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住宅&住宅設備トレンドウォッチ

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住宅新商品トレンド 家族の居所提案、新しいリビングのかたち

INDEX 2019.7.19

今回紹介するハウスメーカー商品は、「リビング」の在り方をテーマとしたようなプランニングが特徴です。現在は「リビング」という言葉が定着していますが、これまで「茶の間」、「居間」など複数の呼称がありました。これらの呼称は時代と共に変化し、リビングに必要とされる要素に関しても少なからず変化してきました。戦前までの日本家屋における「茶の間」や「居間」という空間は、家族の憩いの場であり、食事をする場も兼ねていました。住宅の中でも日当たりの良い南側に配置されるケースが多く、隣接した縁側から直接外に出ることもできます。縁側のようなプランニングは現代の住宅において見受けられる機会が少なくなりましたが、屋内外をつなぐような役割を果たすということでは、近年のアウトドアリビングの考え方が近しいと言えるかもしれません。

「リビング」という言葉が普及し始めたのは戦後のことです。まず、1951年にダイニングキッチンの考え方が定着するきっかけとなった「規格51C型」が発案され、当時の公団住宅が導入し始めました。その後、生活水準の向上とともに、さらに広さにゆとりを持たせたリビングダイニングキッチンが作られるようになり、これが「リビング」のスタートです。今では「LDK」という言葉が一般的となりましたが、「家族が憩う場所」ということでは以前の「茶の間」と変わらない日本の文化と言えます。
リビングは住宅内の居室の中でも比較的広い面積を占めることもあり、プランニングの自由度が高い空間です。本来の家族の憩いの場としてだけでなく、さまざまな要素を追加できます。1つの例として、かつて、某ハウスメーカーでは子どものための勉強スペースの設置を提案する商品もありました。常に目に見えるところで子どもたちがどのように過ごしているか確認できるという点で、子育て世帯からの共感が得やすい提案でしょう。

今回紹介するハウスメーカーの商品は新しいリビング提案を盛り込んでいます。これまで家族のだんらんの場所だったリビングも、活用方法を限定しないことで、新しい使い方が可能となります。

1内と外を緩やかにつなげる新「ファミリースイート」~積水ハウス

積水ハウス「ファミリースイート」

積水ハウスでは昨年10月、仕切りのない約30畳の大空間リビングで、家族がお互いの存在を感じながら思い思いの過ごし方ができるという間取り提案の「ファミリースイート」を発売しました。同社に設置した「幸せ」を研究する「住生活研究所」による研究の成果と先進技術を掛け合わせて誕生した商品です。ファミリースイートは発売してからも反響が大きく、全国の展示場では、ファミリースイートVR体験会といったイベントも開催し、採用率が3割まで拡大しました。

そして、この4月に発売した新「ファミリースイート」は「大空間リビング」と「広い軒下空間」の組み合わせが特徴のアップグレード版です。今年3月に発売したシャーウッド「グラヴィスベルサ」、同4月発売の軽鉄商品「イズ・ロイエ WA MODERN」では、この提案を取り入れており、年間販売目標としてはグラヴィス ベルサシリーズで1,500棟、イズ・ロイエシリーズで6,000棟に据えています。

この商品拡充により、構造(鉄骨造・木造)や内外装のテイストを問わず、多様な顧客にファミリースイートの住まい方を提案できるようになりました。緩やかな4寸勾配屋根の下に軒下空間が広がり、深い軒によって隣地からの視線や日差しを遮断しています。この屋外空間を通って室内に入り込む新鮮な空気が心地良いでしょう。屋外空間とつながる「大空間リビング」には、開放的な開口も欲しいというニーズが多く、そこで奏功するのが「超高断熱アルミ樹脂複合サッシ」です。断熱性能を強化することで住み心地の良さを保ちながらこだわりのリビングを実現できます。
もちろん、住み始めた後の大空間の活用方法には居住者のセンスも問われるでしょう。広いスペースを間延びさせずに、家具の配置といった空間を作り込むスキルが求められます。

2解放感のある勾配天井で採光抜群の2階リビングを提案「ルーカス」~三井ホーム

三井ホーム「ルーカス」外観
三井ホーム「ルーカス」内観

三井ホームはこれまで高級住宅を多く手掛け、商品開発においても「ヴァンス」や「ラングレー」など坪100万円内外のハイクラスのものを数多く供給してきました。近年は一次取得をターゲットとする商品開発も進めており、18年に発売した「ナチュラルヒュッゲスタイル」はその1つです。そして、この4月に発売したのは、都市部に暮らすミレニアル世代をターゲットとした新商品「ルーカス」です。モデルプランでは坪単価を68.9万円と抑えています。

この商品は2階に設けた「スカイルーム」と称するスロープシーリングにより採光性能を高めたリビングに、テレワークを可能とするワークスペースを併設したプランニングです。開放的な印象を与える傾斜天井を実現しているのは、同社オリジナルの屋根技術「ダブルシールドパネル」です。これはビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)を、強固な面材(OSB)で接着したサンドイッチ構造の超高性能断熱パネルで、優れた断熱性能と高い構造耐力、耐火性能により、勾配天井や快適な小屋裏空間を生み出すことが可能です。さらにスカイルームは、屋外空間である「スカイラナイ」と連続した一体空間を形成しています。スカイラナイでは外からの視線を適度に遮ることで居住者はゆったりくつろげ、天気の良い日には家族で食事を楽しんだりすることも可能です。
ワークスペースを設けた目的としては、今後全国に浸透していく可能性の高いテレワークという働き方にマッチさせる狙いがあります。現在としてもテレワークだけでなく、SOHOのニーズにも対応でき、これからの多様な働き方にフィットしやすい商品と言えるでしょう。

また、1階フロアは主寝室といったプライベートな居室をメインに配置しています。さらに家族の衣類を1か所にまとめ、着替えもできる「ファミリークローク」や「洗う・干す・乾かす・しまう」を連続して行うことのできる「ファミリーランドリー」、ゴミ出しのストレスを軽減する「マイゴミステーション」など、家事の負担を軽減する「家事ラク」空間で構成されています。
「ルーカス」は今では当たり前となった共働き世帯だけでなく、「スカイルーム」を通してテレワークなどのこれからの働き方、生活スタイルに対応できる商品です。

(テキスト/株式会社住宅産業研究所 斎藤 拓郎さん)