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テレワークを快適に!我が家のお仕事環境チェック【東京ガス都市生活研究所】

2021.12.17

コロナ禍をきっかけに、テレワークを取り入れた働き方は定着しつつあるようです。東京ガス都市生活研究所が、在宅勤務時の住まい環境の実態を調査しました。調査から見えた働く環境での不便・不満、それら負の部分を解決することで、仕事へもご自身へも好循環になるヒントをご紹介します。

1テレワークという働き方が定着しつつある

コロナ感染拡大前には、なじみの薄かった在宅勤務制度ですが、今は働き方の選択肢の一つとなり、多くの方が利用されていると思います。東京ガス都市生活研究所の調査では、在宅勤務率は、新型コロナ感染拡大以前と比べると、約18ポイントの上昇となり、2020年6月以降は4割と変化が見られません。つまり、その方々は、自宅でのテレワークを何らかの形で取り入れ、働くことが定着しているといえるようです。

在宅勤務実施頻度
在宅勤務実施頻度 東京ガス都市生活研究所「コロナ禍の生活調査」 (2021年4月)

2我が家のテレワークのお仕事環境をチェック

自宅でのテレワークは、時間の自由度があり、なじみのある空間で過ごせるため、リラックスして仕事ができるメリットがあります。一方で、自宅はオフィス環境と違い、働く場として十分に整っていない環境の中で業務を行うことに、不自由や不満を感じている人もいらっしゃるのではないでしょうか。

2-1.テレワークを行う理想的な環境とは

オフィスの執務室には、机や椅子、PC関連機器、ネット環境、空調などが働きやすい環境として整備されています。一方、自宅はどうでしょうか。自宅で働くための必要な環境について、厚生労働省から、「明るさ(照明、自然光)」、「温熱環境(温湿度)」、「広さ」、「換気」、「設備(家具、家電、PCなど)」、「姿勢などへの配慮」などの推奨事項が示されています。

自宅等でテレワークを行う際の作業環境の整備について イラスト出典:厚生労働省「自宅でテレワークを行う際の作業環境」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_01603.html

東京ガス都市生活研究所では、これらの厚生労働省の推奨環境を21項目の設問として、在宅勤務をされている方を対象に調査を実施しました。調査で得た回答を8つのグループに分類した結果をご紹介します。

調査で得た回答を8つのグループに分類した結果

2-2.座面の高さ、背もたれの傾き調整など椅子の機能に課題がある

在宅勤務者の回答からそれぞれの達成度を見てみると、作業環境の達成度が他より低い項目は、「広さ」と「椅子」に関する項目となりました。

特に、「椅子」に関しては、椅子の肘掛がない、傾きや高さの調整ができないことで達成度が低くなっています。

「肘掛け(ひじかけ)がある 37%」
「傾きを調整できる背もたれがある 37.8%」
「座面の高さを調整できる 41.5%」

多くの方がリビングやダイニングで仕事をされていたため、ダイニングチェアやソファでは、オフィス家具のような椅子の座面の昇降や背もたれの傾斜の調整機能がないことが影響しているようです。

しかし、姿勢を正すために、ちょっとした工夫をすることはできそうです。クッションや座布団などを使い、背もたれの角度や座面の高さを調整する、また、肘掛けがない場合は、机に腕がおけるような高さになるよう、座面を座布団などで調整するなど、手軽にできることから始めてはいかがでしょうか。

在宅勤務を行う環境の達成度
在宅勤務を行う環境の達成度 *厚生労働省の推奨環境を21項目の設問として設計し、在宅勤務者に調査実施。得られた回答を8グループに分類し、達成度を上のグラフにした。 出典:東京ガス都市生活研究所 在宅勤務時の温熱環境実測調査(2021年2月)

3テレワーク時の住まいに関する不満“足元の寒さ”

先ほど紹介した在宅勤務を行う環境の達成度では、空調設備有りのポイントは高かったものの、使用実態について聞いてみると、空調に対して多くの不満があることが分かりました。

「足元が寒いこと 42.2%」が一番多く、次いで「冬季の光熱費がかかる 33.3%」、「在宅による光熱費が上がること 31.9%」となりました。在宅勤務の場合、長時間椅子に座ることになるので、代謝量が落ち、より足元の寒さが気になるのかもしれません。

在宅勤務を行う上で、不満を感じることについて
在宅勤務の部屋や空調などの不満
在宅勤務を行う上で、不満を感じることについて在宅勤務の部屋や空調などの不満 出典:東京ガス都市生活研究所 在宅勤務時の温熱環境実測調査(2021年2月)

3-1.築年数によって室内の温熱環境に差が!

