住宅&住宅設備トレンドウォッチ

印刷用PDF

住宅新商品トレンド 住宅のAI・IoT化推進

INDEX 2022.2.18

近年のテクノロジー発展に伴い、住宅のスマートホーム化が急速に進んでいます。今回取り上げる大手ハウスメーカーの商品もその1例です。
スマートホームの気運が高まるきっかけとなった一つは「第5世代移動通信システム」、いわゆる「5G」の本格導入です。5Gによって通信速度が向上しただけでなく、Wi-Fiルーターなど基地局1台だけで100台以上のデバイスやセンサーがインターネットと接続できるようになりました。住宅業界では「IoT住宅」という言葉も普及しました。家電がIoT化することで外出中でもスマホで遠隔操作ができたり、スマートスピーカーで音声コントロールできたりと、生活の利便性が徐々に高まっています。
今後期待されるのは「AI」です。AIの導入が進んでいる住設機器の一つにエアコンが挙げられます。「人の居場所」を解析して暑い夏に居住者が帰宅した時には人に向けて冷風を当てたり、部屋が涼しくなったらAIが自動で気流を切り替えたりします。冬であれば人のよくいるエリアを曜日ごとに学習し、人の活動量や日射に応じて暖房の設定を調整するという製品もあります。これは事例の一つでありますが、将来的にはAIが住設機器のみならず、人々の暮らしをコントロールする時代が到来するかもしれません。

1置き配対応の大型ストックスペース「スマートクローク・ゲートウェイ」~旭化成ホームズ

イメージ1

旭化成ホームズは21年11月、AI活用を含むデータサイエンス技術を用い、暮らしに関する多角的なサービスを創出するデジタルサービスプラットフォームの構築を目指した活動を開始したことを発表しました。同社は建物内に設置したIoT機器等で住まい手の建物内部における生活記録を収集し、AIを活用して情報を解析することで、生活利便性や健康、災害に対する安全性の向上、持続可能な社会実現に役立つ様々なサービスの創出を目指しています。

その第1弾として発表されたのが「スマートクローク・ゲートウェイ」です。これは宅配便の置き配に対応するスマートロック付きの大型ストックスペース「スマートクローク」に、独自開発の自動解析機能を組み込んだWEBアプリケーションを採用することで、建物内部にまで宅配物を届けてもらうことを可能としたシステムです。
配達員は事前に設定されたパスワードを入力することで、スマートクロークに入室することができます。クローク内は防犯カメラを設置する他、同社が独自の盗難補償制度も設けています。また、スマートクロークと室内をつなぐ扉には内鍵を設置し、生活スペースの安全も確保しています。さらに専用アプリでは、ユーザーが「スマートクローク・ゲートウェイ」を介して住宅内に受け入れた食品を自動で栄養価に変換し、家族の栄養管理を行なうアプリも開発しており、同社では今後も順次サービスを拡大していく計画です。

2プラットフォーム構想第一弾「プラットフォームハウスタッチ」~積水ハウス

イメージ2

積水ハウスは、住環境やライフスタイルに関連する住まいのビッグデータを活用して、「健康」、「つながり」、「学び」を軸にしたサービスを提供するという「プラットフォームハウス構想」を推進してきました。そして、21年8月、この構想の第1弾として、外出先から住宅設備の遠隔操作を可能にする間取り連動スマートホームサービス 「PLATFORM HOUSE touch (プラットフォームハウスタッチ)」をリリースしました。

「プラットフォームハウスタッチ」では、主に3つのサービスを提供しています。1つ目のサービスは、「わが家リモコン」です。間取り図と連動し、視覚的に操作できるスマホアプリで、外出先からエアコンや照明、窓シャッター、床暖房、玄関ドア等の状況を確認し、遠隔で操作することができます。例えば、帰宅時に外出先からあらかじめエアコンのスイッチを入れることなどが可能になります。
2つ目は、「セルフホームセキュリティ」です。窓や玄関ドアが不正に開錠された場合や火災警報器が作動した場合において、ユーザーのスマホにプッシュ通知が送られ、外出時に素早く住宅の異常を把握することができます。また、家族の帰宅や外出時にもプッシュ通知が送られるため、常にスマホを通じて家族の行動を見守ることができます。
3つ目が、「住環境モニタリング」です。これは熱中症予防を目的としており、屋内外に「温湿度センサー」を設置します。センサーが熱中症の危険性を察知すると、ユーザーのスマホにプッシュ通知を送ってくれる他、機器の操作履歴の確認や熱中症アラート等の通知を一覧で確認することができるということです。
このシステムの導入費用はセンサーの数や対応家電によって変動しますが、およそ50~80万円で、導入後は月額2,200円のクラウドサービスが必要です。初年度は販売目標として年間2,400棟を掲げています。

3AI-HEMS搭載のIoT住宅「住友不動産のみらいの家」~住友不動産

イメージ3

住友不動産は21年9月、設備パッケージ商品「住友不動産のみらいの家」を発売しました。脱炭素社会の実現に向けた商品という位置づけで、そのための施策の一つとして、電力会社と共同開発した初期費用ゼロ円で太陽光発電と蓄電池セットを導入できる定額サービス「すみふ×エネカリ」を用意しました。

これらの設備はAI-HEMSとも連携しており、AIが生活パターンに基づいた消費電力と、翌日の日射量予報値に基づいた発電量を推計、余剰電力を有効活用することで、電気料金の節約が期待できます。さらに業界初の「AI雷注意報連携」機能も特徴の一つです。雷注意報が発令されている間、AI-HEMSが蓄電池残量をチェックして、もしもの停電に備えて必要な電力量を蓄電池に充電します。充電と同時にシャッターも自動で閉まるので、居住者も安心です。雷だけでなく、台風など気象警報が発令された際も停電に備えて蓄電池に充電するなど、災害への備えを徹底しています。

災害時は電気だけでなく、生活水の確保も重要です。この商品では容量24リットルの「飲料水貯留システム」と容量100リットル「雨水貯留タンク」を用意しました。災害時に断水すると、タンク車や応急給水等の公共サービスの対応まで3日間程度時間を要するとも言われており、それぞれタンクの容量は4人家族の飲料水・生活用水約3日間分に相当します。
「住友不動産のみらいの家」はAIやIoTを活用して居住者の暮らしを守ると同時に、太陽光や蓄電池などの導入ハードルを下げることで環境にも配慮できる商品と言えます。

(テキスト/株式会社住宅産業研究所 斎藤 拓郎)

住宅&住宅設備トレンドウォッチTOPへ