家の中のメインステーションになっている
「新しい生活様式」—どきりとするこの言葉。でも前向きに捉えれば家を見直すチャンスです。家族との食事時間、在宅ワークのスタイル、そして自分らしさ。世界一番安心な場所—今のキッチンはそんな役割を果たしていると思います。
コロナ禍の後、急な暮らしの変化に慌てて便利グッズやガジェット、求めやすい値段の置き家具を買い足して、ものばかり増えて後悔した人もいるはずです。その場しのぎのライフハックは暮らしの問題を根本的には解決しません。小手先の模様替えでは、もう無理。そこで注目したいのが、空間と一体化して、家具のような機能を持たせられる「インテリアキッチン」という考え方。
お手入れや収納に特化した利便重視型のキッチンだけではなく、インテリア性が高く、好みにあわせたカスタム対応を標準とするキッチンブランドが増えています。ユーザーもSNSなどで目にする機会が増え、その関心は高まるばかり。
マンションや建売住宅など、広さに限りがあり、既存のキッチンでは今の生活がうまくいかないという家庭こそ、おすすめしたいです。その理由は次で説明しましょう。
キッチンは在宅ワークと家事のバランサー
それはインテリアキッチンのマルチファニチャー化が進んでいるからです。特に在宅化が進み、子どもの学習、夫婦のデスクワーク、家事の両立、という要素が家庭に集中する今、そのメインステーションはキッチンと言えます。
一般的にインテリアキッチンは暮らしに合わせて可変するカスタム対応がベース。キッチンというと水回り…と思ってしまいがちですが、カトラリーから細かな要望に対応する収納、テーブルやカウンター、お鍋やお皿の重さを想定した耐荷重のある引き出し。これが書類やプリンターを入れるのにも適しています。
大きめのダイニングテーブルとつながるキッチンで、キッチンから目の届く場所に子どもの学習スペースを確保する。在宅ワークでダイニングを使う場合、キッチン収納の一部を大人の仕事の道具の収納に使う。制服やランドセル、お稽古バッグの収納をもうける。
そしてキッチンはもともと家電や照明など電気関係のものを組み込むのに秀でています。プリンターや充電コンセント、ノートPCコーナーなど、キッチンメーカーは意外と電気ものは得意分野。これまでにない発想でキッチンプランを依頼する人が増えています。男性もキッチンプランに積極的に関わる時代、こういったカスタム力を存分に活用したいですね。
さらにインテリアの一部として開発されているので、一般の家具よりも素材感の選択肢が広く、 建築の一部として作られるものなので耐久性も期待できます。
キッチン設備の常識は驚くほど変わっている
キッチンの設備機器も同時に進化しています。男性もキッチンに立つ時代、設備の進化に驚いて、男性の方がキッチンの機器選びにこだわる、というケースも珍しくありません。
まず水回り。キッチンの幅が十分に取れなくてもシンクが深くて中で調理ができたり、ワークトップの一部を兼ねて調理スペースに取れるシステムシンクは多くのインテリアキッチンブランドで選べるようになっています。
水栓もシャワー式で洗いものがしやすいものやタッチレスで吐水するものなど、選択肢が広がっています。さらにコロナ禍で人気が急上昇したのが、幅60cmの大きな食器洗い機。家庭での食事の回数が増え、洗いものが増えた。時間短縮。いいことづくめです。さらに自動洗剤投入など、その機能は進化するばかり。
さらに料理に慣れない家族や子どもの家庭の滞在時間が増えたので、タイマーや温度調整ができる高機能ガスコンロはお手入れだけじゃない魅力で選ばれています。加熱調整も改良するごとに、段階を踏んでしやすくなり、長時間の煮込みやとろ火など、安心して美味を追求できます。そう、キッチンはやっぱり食もたのしまなくちゃ!
キッチンがオフィスや学習机もかねる場合、気になるのは音。けれども水栓もレンジフードも静音化が進み、キッチンそばで起こりがちな「うるさい、匂いが気になる、水がはねる」といった悩みも改善が進んでいます。
そしてキッチンは1日中、使っているわけではありません。ならば使わない時間も活用できるマルチな家具としてのキッチンが、新しい時代のキッチンなのではないでしょうか?
文=本間美紀
監修=リビングデザインセンターOZONE