住宅&住宅設備トレンドウォッチ

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住宅新商品トレンド ハウスメーカーがグッドデザイン賞を続々獲得

INDEX 2020.1.24

2019年10月、グッドデザイン賞(以下、GDA)が発表されました。応募件数4,772件の中から受賞に至ったのは、1,420件の受賞で過去最多の数字です。大手ハウスメーカーからは5社・13件の受賞となりました。また、倍率40倍を超える狭き門である「グッドデザイン・ベスト100」の中から特別賞として、積水ハウス・坂倉建築研究所・長谷工コーポレーションの「プライムメゾン江古田の杜・グランドメゾン江古田の杜(集合住宅)」がグッドフォーカス賞(地域社会デザイン)、ミサワホーム総合研究所・沖縄科学技術大学院大学学園・ソニーコンピュータサイエンス研究所・ミサワホームの「住まいの分散型エネルギー・水システム」がグッドフォーカス賞(防災・復興デザイン)を受賞しました。

近年は業界問わず、多くの企業がGDA受賞を目指す動きが散見されます。その背景にはGDAの認知度の高さが挙げられます。GDAを主催する日本デザイン協会によると、2017年時点で「グッドデザイン賞」の国内認知率は84.1%、「Gマーク」の国内認知率は79.0%という結果が出ており、Gマークはどの年代・性別でも約80%の消費者が「知っている」とのことです。企業はGマークを活用することで、幅広い層に対して一定の訴求効果があると言えるでしょう。
また、GDA受賞企業の社員のモチベーション向上につながる可能性があることも忘れてはいけません。社員にとって顧客満足度向上が業務の目的の一つであることはもちろんですが、これまで取り組んできた業務が客観的にGDAとして評価されることは社員のモチベーション向上、満足度向上につながるでしょう。また、社員に向けても、顧客に向けてもプラスに作用することが期待できるGDAを企業目標の一つとして掲げることは有用かもしれません。

1外部と内部空間の関係性を再構築「ジーヴォ・シグマ・プレミアム」~大和ハウス

大和ハウス ジーヴォシグマプレミアム
大和ハウス ジーヴォシグマプレミアム内観

大和ハウス工業は「ジーヴォ・シグマ・プレミアム」でGDAを獲得しました。この商品は2018年に発売した戸建住宅シリーズ「ジーヴォ」の最高クラスです。コンセプトは「日々の暮らしに充足感を提供する都市の邸宅」で、デザインだけでなく、断熱・耐震性能にもこだわっています。

デザイン面での特徴はまず、高さ2,720mmの天井まで達する「グランフルサッシ」や「グランフルドア」です。これらを「グランフルデザイン」と総称し、解放感のある開口部で、空間の広がりを演出します。さらに、屋内外に演出した空間の連続性も特徴の一つです。室内天井から軒天井までの素材・デザインに一体感を持たせています。開口部が大きいことで気になる周囲の視線にも配慮し、外からの視線を遮る腰壁高さ(約185cm)のバルコニーやルーバーなどの外装材も拡充し、2階においても、高さ2,720mmの大開口を実現できると提案を強化しました。

一方、断熱性ということでは「新高断熱アルミ樹脂複合サッシ(中空層アルゴンガス入り)」を採用した、業界最高水準の断熱グレード「エクストラV」仕様としています。外壁部に関しても、4層断熱(厚さ184mm)を装填した「外張り断熱通気外壁」を採用しており、従来の「ジーヴォ・シグマ」に対して開口部面積を1.6倍に拡大しても、ZEH基準をクリアできるということです。また、太陽光発電システムと5.4kWhのリチウムイオン蓄電池、HEMSも標準で搭載しています。

また、この商品は耐震性も高く、耐震等級3を実現しています。エネルギー吸収型耐力壁「ディーネクスト」と構造躯体を強化した「持続型耐震ジーヴォシグマエス」仕様を標準装備することで、耐震等級3の1.5倍の強度を発揮します。これらにより、巨大地震時の建物の変形量は従来の「ジーヴォ・シグマ」と比較するとさらに最大45%低減できるとのことです。
「ジーヴォ・シグマ・プレミアム」はデザインだけでなく、断熱性、耐震性と共に住み心地を最大限高めた住宅商品と言えます。

2快適性と省エネ性を兼ね備えた分譲地開発「エムスマートシティ熊谷」~ミサワホーム

ミサワホーム 分譲地外観
ミサワホーム 分譲地ゾーニング

ミサワホームは住宅業界唯一、GDAを30年間連続で受賞している企業です。2019年度も5点が受賞となり、累計受賞数は156点と住宅業界でも随一の数字です。
今回紹介するGDA受賞作品は同社が埼玉県熊谷市で開発した分譲地「エムスマートシティ熊谷」です。日本でも最も暑い都市の一つとして有名な熊谷市においては、暑さ対策が重要になってきます。同分譲地ではこの暑さ対策に対して、「街」と各々の「住宅」の2つの側面から取り組んでいます。

分譲地東側には公園が設置されています。公園の舗装は、日射反射性を高めるために、色の薄い骨材を混ぜ込んだ舗装が採用されています。この舗装には保水性も有しているため、目地の交差部に設置されているノズルから井水を散水することにより、長時間の蒸散効果が期待できます。さらに公園が街区の東側に配置している理由としては、この地域で夏季に東から南方向へ流れてくる風をうまく取り入れるためでもあります。公園には大きく育った桜が植えられています。この分譲地はこの公園の樹木がもたらす蒸散効果や日陰効果によって南東からの風を一旦クールダウンさせてから各街区の道路に流れていく、というゾーニングになっています。

また、個々の住宅については太陽光パネル、樹脂サッシ、シーリングファンを導入し、断熱性と省・創エネ性を向上させています。外構においても樹木、リーバーの表面を水が流れる仕組みとなっているクールルーバー、ミスト等を組み合わせたクールスポットを創出しています。

3木造住宅のイメージを変える開発した薄型の木製庇「フラットキャノピー」~住友林業

住友林業 フラットキャノピー外観
住友林業 フラットキャノピー

2019年度GDAを受賞した住友林業の住宅外装部材「フラットキャノピー」。住友林業グループにとってはこれで10年連続GDA受賞となりました。
この商品は木造住宅のイメージを変えるために開発した薄型の木製庇です。庇は日本の住宅にとって、四季それぞれの気候に合わせて雨や夏の日差しを遮りながら庭先に空間を生み出す重要な設えの一つです。「フラットキャノピー」では庇本来の性能を担保しつつ厚みを抑えるため、シート防水を用いて薄い庇を実現しています。袖壁の厚みとほぼ同一寸法とすることで、水平垂直が連続したスタイリッシュな外観にしました。深い軒・庇によって伝統的な縁側のような憩いの空間をつくり出すことができます。

(テキスト/株式会社住宅産業研究所 斎藤 拓郎さん)

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