すべてのものに「指定席」を!
新築でもリフォームでも、住まい手が新居について後悔することは「収納スペースの問題」が最も多いと言われています。問題を抱える原因は大きく2つあると考えられます。
まず1つ目の原因は、「ものの指定席の決め方」です。一般に収納の定義として、「使うところに使うものを収納する」と言われています。それはそれで正解なのですが、実際、救急箱・紙袋・ティッシュペーパー・掃除機やアイロン・・・など、どこに収納するべきか決まりにくいものも住まいの中には沢山あります。こういったものに対し、管理しやすい「指定席」を設けることが重要です。
たとえば、半間の押入れ。図のように「通常型」の奥行きの深い形状には、比較的サイズの大きい季節家電や飾りもの・レジャー用品など、使用頻度が低いものを収め、「L字型」には、使用頻度の高いものを収めます。また、前者は家の中でも隅のほうに、後者は人の動きが多い動線上に配置することで、出しっぱなし・使いっぱなしを減らし、片づいた状態を維持しやすくなります。
納戸や物置きのような収納スペースを広げる方向ではなく、ものの性質や使用頻度に合わせ、コンパクトにかつ、ものを管理しやすくする提案がおすすめです。
収納システムは、『350mmの法則』で!
2つ目の原因は、収納スペースの使い方です。代表的な収納スペースである押入れやクローゼットは、枕棚や中棚、パイプが設置されているのみ、というケースが大半です。そのため、引き出しケースや棚などを使い、住まい手自身が工夫する必要性が生じています。スペースをどう使ったら良いのか、頭を悩ませている方々が非常に多いのが現状です。
そこで、提案したいのが『350mmの法則』です。主な生活用品は、高さ350mmピッチで効果的に収納することが可能です。同じ空間も350mmピッチで棚板やパイプの位置を変えられるシステムがあれば、住まい手が自分で持ち物に合わせて空間を調整することができます。押入れにもクローゼットにも適用できるほか、棚板をデスクの高さに合わせることでワークスペースに変更するなど、空間の使い方も簡単に変えることができます。
長年の「片づけ」の仕事を通して、350mmは、ものと収納スペースの「ゴールデン寸法」ということに気付きました。こうしたサイズ感の提案も、暮らしに優しい収納スペースを生むのではないでしょうか。
人が収納スペースに合わせるのではなく、収納スペースが人に合わせられるシステムを!
人は必ずものを使いながら暮らしています。ライフステージの変化によって、持ちものが変わった時、または空間の使い方を変えたくなった時、「自分で簡単に!」対応できるシステムが家に備わっていれば、どれほどラクで楽しく快適に暮らせるでしょうか。
ものの管理に振り回される生活から解放されることはもちろん、将来の住まい方に安心感を持てる家は、人生の豊かさを大きく左右することと思います。
テキスト=近藤 典子(住まい方アドバイザー/近藤典子 Home&Life研究所)
監修=リビングデザインセンターOZONE