床材の選び方
犬にとって最も過ごしやすい床は、適度な柔らかさとグリップ感のある、草や土です(写真1)。とはいえ、それでは人が暮らしにくいですよね。そこで、犬種や性格、体調や年齢など、犬の状況と、一緒に暮らす人の状況とを合わせて考えて、最も条件に合う床材を選ぶことになります。
ご要望で多いのは、滑らないこと。確かに適度なグリップ感がある方が望ましいのですが、アレルギーや化学物質など、他の条件との兼ね合いから滑らない床を選択しにくい場合もあります。また、グリップが効きすぎると体やパッド(肉球)に負担がかかります。屋内では飛びついたり走ったりしないようにして、筋力がつくように十分に散歩する生活をしていれば、ある程度の滑りを許容できることもあります。どのような条件を優先にするか、柔軟に考えて床材を選ぶのがおすすめです(写真2)。
清潔に保ちやすい素材も人気があります。しかし、強い消毒に耐える素材は硬かったり、施工時に接着剤を用いる必要があったりするなど、マイナス面もあるため注意が必要です。粗相やマーキングの癖で悩まれている場合は、根気よくトレーニングすることで克服できることも。個別の状況をよく把握することが大切です。
犬の年齢によってもベターな素材は変わるので、取り換えやすいつくりにしておくのも良いでしょう。
床暖房の取り入れ方
家の中で、温かい床とヒンヤリする床を、自由に選べるのが理想です。
冬には床暖房の上で一緒に寛ぐのも幸せですよね(写真3)。床暖房の上で寝そべると熱くなりますが、健康な成犬であれば体感に応じて移動するので、あまり心配する必要はありません。
一方で子犬や老犬は低温やけどの可能性があるため、人が注意深く見守る必要があります。コットのように、床から少し浮かせられるベッドを用いるのもおすすめです。
事故を防ぐ注意点
お留守番の間におもちゃがなくなったり、家具や壁がかじられたりすると、気が気ではありませんよね。消化しにくいものや尖ったものを誤飲してしまうと、命に係わる場合もあります。犬の行動範囲に危ないものを置かないのが基本ですが、誤飲をしないようにトレーニングをしたり、散歩中はON・家の中ではOFFという意識を徹底することで、事故のリスクを下げることができます。
階段や段差からの転落も心配です。階段は緩やかにしたいところですが、そのスペースを割けないこともあります。段差や隙間は犬の体格や年齢によっても、許容範囲が大きく異なります。在宅時は気に留めることでリスクを下げられますが、お留守番が多いご家庭でしたら、扉やゲートを設けて近づけないようにするのもおすすめです。(写真4)
人と犬の快適性を両立させる設計のヒント
人と犬の快適性を両立するには、犬のふるまいから気持ちを知り、人が犬にどうして欲しいかをうまく伝えられることが大切だと思います。
そして、設計の観点で言えば、人も犬もそのときどきに好きな場所で過ごせるように明るさや温かさ、広さや静けさ、触感や香りなど、家のなかに多様な居場所をつくり、自由に移動できるようにするといいですね。
さらに、お互いにどこでどのように過ごしているのか気配が伝わるつくりだと安心ですし、一緒に暮らす喜びもより大きくなるはずです。(写真5)
テキスト:平 真知子(平真知子一級建築士事務所)
監修:リビングデザインセンターOZONE