住宅&住宅設備トレンドウォッチ

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ビルダー販促事例 新卒を採用・育成し、長期的な戦力に

INDEX 2019.7.19

住宅購入検討者が住宅会社を選ぶ理由には、建物の性能や設備、外観・内観のデザイン、価格等の要素がありますが、営業マンのスキルや人柄といった「人」も重要な要素の一つです。人材の採用・育成は、ビルダー・工務店が抱えている経営課題の一つではないでしょうか。受注を担う営業マンだけでなく、将来の経営の中心を担う人材を育てることは、企業を長く存続させるためには必須です。人材育成は成長戦略にも直結します。エリアを拡大して新たな営業拠点を開設するにしても、住宅以外の新規事業を始めるにしても、まずはその業務を任せられる人員を揃えることが必要となります。

ハウスメーカーと比べるとネームバリューが低いビルダー・工務店の場合、毎年一定数の優秀な学生を新卒で採用するのは難しく、人材の多くを即戦力の中途採用で確保しているケースは少なくないでしょう。同業他社で営業経験のある中途採用の営業マンは結果が出るのも早いですが、住宅会社の営業職は離職率が高い職種の一つであり、逆にエース級の営業マンが抜ければその穴は大きいものとなります。将来への投資と考え、新卒の採用を強化しているビルダーは増えてきています。真っ新な状態で入ってくる新卒社員は自社のカラーで育てることができ、将来の幹部候補になることも期待できます。

一方で、新卒採用の課題となるのはその育成・教育方法です。従業員数が少ないビルダーでは、人事等の間接部門に人員を割きにくいため、新卒に対する教育体制が整っていないことが多いです。現場でのOJTが新卒教育のメインとなると、先輩社員や上司の指導力が問われます。ゆとり世代の若い社員は扱いが難しく、上司からの強い指導は「パワハラ」、主業務以外の雑務や残業が多いと「ブラック企業」と言われかねません。新卒を育てる以前に、入社してからすぐに辞めさせないための働き方改革や、指導・教育の制度づくりも考えなければならないでしょう。新卒社員が実質的に戦力になるのは2~3年目からだとして、1年目は社会人としてのマナーや営業等のスキルを身に着けるだけでなく、1人前になるまでモチベーションを保つことが重要です。

1採用から入社の間に気持ちを切らさない…アルプスピアホーム

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長野のアルプスピアホームでは、エリア拡大や新規事業による成長戦略に伴って、中途の即戦力を採用する一方で、5年程前から新卒採用を始めました。
新卒向けの合同説明会では、採用担当よりも先輩社員が前に出て、自身の就職活動の経験や入社を決めた理由、入社してからの仕事の内容等を、学生に近い目線で話すことで共感を得るようにしています。本社で行う会社説明会でも、人事担当による会社の業務や制度の客観的な説明だけでなく、先輩社員による就職活動~入社後の体験談のパートを設け、働き甲斐のある会社であることをアピールします。社長も約1時間のプレゼンを行い、最後に自社で建てた施主が感動している様子をまとめた映像を流すようにしています。

同社の新卒採用の過程で特徴的なのは、内々定を出した学生の家族への会社説明会を行うことです。ハウスメーカーと比べると全国的な知名度の低い地域のビルダーであっても、経営や財務内容が頑強であることや、社員の待遇、教育内容等を説明することで、家族にも自社のファンになってもらいます。このときに両親からのビデオレターを撮影しておいて、入社式で新卒社員にその映像を見せることで、働くことの意欲を高めるような工夫もしています。
内定から入社までの間には、現場見学会やOB宅訪問などの研修を行い、入社まで気持ちを切らさないような配慮も重要です。会社にとって戦力になる人材を選んで育てるのと同時に、新卒社員の側からもまずは会社のファンになってもらえるような、新卒採用・研修を行っていると言えるでしょう。

2新卒の成長とともにマニュアルを改善…楓工務店

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奈良県の楓工務店は、2007年設立の比較的若い会社ですが、会社設立から5年目に従業員数4名で20棟まで来たところで、将来的に会社を長く存続させることを考え、新卒採用を開始しました。14年4月に新卒1期生が入社し、新卒の成長とともに会社の業績も成長させ、18年度の棟数実績は奈良と京都の一部を合わせて契約70棟・完工40棟まで伸ばしています。現在の従業員数は54名、そのうち38名が新卒採用の社員で、1人も離職せずに残っています。

新卒採用の選考は5次面接まで行い、グループワークや1泊2日の合宿を通じて、「お客さまの笑顔を創造する」という会社理念や、「会社を成長させるための足跡を残すこと」を理解してもらい、これに共感して一緒に成長できる人材だけを採用しています。選考には社員全員が参加して会社の雰囲気を伝え、入社後をイメージしてもらうようにしています。
入社後の新卒向けの教育は、営業、設計、工務などの基本的な業務内容は動画でマニュアルを作成している他、接客からプランニング、着工、引き渡しまでの詳細なフローチャート、マニュアルを運用しています。未経験の新卒社員は失敗することもあり、業界経験者が見落としていることに気付くこともあります。こうした社員の経験や意見、施主からのクレームは、すぐにチャットワークやネットワーク上のファイル共有に集約して誰でも見られるようにし、マニュアルやフローチャートを常に改善し続けています。これが「足跡を残す」ということであり、新卒で入った先輩社員が後輩に引き継いで行きます。先に新卒で入った先輩社員は会社とともに成長していることを実感でき、後輩社員は身近なロールモデルとして近い将来の自信につながります。ITによる情報共有と業務効率化、社員の育成が噛み合っていると言えるでしょう。

住宅購入者は新しい世代へと移り変わっていきます。営業スタイルや商品企画、設計、デザインを新しい感性に合わせるためにも、若い世代の社員を採用することは長期経営の必須項目と言えるでしょう。

(テキスト/株式会社住宅産業研究所 布施 哲朗さん)

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