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住宅&住宅設備トレンドウォッチ

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ビルダー販促事例 ビルダーが狙うべきは、技術を活かした高額リフォーム

INDEX 2019.5.24

住宅業界に対する政府の中長期的な方針は、スクラップ&ビルド型からストックを活用する方向に向かっています。生産年齢人口や世帯数の減少で、将来的に住宅が余っていくのだとすれば、これまで通りに新築住宅を建て続けるよりも、中古住宅の流通を促進し、リフォームを施すことで有効活用しようという考え方です。
現在のリフォーム市場の勢力図を売上規模で見ると、上位を席巻するのは大手ハウスメーカーのリフォーム子会社やリフォーム部門です。住友不動産や積水ハウス、セキスイファミエスはリフォーム売上1000億円規模となっています。家電量販店のエディオン、ホームセンターのLIXILビバやコーナン、リフォーム専業大手のニッカホーム等も売上上位に並び、これらの会社と比べると、ビルダー・工務店のリフォーム売上はまだまだ小さい規模です。

主に新築を手掛ける住宅会社のリフォーム戦略の基本は、自社で建てたOB客と良好な関係を継続し、そこから発生するリフォーム需要を捕捉することです。大手ハウスメーカーは昭和の後半から数十年に亘って、年間数千棟の新築住宅を供給してきたため、リフォーム適齢期の自社ストックを豊富に抱えています。これに対しビルダー・工務店は、一部の老舗を除いて、リフォームを本格的に事業として成り立たせるのに充分な自社ストックを抱えていないところが大半でしょう。そのため、自社のOB客以外の一般客からもリフォームを獲得する必要があります。
一般リフォームを取りに行く上では、専業リフォーム会社と同じように、需要の多い設備交換などの小規模~中規模リフォームで数を稼ぐか、新築を主力事業とするビルダーならではのノウハウを活かし高額受注の取れる大規模リフォームに絞り込むか、ターゲットの選定が重要です。小規模~中規模リフォームは、同商圏に同じ商品(住宅設備等)や工事内容(外壁塗装等)を安く提供する専業リフォーム会社やホームセンターがあれば、競合で勝つのは難しく、1件当たりの利益も大きくなりにくいです。ビルダー・工務店のリフォームは、間取り変更を伴う改装や、性能を高める断熱・耐震リフォーム等、モノよりもコトの提案で競合他社と差別化して、高額受注を狙う方が自社の強みを活かせるでしょう。
付加価値の高い大規模リフォームを中心に、リフォーム事業を確立しているビルダーの事例をご紹介します。

1古民家再生に特化しリフォーム売上20億円…新和建設

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愛知県の新和建設の新築棟数は年間約200棟、売上規模は約80億円。リフォーム売上は約20億円で全体のほぼ1/4を占めています。同社がリフォームでこれだけの売上を上げられている要因は、高額リフォームに特化しているためです。1000万円を超えるリフォームの受注が年間約60件、そのうち2000万円を超える受注が約40件あり、これらの売上がリフォーム全体の約7割を占めています。そしてこの高額リフォームのほとんどが、築数十年の物件をリフォームする古民家再生です。
同社の営業エリアである名古屋市~岐阜県には、築年数の古い古民家がまとまって立っているエリアがいくつかあります。これらをターゲットとして、社員大工の技術力や設計力を活かし、構造躯体から手を加え、断熱改修、耐震改修は必須とし、間取り変更や増築・減築にも自在に対応します。そのまま使用できる柱や梁はできるだけ活かし、古材の雰囲気を損ねないデザインで仕上げるのが特徴です。

古民家再生の主な集客源は現場見学会。1つの現場で解体、基礎から完成まで5回の見学会を実施して、古い建物の構造がどの程度劣化しているか、それをいかに再生していくかの行程を見せるようにしています。また、愛知、岐阜の3ヶ所のリフォーム拠点にはセミナールームを設け、古民家の性能向上に必要な耐震・断熱リフォームの内容や、古民家再生の進め方等を説明する勉強会を定期的に実施しています。見学会や勉強会に参加した見込み客には、1日で完成現場や入居者宅3~5軒を回るバスツアーへの参加を促し、バスツアー後の個別相談会で申込み金を徴収して、現場調査まで進んだ見込み客からはほぼ受注が取れています。
現場調査には営業、設計、工事監督、外部の耐震診断士などが参加し、床下から天井裏まで、劣化状況を一つ一つ確認します。古民家の場合、築年数が60年以上、中には100年近い物件もあるため、調査には少なくても丸1日かかります。そして診断内容を分厚い資料にまとめて提出することで、古い建物を見る目の確かさをアピールします。
長く住み継いだ親世帯に子世帯が同居して二世帯住宅とすることが多く、親世帯の自己資金や子世帯の住宅ローン等、リフォーム資金の調達に関して、相続・贈与でできるだけ損が少なくなる方法を提案できるノウハウも同社の強みです。

2断熱性能向上リフォームを数字で示して訴求…北洲

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宮城県の北洲のリフォーム売上は年間20億円弱。同社が得意とするのは、断熱性能向上を含めたフルリノベで、工事価格1,000万円以上の大型リフォームを年間40件程度、部分断熱を伴う工事価格500~1000万円のリフォームを年間40~50件手掛けています。

性能向上リフォームでは、専門スタッフによる住宅検診(インスペクション)を実施します。屋根・壁・床下の劣化診断はもちろんのこと、「JJJ 断熱診断」という独自の診断ツールを導入して、夜間に暖めておいた室内からどのように熱が逃げていくかを丸一日かけて測定します。リフォーム前の断熱性能を実測データで示し、そこからどの程度の断熱リフォームを施せば、年間冷暖房費の費用対効果が大きくなるかを示して、性能を向上することのメリットを訴求します。

昨年9月には「住まいと健康リノベーション研究所(ラボ)」というWEBサイトを開設し、大学教授や医師と連携して、住まいと健康の関係性についての情報発信をしています。断熱性、耐震性が足りていない古い住宅を、リフォームを施すことで性能を高めて健康に暮らすことを啓蒙することで、付加価値を感じてもらい、他社と差別化しています。

(テキスト/株式会社住宅産業研究所 布施 哲朗さん)