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住宅&住宅設備トレンドウォッチ

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ビルダー販促事例 中堅メーカー・ビルダーの災害対策提案

INDEX 2019.11.22

今年10月に日本列島を襲った台風19号は各地に大きな被害をもたらしました。静岡から上陸し首都圏を移動して東北から東に抜けるまで、半日で13都県に大雨特別警報が発表され、21河川24ヶ所が決壊し、水量が増えたダムの緊急放流も行われました。各地で水害の被害が大きかったことに加え、停電等の二次的被害があった地域も少なくなかったようです。高速道路、鉄道、航空などの交通インフラも軒並みストップしました。これほどの範囲で、これほどの甚大な被害をもたらす台風の上陸は極めて稀なことであり、前日には小売店の水や携帯食の棚が空になるなど、混乱をきたしました。被害に合われた方々には、心よりお見舞い申し上げます。

今年発生した自然災害はこれだけではありません。8月には福岡・佐賀を豪雨が襲い、9月に上陸した台風15号は、千葉県に大きな住宅被害と電気・水道・通信などのインフラのストップをもたらしました。日本は災害の多い国です。昨年も大阪北部地震や西日本豪雨、北海道胆振東部地震などの大規模な自然災害が相次いで発生し、人々の防災意識を一層高めるきっかけとなったのではないでしょうか。

しかしながら、備えていても防ぎようもないのが大規模自然災害の恐ろしさです。住まいを提供する住宅会社としては、地震に耐える耐震性や台風に負けない耐風性等、災害に耐え得る強い構造の家づくりをすることが使命ですが、最近の住宅会社の防災訴求は「強い家を提供すること」だけではなくなってきています。災害が発生しライフラインが絶たれたときに、再びライフラインが回復するまでの間、いかに日常と変わらない暮らしを提供できるかという「レジリエンス」型の提案が増えてきています。

1空気から飲料水を生み出す製水器+耐震シェルター…ヤマダホームズ

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今年の春以降、大手ハウスメーカー各社からはレジリエンスをコンセプトとした新商品が次々と発売されました。大和ハウスでは全天候型3電池連携システムを採用した、「災害に備える家」、パナソニックホームズでは太陽光発電と蓄電システムに43リットルの貯水タンクを加えた「防災持続力を備える家」というように、コンセプトをそのまま商品名としたものもありました。
大手ハウスメーカーでは、それまで推奨していた太陽光発電の売電メリットが少なくなり、創った電気を家庭内で貯めて自家消費するための、蓄電池の需要を増やしたいという思惑もあるでしょう。中堅メーカーやビルダーの提案では、単純に電力を確保することとは少し違ったアプローチも見られます。

ヤマダホームズが今年10月に発売した「ネクシス」は、ハウスメーカーのレジリエンス住宅と同じく、災害時の電力を確保する大容量蓄電池を搭載する他、水の確保では他社にはない提案をしています。同商品に搭載する「空気から飲料水を生み出す製水器」は、花粉やPM2.5にも対応している高性能のHEPAフィルターで、空気中の埃や塵などをブロックして空気を浄化し、その綺麗な空気を使用して飲料水を生成する設備です。日々生成される水は、機器内で定期的に循環させることによって劣化を防ぎ、常に安全で美味しい飲料水を維持するということです。
また、同商品の発売キャンペーンとして、100棟限定でオリジナルの耐震シェルターのオプションを無料で室内に設置できるようにしました。独自認定構法の木質パネルを使用した4畳半サイズのシェルターは、100トンの重量に耐えられる性能で、災害でもし家が崩れても室内で安全を確保できます。

2水害対策の「耐水害住宅」の実験を実施…一条工務店

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一条工務店では今年10月、防災科学技術研究所と共同で、ゲリラ豪雨や河川氾濫による水害対策を想定した「耐水害住宅」の公開実験を行いました。茨城県つくば市の防災科研内にある大型降雨実験施設の大型貯水槽内に、一般的な仕様の木造軸組住宅と、2×6工法の「耐水害住宅」の同じ間取りのモデルを建設し、約1時間の降雨実験を行いました。実験では、水位は地盤から1300mm上昇し、一般住宅は床上688mmまで浸水しましたが、「耐水害住宅」では浸水の被害はなく、電気系の設備にも異常がなかったそうです。

「耐水害住宅」の水害対策のポイントは大きく3点です。第一に浸水の防止。外壁には透湿防水シートを施工し、基礎との接合部は防水塗料で止水。掃き出し窓のサッシや玄関ドアなどの開口部には、自動車の技術を応用した中空パッキンを施しました。第二に逆流の防止。基礎管機構にフロート弁、排水管にはオリジナルの逆流防止弁を設置して水の流れ込みを防ぎました。第三に水没の防止。エアコン室外機、パワコン等の屋外機器は、高さのある架台に設置して水没を防ぎ、架台は基礎に固定することで耐久性を高めました。同社では年内にも「耐水害住宅」を商品化する計画です。

3モデルハウスを災害対策に活用…アキュラホーム

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アキュラホームでは今年9月、埼玉県久喜市に新設された総合展示場に「災害時支援施設」となるモデルハウスを開設しました。日産自動車、日産プリンス埼玉販売と災害連携協定を結び、モデルハウスには11kWの太陽光発電パネルと日産リーフを設置して、常に電力を供給できるようにします。蓄電量は40kWhで、災害時には約6000人以上の携帯電話・スマホを充電することが可能です。外構には井戸を設置し、電気の供給が止まっても手漕ぎポンプで生活用水を確保できます。モデルハウス内の小屋裏収納は災害時用備蓄品倉庫として、飲料水、防寒グッズ、使い捨てカイロ、トイレットペーパー、ウェットティッシュ、ブルーシート、ごみ袋などを常備し、災害時には無料で提供します。

アキュラホームではその後、自社のつくば支店を防災拠点としてリニューアルし、浜松市と刈谷市の総合展示場モデルでも、久喜市と同様の災害支援仕様にしました。
新技術の研究開発や大規模な実験は一般の工務店には難しいことですが、災害時に安心できる場所を提供することは、工務店にもできる地域密着型の災害対策と言えるでしょう。

(テキスト/株式会社住宅産業研究所 布施 哲朗さん)