住宅&住宅設備トレンドウォッチ

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準備が出来ていない住宅で人生を台無しにしないために~住宅における、災害への備えを考える~

2019.9.20

住宅のつくり手にとって、そして住まい手にとっても無視できない地震や台風などの災害対策。近年、これまでの体験からは予想もできないレベルの災害が増えつつあり、有事の際の住宅のあり方が改めて問われています。
健康・快適な省エネ住宅の普及に努める建築家・松尾和也さんから、2018年の台風による被害事例なども交え、災害に備えて考慮すべき住宅のあり方、リスクの考え方などを解説いただきます。

住宅購入における、最低限の地震リスク対策とは

投資をする人であれば「ひとつのかごに卵を盛るな」という格言を聞いたことがあるかもしれません。これは「リスクを分散しておかなければ、有事の際に財産の大半を失ってしまうことになりますよ」ということを端的に表しています。

住宅というのは大半の方がローンを組んで購入されています。年収の3倍から5倍程度のローンを組むことは、投資でいうところのレバレッジをかけた信用取引ということになり、一般的には上級者向けの高リスク投資と同様の行為です。しかも投資のように銘柄を分散させるわけではなく、「自宅」に一点投資していることになります。それでも購入しなかった場合には家賃がかかるので「どうせ支払わなければならないから・・・」ということで購入に踏み切っているのが大半の方の心情かと思います。

確かにローンの支払いが終われば、自宅は完全に自分のものになります。逆に賃貸住宅においては居住期間に大災害が起きても命が助かりさえすれば、失うのは家具や電化製品等で済む、という側面もあります。高いレバレッジをかけて一点投資した「住宅」が大地震によって住めなくなる、すなわち価値がゼロになってしまうことをきちんと理解している人は、一般人はもちろん、住宅実務者でも少ないように思います。

東南海エリアに関しては30年以内に70〜80%の確率で、関東に関しても同様の確率で大地震が来ると予測されています(注1)。この確率は、今新築する30代の方がかなりの確率で被災することを示しています。それでも資産価値を失わないためには「耐震等級3」が必須となります。レバレッジの高い住宅購入という行為に踏み切る場合、これが最低限のリスク対策です。(同程度のリスク対策としては、自動車に乗る人が無制限の対人保障保険に加入することが挙げられます。)

注1.地震調査研究推進本部/地震調査委員会『南海トラフの地震活動の長期評価(第二版)について』2013年5月24日

熊本地震における木造住宅の建築時期別の損傷比率
耐震等級3のススメ(一般社団法人 くまもと型受託生産車連合会『熊本地震における木造住宅の建築時期別の損傷比率』)

近年多発する、台風による被害

地震に比べて強烈な事象ではありませんが、それに準じて対策しておかなければならないのが「台風」です。私の住む兵庫県では2018年の台風にて風速50mを記録しました。アンテナやアルミの塀が曲がり、瓦が飛び、ガラスも割れました。雨漏りした物件も多数あります。風速50mは、時速に換算すると180kmにもなります。この速度で高速道路を走っている車のフロントガラスが割れたらどうなるか、想像してみてください。少なくとも大窓にシャッターは設置しておくのが望ましいです。

写真1 外壁(屋根飛来物あり)
隣家の屋根が飛来し外壁に突き刺さった様子。被災を忘れないようにするため、現在も刺さったままにしている。
写真2 屋根修理未了の街の状況
近隣の多くの住宅で同時に似たような被害が多発。結果、施工が追い付かず、兵庫・大阪では現在でも2018年の台風の屋根修理が終わっていない事例を見かける。

未体験レベルの災害に、一人一人がどう備えるか

地震でも台風でも、安全な住宅であれば避難所に行く必要もありません。ほんの数日でも避難所で過ごすのは大変な苦痛を伴います。有事の際の住宅の安全性を、今一度見直すことが必要です。

私達は「これまでの人生」をもとに準備、対策を行いがちです。しかし、地震・台風ともに、未体験レベルのものが来ることが確実な時代が来ています。この点をきちんと理解しなければ、相応の準備を始めることは難しい。そして、一人一人が準備していなければ、被災者の数が助ける側の数より圧倒的に多くなってきている現実も同時に知っておく必要があります。

テキスト=松尾 和也(株式会社松尾設計室 代表取締役)
監修=リビングデザインセンターOZONE

製品のご案内

大地震による電気火災を防ぐ“感震ブレーカ”

河村電器産業株式会社 感震ブレーカ機能付きホーム分電盤
河村電器産業株式会社 感震ブレーカ機能付きホーム分電盤 動作説明
メーカー名
河村電器産業株式会社
URL
https://www.kawamura.co.jp/
製品名
感震ブレーカ機能付きホーム分電盤
品名・品番
「ENR-SK」シリーズ(スタンダードタイプ)
「EN2D-BSK」シリーズ(オール電化タイプ)
「ENT-SK」シリーズ(太陽光発電40Aタイプ)
素材・仕上げ
本体、フタ、カバー:プラスチック製
サイズ
H320mm × W330~470mm × D110mm
価格(税抜)
標準価格38,900円~
お問い合わせ先
TEL.03-5759-0027(ビジネス推進グループ 阿部・竹内)

地震が引き起こす電気火災をご存知ですか。大地震発生の際に、ブレーカを落とさずに避難すると、電気が火元になり火災が発生します。過去の大震災においても、電気火災により多くの住宅が焼失しました。
感震ブレーカは、地震発生時に揺れを感知し、3分後に自動で主幹ブレーカを遮断することで、電気火災の被害を最小限に留めることが可能です。独自のEQDアルゴリズムにより縦揺れも正確に感知し、誤動作の心配も軽減しています。

※内線規程2016追補版(一般社団法人日本電気協会)では、設置について住宅密集市街地には「勧告」、それ以外の住宅などには「推奨」とされました。補助金を設けている自治体もあります。詳細は各自治体へお問い合わせください。

火に強い 地震に強い 生命と財産を守る壁

吉野石膏株式会社 タイガーEXボード
メーカー名
吉野石膏株式会社
URL
http://yoshino-gypsum.com/product/exboard/exboard00.html
製品名
タイガーEXボード
素材
両面ボード用原紙張/せっこう板
サイズ
9.5mm厚×910mm×3030mm(標準品)
価格(税抜)
3,500円/枚(1,270円/m²)

硬質せっこう板に高防水・高防カビ性能を付加する事で、外壁下地用耐力面材としての使用を可能にしました。タイガーEXボードは業界トップクラスの耐火性能(注2)を持ち、万が一の近隣火災や風などによる貰い火からの燃え広がりを防ぎ、安全に避難できる時間を確保する事ができます。
加えて、建物の耐久性を保つ重要なポイントである湿気の通しやすさ(透湿性)にも優れ、木質系耐力面材やセメント系耐力面材よりも湿気を通しやすい材料です。土台や柱、壁などを腐食させる原因となる結露を抑制し、長持ちする家づくりに役立ちます。また、端部のみを固定する筋かいと異なり、釘で全面を固定するため、地震や台風などの力が一部に集中せず、全体で力を受け止めます。

注2.不燃材料認定を取得(認定番号:NM-4127)

吉野石膏株式会社 タイガーEXボード 浸漬試験

【浸漬試験結果のご紹介】
(左:室内用タイガーボード9.5mm/右:屋外用タイガーEXボード9.5mm)
2つのボードの試験片の下端1cmをインク水に1時間浸透させ、各々の試験片による吸水を確認しました。タイガーEXボードはほとんどインク水を吸い上げませんでした。

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