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住宅&住宅設備トレンドウォッチ

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住宅新商品トレンド 強度はRCに匹敵、工期はRCより短く、「CLT工法」による新しい木の空間を提案

INDEX 2019.11.22

近年、建築業界で注目されている新建材「CLT」。CLTとは「Cross Laminated Timber」の略称で、ひき板(ラミナ)を並べた後、繊維方向が直交するように積層接着した木質系建材です。90mm~200mm超の厚みのある大きな板であり、建築の構造材や家具などに使用されています。CLTを建築物に活用することのメリットは大きく3点です。

① 建材としての性能の高さ
CLTは高い断熱性、耐火性、遮音性に加え、内装や外装の仕上げ材として使用できる意匠性も併せ持つ建材です。木材の熱伝導率はコンクリートの12分の1、鉄の1,000分の1と言われ、木材の分厚いかたまりと言えるのがCLTです。これまでの建築物は、例えば壁に断熱材を施工した後に耐火被覆処理を実施するというように、役割の異なる材料を組み合わせることが一般的ですが、CLTはそれ単体で断熱、耐火、遮音性能を発揮できるため、コストだけでなく、工程面においても効率的です。

② 施工スピードが速い
CLTは大きなパネルを工場でプレファブ化して現場で施工します(国内工場では最長巾12mのCLTパネルが製造可能)。開口や配管などに絡む箇所に関しても、工場にてプレカットした状態で搬入するので、現場作業は基本的にはめ込むだけで済みます。施工方法はまるでプラモデルと言え、職方への教育が容易であり、熟練工も不要です。施工スピードも速く、現場で発生する残材も最小限に抑えられます。

③ コンクリート並みの強度で、軽い
CLT造の場合、強度はRC並みですが、重量はRCの5分の1ほどです。そのため、建物の重量が軽くなり、建物を支える基礎の仕様を簡素化することも可能です。

1CLTの活用事例が建設業界で先行

clt外観(日本CLT協会より)

CLTが登場したのは1990年代中頃です。当初オーストリアを中心に発展し、その後、イギリスやスイスなどヨーロッパ各国、2000年代に入るとカナダやアメリカ、オーストラリアと、CLTの活用は世界に急拡大していきました。木材特有の断熱性と壁式構造の特性を活かし、戸建住宅の他、中層建築物の共同住宅、高齢者福祉施設、ホテルの客室などに利用されるケースが多く、最近ではCLTを主要な構造材とする10階建て規模の高層建築プロジェクトも散見され始めました。

一方、日本におけるCLTの建築技術は発展途上にあります。国内で2013年12月に製造規格となるJASが制定され、2016年4月にCLT関連の建築基準法告示が公布・施行されました。これらをきっかけに、CLTの一般利用がスタートしたということで、まだ3年ほどの実績に留まっており、海外に後れを取っているのが実情です。しかしながら、住宅業界に先んじて建設業界ではCLTの活用が急速に進んでいます。2019年2月には仙台市にてCLTを国内で初めて床材と耐震壁に使用した、竹中工務店施工の10階建て高層賃貸マンションが竣工した他、この11月末に竣工予定の新国立競技場でもCLTが用いられています。

CLTの建材としての有用性はこれまで説明してきた通りですが、CLT利用促進が国内林業の活性化につながることも期待されています。日本は国土の3分の2を森林が占め、森林資源が豊富です。一方、安価な輸入木材の流入や木造住宅の着工減などから、国内の木材生産が低迷し、林業従事者も大きく減少しています。手入れが行き届いておらず、荒廃した森林では土砂災害発生のリスクも高まります。そのため、政府はCLTを普及させ、国産木材の需要拡大と林業活性化を図っています。

2「2×4」×「CLT」のモデルハウスがグッドデザイン賞受賞~三菱地所ホーム

三菱地所ホーム「新宿ホームギャラリー」
三菱地所ホーム「千里ホームギャラリー」

三菱地所ホームはCLTを用いたモデルハウスで、2019年のグッドデザイン賞を獲得しました。受賞対象となったのは新宿ホームギャラリーと千里ホームギャラリーの2棟です。
これらモデルハウスの特徴は「ハイプロテクトウォール構法」と「3D TIMBER FRAME」によって実現した大空間と8mの連続両面大開口、またCLTを2階床板に使用することで2方向はね出しによって形成されている伸びやかな軒下空間です。「ハイプロテクトウォール」は壁倍率約6倍を誇る構造壁で、標準採用しています。また、「3D TIMBER FRAME」は水平荷重を壁柱が、鉛直荷重をラーメン架構全体が受け止める構造により、外壁のコーナー部に最大8m超の連続両面大開口を設けることができます。

両モデルは軒下空間を大きくとったため、夏は直射日光を避け、日照時間の短い冬には柔らかな光を室内に取り込むことができ、年中快適に過ごすことができます。デザイン面に関しては、水平方向に伸びるCLTスラブとフラットな庇によって形成されるダブルラインと、1階から庇の上部まで垂直に伸びるキューブ状の外壁部分を設けたことで、より際立った水平線と垂直線、平行線が演出する造形が目を引きます。
また、2019年5月にオープンした新宿ホームギャラリーの設計に関しては、インハウスの設計集団である「ORDER GRAN設計室」が担当しました。これは2019年度に新設されたばかりの組織で、実績とセンスに優れたメンバーを選抜してチームが編成され、デザインにこだわりを持つ富裕層をターゲットに展開しています。

3オリジナルCLT工法による集合住宅商品を開発「フォルターブ」~大東建託

大東建託「フォルターブ」
大東建託「フォルターブ」

コンクリートの代替建材と期待されるCLTですが、ハウスメーカーではCLTを採用することでのコストの高まりなどを背景に、CLTを用いた住宅商品化が進んでいません。その中で、いち早く商品開発に漕ぎ着けたのが大東建託です。同社は10月1日、独自開発したCLT工法による木造4階建て賃貸住宅「Forterb(フォルターブ)」を発売しました。この商品名は、「強い」を意味する『Forte』と、「木」を意味する『Arbre』を組み合わせた造語です。
基本のフロアプランは、シングル向けの1K・1DKで、それぞれ専有面積が約27m²、約34m²に設定し、ワンフロアに3戸、合計12戸を配置します。住居部分はコンパクトではありますが、CLTの木質感を活かした内装としています。さらにCLTを用いた界壁は厚さ150mmで、隣室との遮音を徹底し、界床はLH-55を実現しました。また、共用部エリアに関しては、CLTを仕上げ材とする壁面を設けています。

この他、大東建託ではCLTを用いた新施設を、江東区東雲に建設しています。「未来の暮らし」をテーマに情報発信する新施設「ROOFLAG(ルーフラッグ)賃貸住宅未来展示場(以下、ルーフラッグ)」という名称で、2020年2月に完成予定です。ルーフラッグの特徴は、CLTを組み合わせた三角の大屋根が形成するファサードで、大きな旗に見立てています。敷地内には、ショールーム機能を備えた展示棟や賃貸住宅商品のモデル棟、最新の技術を伝える研究ゾーンを設けています。

(テキスト/株式会社住宅産業研究所 斎藤 拓郎さん)