次に、冬の暖房にエアコンのみを使用している人を対象に、足元の寒さがどの程度なのか、机の上の高さの位置の温度と足元の温度を測定させていただきました。

その結果を、築年数で1999年以前の「築深」、2000年~2009年を「築中」、2010年以降を「築浅」として3つのグループに分けました。すると、2000年以降の家は、その年以前の家と比べ、室温が高い傾向が見られます。また、足元温度(床面から10cm近傍)は、机上温度(1.1m)の温度と比べ、2.5℃前後低い結果となりました。

在宅勤務中の温熱環境
在宅勤務中の温熱環境 *2021年2月8日~12日の在宅勤務で空調利用した時間帯の全数にて分析。一都三県 在宅勤務を週2日以上行っている温熱環境測定に参加したモニター エアコン利用者のみ。 Bonferroni多重比較検定 出典:東京ガス都市生活研究所 在宅勤務調査(2021年2月)

3-2.自宅でのテレワーク中の部屋の実態、暖房方式で差があった

続いて、築年数の浅い住宅で、床面から部屋を温める「床暖房を設置している住宅」、「エアコンのみを使用している住宅」とを比較しました。

床暖房を設置している住宅では、エアコンのみに比べ足元が暖かく、足元の温度が平均して20℃を超えています。一方で、エアコンのみ設置している住宅では、足元の温度が平均で20℃を下回っていることが分かりました。自宅でのテレワーク環境の実測から、暖房方式の違いで足元の温度に差が出る結果となり、足元の寒さが不満というのも納得できます。

さらに足元が寒いと、仕事を行う上で、弊害もでてくるようです。

在宅勤務中の温熱環境
在宅勤務中の温熱環境 *2021年2月8日~12日の在宅勤務で空調利用した時間帯の全数にて分析。一都三県 在宅勤務を週2日以上行っている温熱環境測定に参加したモニター 築浅(2010年~)のみ。Mann–WhitneyのU検定 出典:東京ガス都市生活研究所 在宅勤務調査(2021年2月)

3-3.足元が冷えると作業効率が下がる?!

「机上24℃・足元温度22℃」の環境と、「机上・足元の温度23℃」の環境にて、タイピングや計算を行い、正打数および正答率を比較した研究では、足元の温度が高い(23℃)条件の方が、正打数・正答率が共に高い結果が示されています。ここからも、集中して仕事を行いたい場合は、足元を冷やさない環境をつくる、冷えをもたらさないことがポイントとなることが分かります。
床暖房があるお宅はぜひ活用していただき、ない場合でも、足元だけのヒーターマットを設置する、マットを敷く、スリッパをはく、ひざ掛けを使うなど、足元を温める工夫をしてみてください。

*ケース1は、机上24℃足元22℃、ケース2は、机上23℃足元23℃の環境での比較。ケース2の方が正答率やタイピングを正しく打てた結果となった。床近傍の低温下では、皮膚温低下や冷えの自覚より情報処理作業、知識処理作業の知的生産性が低下することが示唆された。(サンプルn数:被験者人数×各ケース実施日数) 出典:空気調和衛生工学会2019 上田、伊香賀ら「夏季・冬季における床近傍の低温環境が知的生産性に及ぼす影響」より作成

4おわりに

在宅勤務制度を上手く活用できれば、時間の自由度ができワークライフバランスを保つことができます。新たな働き方の仕組みを無理せず継続していくには、現在の環境の負の部分を解消していくことが大切です。今一度、自宅の仕事環境を見直してみてはいかがでしょうか。

調査概要:
都市生活研究所 在宅勤務時の温熱環境実測調査(2021年2月)
一都三県在住 20~60代男女 週2日以上在宅勤務実施者 n=135

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