都市の木質化でCO2を閉じ込める
今、日本で使われる木材の約6割が外国産であることをご存知でしょうか。日本には利用可能な豊富な森林資源があるにも関わらず、木材の自給率は4割程度に留まっています。こうした状況を打開し、林業の活性化と国産木材の自給率を高めるべく、政府や地方自治体はさまざまな施策に乗り出しています。
東京都森林課は国産木材を使う意義について、次のように話します。「木を伐る=環境破壊だというイメージを持つ人がいるかもしれませんが、実はその逆で、日本の人工林においては、適切に木を伐って、使って、苗木を植えて、育てるという循環こそが、林業や森林を守ることにつながります。
また、花粉の少ない品種への植え替えを進めることで、花粉の飛散量の削減にもつながります。都では平成30年に、東京における森林整備と木材利用の未来の姿を描いた「50年、100年先の『東京の森林の将来展望』~東京フォレストビジョン~」を策定し、東京の森林や都市における木材利用の姿を7つのメッセージに込めて発信しています。木材利用を進め、東京を『木の都市』に生まれ変わらせることなども盛り込んでいますので、建築に携わる多くの人の目に触れてほしいと思います」。
「持続可能な開発目標(SDGs)」の観点から見ると、森林・林業・木材産業は、目標15「陸の豊かさを守ろう」を中心に、様々な目標の達成に貢献します。森林そのものが、水を育む、気候変動を緩和する、山地災害を防止するなどの多面的機能を持っており、これらの多面的機能の発揮は様々なSDGsの達成に寄与するのです。都市の木質化、特に国産木材の利用は、全国各地の森林の整備・保全や、地域の活性化につながるとともに、二酸化炭素を吸収して炭素として木材に貯蔵するという、地球温暖化の防止にも役立つのです。
最新の木材技術が国産木材の未来を切り拓く
日本の建築での木材利用は、木造住宅での需要が主となっていましたが、近年、国では、中高層建築や非住宅建築における木材需要を拡大するため、建築基準法の改正や、CLT(直交集成板)・木質耐火部材などの新たな製品・技術の開発と普及が進められています。
国産木材の未来については、次のように話します。「様々な建築物が集中する東京には、新たな木材需要の拡大が期待されていますが、木造の設計や木質材料に精通した技術者が限られている現状です。そのため、都では木造建築を担う建築士の育成などに今後取り組んでいきたいと考えています。」そのほかにも内装材に木材を使用することで、木材の調湿作用による室内環境の改善や、ストレス軽減などの心理面での効果など、医学的なエビデンスを含めた検証が、国や民間でも行われているといい、こうしたことも国産木材の利用への注目度の高さが伺えます。
国産木材の情報発信基地で情報収集
では、実際に「国産木材を使いたい」「国産木材について知りたい」場合、どうしたら良いのでしょうか。
「東京都には多摩地域で育って生産された、『東京の木 多摩産材』があり、東京都が運営する「多摩産材情報センター」にて、多摩産材を購入できる供給事業者の紹介のほか、ウェブサイトにて多摩産材についての情報発信を行っています。各地方自治体でも県産木材についての窓口があるので、お近くの地域のサイトを検索してみると木材の購入方法などを知ることができますよ」(東京都森林課)。
さらに2020年12月にリビングデザインセンターOZONE5階にオープンした「国産木材の魅力発信拠点 MOCTION(モクション)」に来れば、東京都を含めた地方自治体の国産木材についての情報収集が可能です。2週間ごとにさまざまな地域の木製品を紹介する企画展示が行われ、直接木の感触や温かみを感じることができます。常駐スタッフもいるので、最新の木材技術や各地方自治体の補助金制度など、さまざまなご相談に応じてくれます。こうした施設も有効利用しながら国産木材を積極的に活用することは、SDGs目標達成に貢献し、地球環境を守っていくことにつながっていくはずです。
取材・文=梶原博子
監修=リビングデザインセンターOZONE