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制度・マーケット情報 SDGsを経営の中心に据える

INDEX 2020.2.21

今、「SDGs」という言葉をいろんな場所で目にするようになっています。「持続可能な開発目標」と呼ばれる、国連加盟193カ国が全会一致で採択した目標です。17のゴール、169のターゲットから構成される、2030年にかけて達成するための行動計画で、企業や地方自治体、NPOなどでもSDGsの視点で事業・組織を見直し、経営において欠かせない目標として定める動きが活発化しています。
住宅業界においても、ハウスメーカーを筆頭に、主要なビルダー各社はSDGsを経営に落とし込んで、自社の事業で目指す目標という形で掲げている会社が多く見られます。今回はこのSDGsを中心に据えた経営の事例を見てみます。

1大手ハウスメーカーは環境貢献度の高い会社として評価

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SDGsは貧困をなくすことから環境を守ること等、地球上のみんなの暮らしが良くなるようなターゲットを定めていますが、住宅業界にも密接に絡んでくる目標も多くあります。
大きな意味で、「環境」は住宅業界との関わりは非常に大きなものです。その一つ、「気候変動に具体的な対策を」「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」というのは、SDGsでの代表的な環境目標です。気候変動による自然災害の多発は、身に染みて感じることが多くなっています。地球温暖化が原因と見られ、温室効果ガスの削減を目指すことも住宅会社の一つの役割になってきていて、CO2削減の取り組みを強化することは環境貢献度が高い企業としての姿勢を表すものになります。

環境貢献という点で、世界的な機関による評価やイニシアチブも多くあります。最近では環境非営利団体CDPによる選定企業が発表されました。温室効果ガスの排出削減、水資源、森林保全等への取り組みが進んでいる「気候変動Aリスト」として、2019年はハウスメーカーから5社が選定されています。Aリスト企業は、世界で179社、日本は最多の38社が選ばれており(日本の調査回答企業は579社)、18年よりも日本企業が大きく増えました。このうち選定されたハウスメーカーが、住友林業、積水ハウス、大和ハウス、積水化学、大東建託の5社です。中でも住友林業の気候変動Aリスト入りは4年連続で、さすが林業を祖業とする会社だと言えます。大和、積水、化学も2年連続で選ばれました。

再生可能エネルギーで自社が使う電力を100%賄うことを目標に置く、RE100宣言の企業もハウスメーカーは多いです。世界221社のうち日本企業は30社が加盟していますが、その中でもハウスメーカーの存在感は大きく、国内2番目に加盟した積水ハウス、4番目に大和ハウス、以下大東建託、東急不動産、パナソニック、旭化成ホームズ、LIXILが加盟しています。積水、大和、大東は2040年に100%達成、旭化成ホームズは最も早い2038年に100%達成を目指します。今ハウスメーカーでは卒FIT家庭から電力を買い取る事業を強化していて、買い取った電力を自社の事業所等で賄うことで、再生エネでの事業活動を促進していく計画です。

住宅は、環境への貢献度が非常に高い業種です。環境貢献への取り組みを企業経営に落とし込んでいく動きは上場企業のみならず、何処の企業にとっても取り組まなければならない必須項目となりつつあります。企業価値の向上、イメージアップにもつながり、「環境」はSDGsの中でも最初に手を付けるべき重要な目標とも言えます。

2SDGsは会社経営の中心に置く

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環境ということへの意識から、ZEHへの取り組みに積極的な企業は、SDGsをうまく経営に落とし込んでいるケースが見られます。例えばZEH比率9割を超えるエコワークスは、SDGsをしっかりと事業の一つ一つに落とし込んでいる事例です。同社の取り組み方を参考にみてみます。

ポイントの一つは、「ビジネスチャンスとして捉えること」だと言います。SDGsに取り組むことで、将来的にゴールを設けるため、長期ビジョンの策定にもつながっていきます。目指すべきゴールがあるため、経営戦略がぶれず、時代を先取り、選ばれる企業になれる指針にもなると言えます。
二つ目は、「人材採用と人材育成に役立つ」ということ。まず会社の姿勢として持続可能な企業であり、持続可能な社会を目指す会社のイメージは良いでしょう。そして環境に関しては若い世代ほど、未来の地球環境に敏感になるはずです。SDGsは社会に貢献するという点で、若い世代との共通言語ともなり、共通目標でもあり、就活生にとっても企業選別の一つにもなってくると思われます。さらには将来の事業承継のツールとして、次世代の社員とビジョンを共有することも可能です。

何を重視するかは、会社によって異なるのは当然です。よって各社が重要項目として掲げるSDGsの項目は、みんな違うという点も、自社のカラーが出て面白いところかと思います。
まず17の目標に対して、現時点で自社ではどれくらい対応できているかを評価してみると良いでしょう。「貧困をなくそう」など、住宅会社としては取り組みが難しいものもあります。取り組みができる項目を選択して、重要なものから順位付けを行っていきます。ちなみにエコワークスの場合は、「⑬気候変動に具体的な対策を」が最重要、以下「⑦ エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」、「③すべての人に健康と福祉を」、「⑫つくる責任、つかう責任」となっていて、エコに重きを置いていることがわかります。最重点、準重点等とカテゴリーを分けたり、事業部ごとに掲げるゴールを分けてみても良いでしょう。
次にそれぞれについて、目標期限、KPI、具体的な行動、現状の実績を記していきます。2040年にCO2排出量実質ゼロカンパニーになるとか、具体的な行動としては、環境省「中小企業版2℃目標・RE100」へ参加するといったことを記載していき、みんなで目標に向かうということで意識を高めています。

3世の中のためになる会社しか生き残れない

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昨今の新聞紙面等でも、「ESG」「SDGs」という言葉を見ない日はありません。ESG投資は世界中で急拡大している投資の目安で、50年先を見据えてリターンを追求するという考えの下、金融の動きも変わってきていると言います。環境貢献度の高い企業を評価し、そうでない企業は投資対象から外されるという時代です。SDGsもこれと近い考え方といえるでしょう。

前述しましたように、会社によって何を重視するかは異なっていて当たり前です。SDGsでそれぞれが重視する目標は、世の中のためになる目標になります。例えば、ビルダーでは、「すべての人に健康と福祉を」という項目は、多くの企業で目標値に掲げられています。またストックをしっかり活用しようという点では、「つくる責任、つかう責任」も重要です。しっかりと価値ある住宅を使い続けていくという姿勢が見られます。「ジェンダー平等の実現」等、働き方改革のようなテーマを重視する目標にも掲げられる例もあります。
長期優良住宅の時代になって、会社も持続可能な企業でなくてはなりません。そして持続可能な社会を目指していくという企業姿勢が極めて重要になっています。

(テキスト/株式会社住宅産業研究所 関 博計さん)

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