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住宅&住宅設備トレンドウォッチ

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ビルダー販促事例 ビルダー・工務店は横のつながりを強める

INDEX 2019.9.20

ここ数年の住宅業界における大きな潮流の一つが、大手住宅会社の巨大グループ化です。大きなニュースの一つと言えるのが、トヨタホームとパナソニック ホームズ、そしてミサワホームが手を組むことです。来年1月にはトヨタ自動車とパナソニックの共同子会社のプライムライフテクノロジーズが誕生し、同社の傘下に、パナソニック ホームズ、トヨタホーム、ミサワホームがぶら下がる形となります。一緒のグループになると言ってもそれぞれ別の会社であり、ブランドも商品も異なりますが、トヨタのモビリティとパナソニックのIoT、ミサワの街づくりのノウハウが合わされば、大きな事業に発展することも考えられます。

大手ハウスメーカーでは、大和ハウスや積水ハウス、住友林業を筆頭に、国内外の企業との業務提携やM&Aによって業容を拡大しています。ビルダー大手でも、ヒノキヤグループやオープンハウスがM&Aでグループを拡大してきた他、中小ビルダー・工務店の事業承継問題等で、中堅ビルダーにもM&A案件が持ち込まれることが増えてきています。大きな企業グループが増えてくることで、今後の住宅市場はますます寡占化が進んでいくことでしょう。

地域のビルダー・工務店は、グループ企業として一緒になるのではなくても、横のつながりを強めることで大手の勢力に対抗するという方法が考えられ、そういった事例が全国的にも目立って来ています。

1全国で増えている「住宅博」

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地域のビルダー同士が横に連携する協業プロジェクトとして、最近増えてきているのが、大型分譲地にビルダー数社がモデルハウスを建て、期間限定の展示場として広告宣伝や集客で協力し合う「住宅博」です。

分譲地にハウスメーカー・ビルダーがモデルハウスを出展して集客することは、これまでにも行われてきたことですが、近年のビルダー協業型の「住宅博」では、出展するビルダーが企画段階から積極的に携わることが従来型との違いです。出展するビルダー・工務店で実行委員会や運営委員会を結成し、コンセプトや広告宣伝戦略、運営方法等を出展社同士で協議しながら企画を進めます。
数社の協業で行う「住宅博」は、1社単独のイベントに比べると、より大きな媒体に、より多くの広告を打つことができ、総展への出展や、常設の単独展示場を新設するよりも1社当たりの経費を抑えて集客力を高められます。総展には出展していない地元のビルダー・工務店のモデルハウスを一挙に見られることは、これから業者選びを始める住宅検討者にとってもメリットがあります。

22ヶ月半の会期で約950組を集客…岡山ハウスデザインEXPO

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ビルダー協業型の住宅博の先行事例の一つが、14年10月~15年3月に開催された「岡山工務店EXPO」です。岡山市郊外の総面積約1万m²・36区画の大型分譲地に、岡山県の地元工務店16社が出展し、半年間の会期で2,000組という当初の集客目標に対し、延べ5,000組以上を集めた成功イベントです。
そして今年4月~6月には、同イベントの第2弾「岡山ハウスデザインEXPO」が開催されました。前回よりも規模は小さく、倉敷市の2,500m²・16区画に8社がモデルハウスを出展しました。当初は消費増税の経過措置終了前の1~3月に開催する予定でしたが、昨年の西日本豪雨の影響で造成が遅れたため、オープンが4月半ばにずれ込みました。4月の集客は約半月で350組。前回の岡山と比べると立地が悪く、出展社数も少ないため、初動の集客数は想定していたよりもやや少なかったそうです。

そこで、5月からは集客戦略を軌道修正しました。「岡山ハウスデザインEXPO」というタイトルは少し堅くてわかりにくかったことが集客減少の要因と分析し、5月からの広告ビジュアルは「岡山家づくり博」として、柔らかくポップなデザインにテコ入れしました。その結果、通常は会期後半にかけて集客が減るところを巻き返し、最終的には2ヶ月半の会期で約950組を集客できたということです。
前回の「岡山工務店EXPO」以降は、岡山県内の大型催事場を会場として、「住宅博」に出展したメンバーを中心に地元ビルダーが参加する商談会イベントを定期的に行っています。1回のイベントで終わるのではなく、協業型のプロジェクトを継続することで、地元におけるビルダー・工務店の価値を高める取り組みです。

3田園居住の訴求と県産材の利用促進…里山住宅博 in つくば

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現在開催されているビルダー協業型の住宅博の一つが、今年6~11月の会期で行われている「里山住宅博 in つくば」です。総敷地面積は3.3万m²、宅地面積は2.7万m²。本来は90区画確保できる広さですが、あえて75区画しか採らず、総面積の30%を宅地所有者の共有地とし、宅地のエリア内に中庭として使えるコモンスペースを設けているのが特徴です。この共有地は住民で結成する管理組合の所有として登記し、住民からは月3000円の共益費を徴収して維持管理と共有地の固定資産税に充てます。コモンスペースには異なる複数の樹種の植栽を植え、住民同士のコミュニティの場として活用する、田園居住型の暮らしを提案する街づくりです。
75区画の宅地のうち、23区画に21社がモデルハウスを建て、会期終了後に建売住宅として販売します。この企画の中心となったのが茨城県産材普及促進協議会で、茨城県産材の普及促進のため、モデルハウスの50%以上に県産材を使用することが参加条件となっています。また、屋根形状や外壁の素材、植栽等、建物や外構のデザインには景観協定によって一定のルールを設け、街区内の景観を形成・維持します。

集客戦略としては、この分譲地の周辺環境を知るバスツアーや、夜の分譲地を体感するナイトイベント、里山暮らし体験等のイベントを毎月実施します。地元ビルダー・工務店の協業と、都市郊外の田園居住型の暮らし提案が噛み合った「住宅博」と言えるでしょう。
ただ「地元の会社が集まっただけ」ではなく、全体を貫くコンセプトを設けることで、広告戦略を考えやすくなり、集客力も高められます。今後も全国各地でこのようなビルダー・工務店協業型の「住宅博」の開催は増えてきそうです。

(テキスト/株式会社住宅産業研究所 布施 哲朗さん)