境を整えている事例と言えます。

(テキスト/株式会社住宅産業研究所 布施 哲朗さん)