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住宅&住宅設備トレンドウォッチ

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住宅新商品トレンド ハウスメーカーから富裕層向け商品続々登場

INDEX 2020.10.16

今回は2020年にハウスメーカー3社から発売されたハイエンド(富裕層)向けの商品を紹介します。年間の住宅着工戸数が減少し、棟数実績を伸ばすこと自体が簡単なことではない中で、新築住宅事業の増収を図り、収益をあげる方法の一つが、棟単価を高めることです。ハウスメーカーでは近年、坪100万円を超えるハイエンド向けの商品開発が進んでおり、富裕層もカバーできる事業戦略を構築してきました。

それでは、富裕層は国内にどれほど存在するのでしょうか。野村総合研究所では、預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険など、世帯として保有する金融資産の合計額から負債を差し引いた「純金融資産保有額」を基に、総世帯を5つの階層に分類し、各々の世帯数と資産保有額の推計結果を発表しています。
5つの階層はそれぞれ、純金融資産保有額が3,000万円未満の「マス層」、同3,000万円~5,000万円未満の「アッパーマス層」、同5,000万円~1億円未満の「準富裕層」、同1億円~5億円未満の「富裕層」、および同5億円以上の「超富裕層」として定義されています。2017年では「富裕層」と「超富裕層」の世帯数を合わせて126.7万世帯、内訳としては富裕層が118.3万世帯、超富裕層が8.4万世帯でした。富裕層以上の世帯数は前回調査を行った2015年当時と比較すると約5万世帯増えているとのことです。富裕層世帯は増加し、またコロナ禍においても消費動向は衰えていないとも見られています。

1大きな樹の下にいるような暮らしを提案「KOKAGE LOUNGE」~積水ハウス

「KOKAGE LOUNGE」~積水ハウス 外観
「KOKAGE LOUNGE」~積水ハウス 内観

積水ハウスは、2020年度第Ⅱ四半期決算において、戸建住宅の平均単価がついに4,000万円を超えました。高価格帯の住宅に力を入れ、ハイエンド層のニーズに応えていると言えます。そして今年の9月にも、木造高額住宅の新商品を発売しました。まるで大きな樹の下にいるような豊かな空間でのゆったりとした暮らしを提案する木造戸建住宅シャーウッドシリーズの新商品「KOKAGE LOUNGE(コカゲ ラウンジ)」です。
シャーウッドシリーズでは、型式適合認定が制定された2000 年以降、構造上重要な柱や梁だけでなく、空間を形成する上で重要な役割を果たす屋根や小屋組に関しても研究開発による改善改良や新技術の開発を続けてきました。

この商品の特徴の一つは国内の木造軸組工法で唯一、型式適合認定に認定されている同社オリジナルの小屋組技術で、従来屋根の3.7倍の剛性を有しています。さらに、業界最大級の大断面棟木梁などの構造技術などの先進的な技術が導入されており、最大8m×10mの広大な「勾配大空間」の提案が可能となりました。建物外観としても、この小屋組技術による大胆な切妻屋根が特徴的です。
この空間デザインとしては、勾配天井から最大2.7mの天井高サッシを通じて勾配軒下まで一体に見せるデザイン「勾配クリアビューデザイン」があり、室内にいながらも屋外の自然を感じることができます。坪単価は90万円~(本体のみ・税抜)で、販売棟数としては年間100棟を目標としています。

2機能的、合理的かつ普遍的なモダニズムデザインを実現「RAUMFREX」~旭化成ホームズ

「RAUMFREX」~旭化成ホームズ 外観
「RAUMFREX」~旭化成ホームズ 内観

旭化成ホームズは今年6月、富裕層に向けた邸宅フラッグシップモデルとして「RAUMFREX(ラウムフレックス)」を発売しました。RAUMはドイツ語で「空間」を表す言葉で、この商品では外装、内装それぞれにオリジナルデザインを採用しています。販売目標は年間20棟、坪単価は150万円程度を想定しています。

この商品の発売にあたり、JR新大久保駅を最寄とする総合展示場「ハウジングステージ新宿」にモデルハウスをオープンしました。外観デザインは「モジュラーシェル様式」と称するオリジナルの意匠様式を採用しています。これは建築の成り立ちや部材構成をそのまま意匠とするモダニズム建築のエッセンスを取り入れたもので、75mmと100mmの厚みの異なる2種類の外壁板を並置することで、シンプルさを保ちつつも重厚感のあるファサードを実現しました。さらに、100mm厚のヘーベルウォールのデザインには、細密なテクスチャ加工を施した「ファインストライプ」も新しく開発したものです。

室内の空間デザインには、アーチ状のボールト天井と円柱状の構造柱であるコラムを配列する「ボールト&コラム様式」を新たに導入しました。天井高は標準2.72m、最大3.36mとし、天井や床の高さに変化をつけることで、邸宅に相応しい空間の広がりとゆとりを実現しています。
また、空間造形では、シンプルなモジュール配列による最適な構造架構体を組み、その枠組の中に間取りや設備を組み込む「ハウジングプログラム」と称する設計手法を採用していて、同社が従来から訴求しているLONGLIFEな空間を実現しています。

3木と鉄骨の新ハイブリッド構法『FMT構法』で提案力増幅「ROBRA」~三菱地所ホーム

「ROBRA」~三菱地所ホーム 外観
「ROBRA」~三菱地所ホーム 構造

三菱地所ホームはこの9月より、木造注文住宅ブランド「ROBRA(ロブラ)」を発売しました。1棟当たりの単価は5,000万円以上を想定しています。この商品の特徴は世界初の特許技術「Flat Mass Timber構法(フラットマスティンバー構法 以下、FMT構法)」です。同社はこれまで2×4構法をベースに住宅を手掛けてきましたが、「FMT構法」によってデザインの自由度が格段に高まり、顧客ニーズに幅広く対応することができます。

「FMT構法」は、木と鉄骨によるハイブリッドの構法で、壁や梁といった構造要素が空間内に出てくることが極めて少ないことが特徴です。国産ヒノキを使用した厚さ150mmの「集成材厚板パネル」を、壁・床・天井の構造部材として使用。パネル同士の接合部には専用の金物を、梁には鉄骨を施工することで、高い耐力を確保しています。耐震等級3を維持しながら構造壁量を2×4構法の1/6~1/7に抑えられます。構造壁を外壁に使用する必要もなく、床から天井までの開口を設置でき、スラブを各階層でずらしたり曲線にしたり、木部を現しにするデザインも可能にしました。また、最大3.1mのスラブの跳ね出しが可能で、スラブを利用して大きな庇を設けることもできます。
「FMT構法」は戸建住宅だけでなく、店舗や医院建築、商業施設などの大規模建築への活用も想定しています。

(テキスト/株式会社住宅産業研究所 斎藤 拓郎さん)