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平成の家族。~「暮らし」と「食」をデータで振り返る~ Part1 平成元(1989)年

2019.5.24

1986年設立の「都市生活研究所」は、多面的な調査・分析をもとに、都市生活者の暮らしを創造するための提言を行っています。都市生活研究所では蓄積してきたデータを基に、「平成」という時代を、ある家族の物語とともに振り返りました。
全4回のうち、第1回となる本レポートは、「住まい」をメインテーマに、平成元(1989)年をご紹介します。

<家族の物語>
夫・隆は、保険会社に勤めています。業績好調で収入に不満はありません。都内とはいえ、築年数の経った団地住まいで、家賃を抑えていたため、自己資金がある程度たまりました。「家を買うなら、マンションより一軒家」という希望は、妻・恵子と一致していました。

<家族構成>
夫・隆(33歳)  妻・恵子(29歳)  長女・愛(3歳)  長男・翔太(1歳)

<住まい>
住宅価格が信じられないほど高騰しました。かつて和風が主流だった内装は、洋風化しました。

1隆の決断は、通勤1時間半の郊外一戸建て
住宅地の価格は、現在の2倍以上でした。

隆と恵子は、マイホーム購入を決断しました、予算に見合う物件は、「電車とバスを乗り継ぎ、通勤時間が1時間半を超える郊外の一戸建て」。少なくとも5000万円以上の住宅ローンを組みことになりそうです。
大きな借金に、恵子は慎重な姿勢でしたが、背中を押したのは、友人の「不動産は高騰し続けるから、今買わないと一生買えないかもよ」という言葉でした。
図1は、昭和57(1982)年の地価を「100」としたとき、その後どのような水準で推移したのかを示すものです。平成元(1989)年には東京圏で「229.2」。7年間で2.3倍に高騰したわけです。その後、地価の上昇は平成3(1991)年にピークを迎えます。勤務先の業績が好調な隆は「給料は年齢と共に上がっていくだろうから、ローンの支払いの心配はない」と考えていました。
図1.地価水準の推移
図1.地価水準の推移

2恵子の理想は、ソファとダイニングテーブル
リビングがフローリングの家は、たった2割でした。

ある日の夕食後、隆はゴロリと横になって恵子に聞きました。「ねぇ、新しい家、どんなふうにしたい?」。恵子は座卓でリンゴをむきながら答えます。「そうねぇ、1階はLDKにして、ダイニングテーブルで食事をしたい。大きめのソファもあったらいいわね。床はフローリングがいいなぁ。お掃除も楽そうだし」
隆の家だけでなく、家族団らんは和室で座卓を囲むスタイルがまだ主流でした。図2を見ると、平成2(1990)年には「団らん場所の床がフローリング」という家庭はわずか21.5%。また、「自宅には和室が必ず欲しい」「就寝時はベッドでなく布団で寝る」という人の割合は、この30年間で減り続け(東京ガス都市生活研究所「生活定点観測調査」より)、住まい、暮らしの洋風化が一気に進んでいったのです。
図2.団らんしている場所の床の主な材質は何ですか
図2.団らんしている場所の床の主な材質は何ですか

<暮らし>
夫は仕事、妻は専業主婦が当たり前でした。主婦たちの日々の家事も、今とは違うものでした。

3平日はもちろん、休日も家事はしない隆
夫の家事参加は、めずらしい時代でした。

日曜の朝、隆は居間に寝転がり、テレビに見入っています。「手が空いているなら、お風呂の掃除をしてくれない?」と恵子に言われ、隆は心の中で舌打ちしました。『1週間会社で働いて疲れてるんだから、日曜日ぐらいゆっくりさせてよ……』。押し黙る隆を見て、あきらめる恵子でした。
平成の初め、家事を「自分ごと」と考える男性はまだ少数派でした。しかしその後、男性の家事参加は急速に進みます。図3のように、平成29(2017)年には風呂掃除を「主に担当」する夫が24.9%。「時々」や「一部」を加えると半数以上が参加しているという結果となっています。夫の家事参加が進んだ背景には、男女平等意識の広がりから「家事は性別にかかわらず行うもの」と考える人が多くなっていることが挙げられます。
図3.夫は家事をどれくらいしますか[風呂掃除]
図3.夫は家事をどれくらいしますか[風呂掃除]

4家事が得意な恵子も、ワイシャツは専門店にお任せ
6割の家庭が、クリーニング店をよく使っていました。

「ねぇねぇ、クリーニング済みのワイシャツどこ?」
朝食を終え、食器を洗っている恵子の背中に隆が大声で呼びかけます。「ごめん!忙しくて出し忘れちゃった」という恵子の返答を聞いて、隆の表情が曇りました。『ビジネスマンにとってのスーツは“戦闘服”なのに』と心の中でつぶやくのでした。
この時代のビジネスマンは、パリッと糊のきいたワイシャツで出勤するのが当たり前でした。図4のように、セーターやワイシャツなどをクリーニングに出す家庭が6割を超えていました。その後、形状記憶素材を用いたノーアイロンワイシャツの登場、クールビズに端を発したビジネスファッションのカジュアル化、節約志向の浸透などによって、クリーニング店を利用する機会は、次第に減少していくことになります。
図4.セーターやワイシャツ等はクリーニング店に出す
図4.セーターやワイシャツ等はクリーニング店に出す