住宅&住宅設備トレンドウォッチ

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制度・マーケット情報 2019年の住宅業界10大ニュースと2020年展望

INDEX 2019.12.20

2019年という年がもう間もなく終わります。今年は日本という国にとっても、非常に大きな節目の年でした。平成から令和へ時代は変わり、そしてラグビーワールドカップの自国開催といった大きなイベントが日本全体を盛り上げました。そして一方では台風による被害や首里城火災という災害も多発した年でもありました。
時代の転換点となったことは間違いありません。そして住宅業界にとっては、やはり10%への消費増税という出来事が非常に大きかったでしょう。今回は2019年の住宅業界における10大ニュースをピックアップして、また来年2020年を少し展望してみます。

12019年の住宅業界ニュースは? 増税、自然災害、経営統合…

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2019年の住宅業界のニュース、第1位はやはり「10%への消費増税による影響」でしょう。今回は支援制度も拡充され、前回8%への増税時よりも駆け込みは少ないという予想の通り、大手ハウスメーカーの受注の盛り上がりも前回の半分程度であったと見られます。それでも今年2~3月くらいには富裕層の高額住宅やアパートなどはある程度動きはありました。現在はその反動で受注はマイナス、集客も厳しいといった状況です。やはり住宅購入マインドへの増税の影響は大きなものでした。

第2位は、これも住宅に留まりませんが、「台風などの自然災害の多発と、レジリエンスへの関心高まる」です。水害の恐ろしさは西日本豪雨でも痛感しましたが、今年は強風による被害、そして停電などの二次災害という点で、復旧できる強靭さといったレジリエンスという面でも関心が高まりました。エネファームや蓄電池、貯水タンクといったアイテムも普及が進みそうです。

第3位は、「トヨタ自動車とパナソニックが住宅事業の統合を発表」。日本を代表する大手企業が手を組むということで、大きな経営統合と言えます。新しいまちづくりを手掛けていくということで期待も高まりますが、トヨタホーム、ミサワホーム、パナソニックホームズのシナジーがどう出るか、来年設立するプライムライフテクノロジーズに注目です。

第4位は、「レオパレス、大和ハウス、LIXIL等、ガバナンス問題が相次ぐ」。施工不良問題から、会社経営陣の人事を巡る問題まで、世間を騒がしました。ESG経営ということが言われるようになっていますが、その中でもガバナンスという点が、会社経営にとっても極めて重要だということが明らかになりました。

第5位は、「卒FITの家庭が53万件、蓄電池と電力買取ブーム到来」。今年の11月から太陽光発電の固定買取期間の10年が終了し、電力をどう使うかという2019年問題が発生し始めました。蓄電池に貯めて自給自足をするのか、売電単価は下がっても売電を続けるのか。ちょうど今年はリチウムイオン電池の開発者がノーベル化学賞を受賞したこともあり、蓄電池市場はますます注目を集めるようになっています。

第6位は、「建売市場好調、オープンハウスやケイアイスター不動産躍進」。利用関係別で唯一好調に推移しているのが建売市場です。持家やマンションから市場が移っていることもありますが、分譲系のプレイヤーの強さも要因かと見られます。特に都心部を狙うオープンハウスの勢いは他社を圧倒しています。直近の売上高も5,400億円とハウスメーカーを上回って来ています。

第7位は、「融資厳格化、賃貸住宅の着工減少が続く」。アパート市場はマイナスの度合いを強めています。一連の不祥事問題から、金融機関の融資厳格化、都市部の需要はあるものの、地方の賃貸市場は激減しています。

第8位は、「ビルダーの新しいアライアンスが始動」。ビルダーのM&Aは、比較的頻繁に起こっていますが、今までと少し違う買収劇が出始めています。これまで無借金経営で高収益な優良ビルダーが他社の傘下に入る例も出ています。中古マンション買取再販業者のホームネットが、秋田No.1のサンコーホーム、山口のトップクラスビルダーであるファーストホームをグループ化したのが、その顕著な事例です。新しいタイプのアライアンスとも言え、不動産系企業と注文住宅ビルダーとの新たなシナジーがどう生まれるかは注目です。

第9位は、「空き家846万戸と予想よりも増加率は抑制」。住宅土地統計調査による空き家ストックが発表されました。それ以前の予想では1,000万戸を超えると言われていたものが、予想を下回る846万戸であったということです。賃貸空き家があまり増えなかったことが大きな要因ですが、住宅業界の大問題である空き家を極力増やさずに活かしていくという方向に少しずつ動いているようにも思えます。

第10位は、「ストック市場へのシフトとサブスクビジネスに注目」です。リフォームは当然のこととして、既存住宅の流通などストック市場へのシフトは徐々に進んでいると見られます。サブスクリプションという言葉も、今年何かと話題になりましたが、住宅業界でも今後、定期的なサービスなどで収入を得ていくサブスクを如何に導入していくかは課題となっています。

22020年はいよいよ東京五輪開催、これから先の住宅業界は?

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2020年、いよいよ東京五輪の年がやってきます。インバウンドも含めて景気が盛り上がる期待はありますが、住宅市場ではここ数年の地価上昇や「HARUMI FLAG」という街が出来上がるということが直接的な影響と言えるでしょうか。五輪期間中には住宅市場に何かプラス影響があるということではないでしょうが、むしろ五輪後の市場停滞といったことは懸念されます。
住宅着工を何とか支えていると言える支援制度も来年3月から段階的に終了していきます。支援が終わり、五輪ムードが終わった時、景気はどうなっているでしょうか。来年の後半はちょっと厳しい市場環境が予想されます。

いずれにしても消費税10%時代を迎えた令和2年の2020年以降は、住宅市場を取り巻く環境は今までとは全く違ってくるはずです。既成概念にとらわれずに発想を変えていかなければなりません。若年人口の減少も現在進行形で進んでおり、このことは従来のような住宅業界には不利に働いてきます。一方で、人生100年時代になり、長く生きていくことで出て来るニーズもあるはずです。本当にストック型社会が訪れれば、一生涯住宅に手を加えていくことで住宅の価値を高めたり、あるいは家族や生活の変化に合わせて何度も住み替えていくことも常識という世の中になるかもしれません。
ユーザーの価値観は徐々に変わって来ていて、所有欲がなく、何でもシェアするという価値観が浸透して来ています。買ってすぐ売るというメルカリ消費はストック循環型社会へ急速に進ませる可能性もあるでしょう。AI、ITによって世の中全体が変わっている過渡期にもあります。これもプラスに捉えて自社の事業や、住宅そのものにも取り入れていく時代になっていきます。
2019年は大きな出来事がたくさんありましたが、2020年も東京五輪開催など、変化の多い転換点のような年になるでしょう。少し先を見据えながら、次世代の住宅業界で何が求められるのか考えていく必要があります。

(テキスト/株式会社住宅産業研究所 関 博計さん)

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