キッチンと往来をつなぐ、土間を利用した「玄関」
まずご紹介いただいたのが「六角橋の家」です。
建て主はご夫婦そろって食への関心が高く、「料理を作りながら食べる事の好きな仲間たちが集まることが出来る家にしたい」との奥様の希望に応えた住宅です。
一階の10坪ほどの場所は、キッチンとテーブルが備えられた土間になっていて、ここでは靴脱ぎはせず土足のまま。将来的には店舗や料理教室にしたいとの建て主の夢も内包するこのスペースは、外の往来とも繋がったオープンなかたちになっています。
よく外国映画などで見られるホームパーティーで、広めのキッチンにゲストも交え集まって会話が盛り上がるシーンがありますよね。なにかそんなイメージを持ちました。無論、この住宅の上層階はプライベートな空間がきちんと構成されています。
親子世帯もご近所もつなぐ、縁側のような「玄関」
もう一つ特徴的な例として伺ったのが、西調布の商店街に位置する二世帯住宅です。外界の喧騒を緩衝する為に半地下にして表通りを通行する人々と視線が重ならないように設計されています。
玄関は二世帯共用として、そこから各世帯へ緩やかに別れていくわけですが、エントランスホールには簡便なベンチが置かれ、ふた家族のちょっとした交流の場を作っています。社会と積極的に関わって行こうとされるこの家には、外にもベンチが置かれ、門扉にはガレージセールなどのお知らせを掲示出来るようにし、更には、犬のリードを繋げられるようにして、犬好きが集まって会話ができるようなポケットパークになっています。外構全体が外に開かれた、ある意味で「玄関」と言えるのではないでしょうか。
その他、玄関からの続きを広い子ども部屋のように設え、近所のお子さんたちが自然に集まるようなスペースにした例などを伺いました。
「限られたスペースでこそ玄関の持つ意味合いは大きいし、暮らしが色濃くでるのではないでしょうか」(田中さん、齋藤さん)。そこには日本人の多くが懐かしいとの印象を持つ縁側や土間といった既視感を感じるのかもしれません。
取材・文=森口 潔
監修=リビングデザインセンターOZONE