自然災害に強い「耐震等級3」「耐風等級2」の住宅

地殻変動による地震や気候変動等による豪雨や風被害など、いつ起こりえるか分からない自然災害は日々発災する可能性が高まっています。住宅は自然災害に幾度も立ち向かわねければならず、これからの時代は、災害に強い余力ある住宅性能が必要とされると私たちは考えています。その上で瞬時に大きな被害を与える地震力に対しては「耐震等級3」以上の住宅性能に。2016年に発生した熊本地震は3日間で震度7もの地震が2度も観測されています。その被災地の中でも「等級3」相当の住宅は大半が無被害と国の資料にも報告されている通り、基準以上の性能の住宅被害が少ないのは明らかです。
風対策も重要です。昨今大型化している台風被害や突風も一年を多発し威力を増していますから、風圧力に対しても「耐風等級2」を確保する様に設計しています。
また、豪雨被害が増える中で、ハザードマップの説明、水害エリアでの基礎高さの調整や水害保険付保など、増え続ける豪雨被害へ対策も心がけています。
災害に強い家には精緻化された住宅性能設計が必要

「耐震等級3」「耐風等級2」と聞き慣れた住宅性能、これらは、住宅性能表示制度(品確法)にて壁量計算等で求める一定の手法もあります。しかし、住宅は立地条件や地盤状況、建物のデザイン、形状から荷重、壁や窓位置、重心や剛心も異なります。幾度も災害に立ち向かう住宅性能を確保する観点では、より詳細な外力の設定と構造計画、采配ができる「許容応力度計算」が必須と考え長年取組んでいます。自然災害により、住宅が全壊、半壊になってしまうと住む事ができなくなりますし、住宅ローンを抱えた上で、住まいを修復する費用を賄うのは困難です。お施主様の財産を無駄にしないためにも、精緻化された住宅性能担保が必要です。
レジリエンス性のある住宅へ

住宅性能と併せ、「レジリエンス性」(強靭性)と言う考え方にも取り組んでいます。発災前だけでなく、発災後への対策、正しく「粘り」や「回復力」が今後の住まいにとって重要です。レジリエンス性には、住宅(ハード)そのものと、地域力(ソフト)などの対策が不可欠。発災後、住宅の損傷が少なければ、避難所や仮設住宅で一時居住する必要性がなくなり、また、住宅の性能が高くなれば「回復力」も高まります。
例えば、「耐震性」「耐風性」だけでなく、「断熱性能」もその一つ。省エネ、エコの観点でも断熱性能向上は有効ですが、災害時にも大きな力として発揮します。「断熱等級4」ではなく、*HEAT20のG1やG2レベルの性能を基本とし、寒い冬や暑い夏に災害に見舞われても、ライフラインが復旧するまで自宅で過ごせる時間を高めています。都市部ですが、時には薪ストーブを導入し、その限られた熱で家を温められる様に、雨水タンク、貯水タンクを住宅に組み込み、飲み水や、トイレ排水等を賄うなど、災害時に活躍できる工夫を施しています。
そして、災害対策で重要なのが地域コミュニティー(ソフト)です。私たちも地域で50年を迎える企業、地域マルシェや住まい手様イベントを企画するなど人と人のつながりに日々取り組んでいます。最近はSNSなども利用しその輪を広げつつありますが、この取り組みはきっと災害時から回復に向かう、復旧、復興の際に役立ちます。ハードだけでなくソフトも含め地域工務店としてまだまだ手掛ける事がありますが、一つ一つの取り組みをバージョンアップさせ、レジリエンス性の高い住宅デザインと街づくりに、これからも取り組んでいきたいと考えています。
*HEAT20
http://www.heat20.jp/heat20towa.html
http://www.heat20.jp/grade/index.html
文=池田浩和(岡庭建設)
監修=リビングデザインセンターOZONE