天空から3倍の採光を得て、密集地でも明るく
都心の住宅事情は、すぐに隣家が迫った密集地が少なくありません。そうした密集地には、狭小住宅が軒を連ねています。住宅密集地では隣家が迫っているため、窓を開けたら目の前が隣の家の壁しか見えないということも多く、そのせいで昼間も光があまり入らずに照明をつけなければ部屋の中が暗いという家も多いでしょう。また隣同士の視線が気になって、1日中窓やカーテンを閉め切ることもあると思います。
「密集地や狭小住宅への採光に有効なのが天窓です。同じ面積の壁面付の窓と天窓とを比べた場合、天窓は壁付け窓の3倍の明かりを得ることができます」と中野さんは言います。壁付の窓の代わりに天窓を付ければ、十分な採光を得られるだけでなく、空いた壁面に棚をつくるなどのスペースの活用にも有効です。さらに、開口部の部分が壁になることで住宅の耐震性能や気密性能を上げることにもつながります。
熱を逃がし、爽やかな風を室内に取り込む
天窓というと、「熱がこもって暑い」「雨漏りする」といったマイナスイメージを抱いている人は今も多いかもしれません。しかし、それはアルミサッシ枠の天窓しかなかった昔の話で、現在は高気密の木製枠で、遮熱性能の高いLow-Eガラスを採用した天窓へと進化を遂げて、これらの問題を解決した製品が数多くあります。
加えて中野さんは次のように話します。「温度の上がった空気は低いところから高いところに動く性質があり、1階の窓から1階の窓への通風排熱力に対して、1階の窓から2階の天窓への通風排熱力はその4倍もの効果がデータで示されています。電動開閉ができる天窓を採用すれば、効率的な通風排熱によって、常に快適な室内環境を保つことができるのです」
天窓を上手に活用すればエアコンの使用頻度が少なくなり、省エネにもつながります。
天窓から日光を取り入れて体内時計をリセット
今年は外出自粛要請によって、家で過ごす時間が増えました。オンライン授業やテレワークといった「新しい生活様式」は、家や住まいというものを改めて考えるきっかけとなりました。それは今後の家づくりにも大きな影響を与えると予測されます。
前述したように、天窓を採用することで採光と通風の効果が得られることがわかりましたが、それ以外にも天窓を使うメリットがあると中野さんは言います。「人間は太陽光を浴びることで、体内時計が正常化します。体内時計をリセットするために必要な光量は2000~2500ルクスで、その数値は通常照明灯の5~10倍にあたり、自然光が最も効果的だと言われています。最新の研究では、体内時計が正常化することで、学習の能率アップ、うつやアルツハイマー治療や予防に効果があるという結果が示されています。寝室や洗面所、リビングダイニングなどに天窓をつけて、朝日を浴びる生活を取り入れることで、健康的な毎日を送ることができるのです」
天窓は光と風だけでなく、空の色や自然の移ろいも映し出してくれます。家の中で過ごす時間が長くなった今、内と外をつなぐ天窓のある生活の提案をしてみてはいかがでしょうか。
取材・文=梶原博子
監修=リビングデザインセンターOZONE