住宅&住宅設備トレンドウォッチ

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住宅新商品トレンド すき間時間の少ない共働き家族に効率的で豊かな生活を提案

INDEX 2019.9.20

日本の共働き世帯数はこれまで増加の一途を辿ってきました。内閣府の調査によると2017年、専業主婦のいる世帯が641万世帯に対して、共働き世帯は1,188万世帯と大きく上回っています。このような背景には近年、ワークライフバランスを重視する考え方が普及し、働き方改革が進んだことで有給取得推進やフレックス制度などフレキシブルな働き方が確立され、仕事を続けやすい環境が整備されたことが大きな要因でしょう。例えば、以前は出産が会社を辞めるきっかけともなるライフイベントでしたが、産前・育児休暇の活用は当たり前となりつつあり、時短勤務契約で仕事復帰をするケースも珍しくなくなりました。とはいえ、フルで仕事をこなす共働き世帯も依然として多いことも確かです。

家庭における子育てや家事の両立には、夫婦間の相互協力が重要になります。総務省が発表した「社会生活基本調査」における1日当たりの「6歳未満の子供を持つ夫婦の家事・育児関連時間」調査によると、「妻」が7.34時間に対して、「夫」は1.23時間でした。同様の調査を、先進国を中心とする他6ヵ国にて行ったところ、「夫」に限定すると最も長い時間を家事・育児に費やしていたのはスウェーデンで3.10時間、最も短いフランスでも2.30時間ということで、日本の「夫」は先進国の中で家事や育児の協力が少ないと言えます。

今回紹介するハウスメーカーの商品は「共働き世帯」をターゲットに据えた商品です。いかに家事を効率的かつ協力しながらこなせるかに重点を置きつつ、快適な暮らしの実現を目指しています。

1共働き家族をターゲットにアパート商品を開発~旭化成ホームズ

旭化成ホームズ「光と風のLDK」外観
旭化成ホームズ「光と風のLDK」リビングイメージ
旭化成ホームズ「光と風のLDK」リビングイメージ

旭化成ホームズは2019年、今年で設立後30年を迎える「共働き家族研究所」の知見をもとに、共働き家族を対象にした住まい提案に重点を置いた営業キャンペーンを複数打ち出しています。戸建部門では「共働き応援フェア」と称し、スイッチ1つで床洗浄できるユニットバスや、子どもを抱きかかえながらでもスムーズに施錠できるタッチキー、高機能インターホンなど、夫婦の家事負担軽減につながるアイテムを基本仕様から差額無しで提供するキャンペーンを実施しました。

同社では、賃貸住宅ブランドであるヘーベルメゾンでも共働き世帯をターゲットとする商品を開発しており、この8月に「光と風のLDK」を発売しました。1LDK~2LDKを想定し、LDK空間は縦長のリビングで、長手方向に開口部を設けることで採光・通風を確保した設計となっています。LDKの中央にレイアウトしたキッチンは、開放感抜群のペニンシュラタイプを採用し、手元が良くみえるキッチンにいながらリビングにいる家族と会話したり、一緒に料理したりと、コミュニケーションを促す設えとしています。収納スペースはウォークインクローゼットと組み合わせたダブルクローゼットとし、室内物干しスペースを2か所設けています。また、敷地を有効活用し、リビングとつなげるようなアウトドアリビング空間を創出し、ガーデニングやテラス利用など多様な活用が可能です。
この商品ではこれまで、「賃貸住宅だから仕方がない」と諦めることが多かった家庭菜園や広いLDKなどを可能にする新しい空間提案を盛り込んだ賃貸住宅商品として、年間目標受注棟数150棟を掲げています。

2家族が支え合う新しい住まい方「シンセ」シリーズ~トヨタホーム

三井ホーム「ルーカス」外観

トヨタホームはこの4月、戸建の「シンセ」シリーズにおいて、共働き世帯をターゲットに改良した商品を発売しました。新商品では軒下空間を広く設定できるなど外観バリエーションを拡充した他、提案するインテリアに新テイストを追加しています。さらにセントラル空調「スマート・エアーズ」のモデルチェンジを実施し、「ZEH+」にも対応可能となりました。

同社のHPでは、ファミリーによって趣味趣向やライフスタイルが多種多様であることを踏まえ、具体的な共働き世帯を設定して住宅の提案事例を掲載しています。「支え合う家族」をコンセプトとし、家事効率を最大化する動線計画を最大の特長としています。具体例としては「洗濯物はたたみま宣言!」と題し、洗濯機と部屋干しスペース、クローゼットまでの動線をコンパクトにし、ハンガーパイプを多めに配置することで、洗濯物をたたまずとも移動させるだけで片付けることを可能としました。食事の際には家族全員で料理を食卓までラクに運べるキッチンダイニングにより時短につながり、玄関横には土間収納を配置して、ランニングバイクやベビーカーなどの大きな荷物を収納することで、いつでも玄関をスッキリ見せることができます。また、宅配ボックスの設置スペースを確保することでも、生活利便性を目指しています。

「シンセ」シリーズは、同社の主流である鉄骨ラーメンユニット工法を採用し、幅広い生活スタイルに対応する主力商品であり、今後も多様な顧客ニーズに応える、快適な住まいを提案していく予定です。

3家も家事をする?「すみふの住みラク住宅」~住友不動産

三井ホーム「ルーカス」外観

共働きの夫婦にとっては、家事はすき間時間の中でこなすことが求められます。お互いに役割分担を決めながらも、夫が繁忙期の時には妻がパートナーの分の家事もカバーすることもあるでしょう。そこで、住友不動産では家自身が家事をこなすことで、居住者の家事負担を軽減させる住宅を提案しています。

同社が開発した商品は「すみふの住みラク住宅」と称し、同社初の体験型モデルハウスとして仙台市内に建設しました。単独展示場のため、総展内のモデルハウスでは困難な水廻り設備の実演も可能です。
「住みラク」を実現する代表的なシステムの1つが「スマートHEMS」です。これまでのHEMSでは、スマホとIoT設備を接続することで、遠隔で浴槽の湯はりや洗濯、エアコン・照明のON、OFFするという使用方法が見受けられましたが、「スマートHEMS」の導入により、エアコンの設定温度や照明の明るさなども自動で調節でき、ムダなく住宅設備をコントロールすることで省エネにつながります。

さらに、家事の負担を軽減する各種設備「カジタン」の導入です。レンジフードやトイレ、浴槽といった水まわり設備には自動洗浄機能付きのものを採用し、掃除の手間を軽減しています。また、キッチンなどの設備や仕様に関しては同社の高級新築マンションと同グレードのものを用意しており、こだわりある内装に設えることが可能です。家事の手間軽減のための設備は、各メーカーから数多く出ていますが、それらを一式フル導入すれば、大きな家事負担軽減につながるといった事例です。

(テキスト/株式会社住宅産業研究所 斎藤 拓郎さん)

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