住まいにおける家事効率アップの意味
女性の社会進出が進み共働き世帯の割合が増加している現在、家づくりにおいて家事の効率化を図り、家族みんなが家事に参加しやすいプランニングの重要性が高まっています。家事の効率化により家事にかける時間を短縮できれば、その分家族との時間を増やすことができ、自分がリラックスするための時間としても使うことができます。家事がラクになるように、家事動線とプランニングに工夫を凝らした事例を三つご紹介します。
家族共用の着替え室(ファミリークローク)で家事を効率化[ときどき電車の見える家]
家族それぞれの衣類を各個室に全て収納すると、その分部屋は狭くなり、取り込んだ洗濯物は各個室まで何度も往復して片づけることになります。そこで家族共用の着替え室(ファミリークローク)を設けて衣類の収納を一ケ所にまとめ、各個室の広さを確保するというプランが増えています。
衣類の収納をファミリークロークに集約することで、洗濯物を取り込んで片付ける時間と労力を減らすことができます。ファミリークロークは玄関に隣接して設ける方法と、水回りに隣接して設ける方法がありますが、この事例では水回りとともにキッチンにも隣接させています。入浴時には脱衣室で着替える衣類を用意してから浴室に向かえるので、各個室に着替えを取りに行く必要がなく便利です。バタバタしがちな朝も、水回りの近くにファミリークロークがあればスピーディーに支度ができます。
水回りに室内物干し(サンルーム)を設けて家事を効率化[くるりのある家]
室内物干し用のサンルームを洗面室の隣に設けた事例です。サンルームには洗濯機を設置してあり、洗濯した物はすぐにここで干せるので、濡れて重い洗濯物を持って移動するストレスはありません。乾いた洗濯物を畳んだりアイロンをかけたりした後は、近くに設けた着替え室まで一直線の動線で収納できる無駄のないプランです。
室内物干しのできるサンルームがあると、洗濯⇒物干しの効率が良くなるだけでなく、その日の天候を気にすることなく干したまま出掛けられ、夜中に雨が降ることも気にせずに干すことができます。また、花粉症の原因となる花粉、土埃、排気ガスの匂いなどが洗濯物に付着することも気にする必要がなくなります。
家族が家事に参加しやすいアイランド型キッチン[庭に向かった家]
キッチンを壁面から切り離してアイランド型にすると動線上の行き止まりがなくなるため、複数人での作業がしやすくなります。子どもと一緒に、あるいは夫婦で分担しながら作業できるので、時短になるだけでなく家族のコミュニケーションも図ることができます。アイランドキッチンに連続させてダイニングテーブルを設置し、その高さを揃えれば、調理⇒配膳⇒食事⇒片づけという一連の作業がスムーズに行えます。事例ではキッチン側の床を150mm下げて高さを揃えています。キッチン側からは、洗面室・浴室さらには物干しテラスへ最短距離で行ける動線になっているので、キッチンでの家事と洗面・洗濯・物干しを並行して行うことが可能です。
また、キッチンの近くにワークスペースを設けているので、食事の準備や後片づけをしながら子どもと会話でき、勉強を見てあげることもできます。日々の限られた時間のなかで、家族とのコミュニケーションを深めるための工夫の一つです。
テキスト=石井 正博、近藤 民子(設計事務所アーキプレイス)
監修=リビングデザインセンターOZONE