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ビルダー販促事例 ポストコロナの情報発信は動画を活用する

INDEX 2020.11.20

新型コロナウイルスの感染拡大以降、住宅購入検討者の行動の変化の一つが、WEBによる情報収集です。緊急事態宣言の期間は住宅展示場に気軽に行くことができず、まずはWEBで情報収集をするという人が少なくなかったようです。ホームページのPV数や資料請求は、コロナ以前よりも増えているのではないでしょうか。家づくりの最初の行動として、「まずは総合展示場に行って、そこに出展している住宅会社から情報を集める」という行動が従来は一般的でしたが、ポストコロナでは、まずはWEBで情報を調べて、気になる会社の展示場やイベントにはWEBで予約を取ってから出かけるという行動が定着するものと思われます。
ポストコロナのWEB戦略として、住宅各社が俄かに力を入れ始めているのが動画コンテンツです。一般的な住宅検討者はWEBで情報を検索する際、パソコンよりもスマホを使うことのほうが多くなっています。スマホの小さい画面で、会社や商品を説明する長い文章を読んでもらうのは面倒に感じられますが、動画はスマホの小さい画面でも見やすく、画像や文字よりも多くの情報を短時間でわかりやすく伝えることができます。スマホでYouTubeやサブスク型の動画サービスを視聴することに慣れている若い世代ほど、動画のほうが情報を探しやすく、理解を深めやすいでしょう。
WEBで動画を活用すると言っても、自社の商品やブランドを認知してもらうための“ブランディング”と、購買行動に移ってもらうための“マーケティング”や“プロモーション”では、考え方が変わってきます。目的によって動画コンテンツの内容や公開方法を使い分けましょう。

1YouTubeチャンネルを開設してブランディング…ヒノキヤグループ、重量木骨の家

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会社の知名度を高め、イメージを向上するブランディングを目的とする動画は、テレビCM等のマス広告に近い考え方です。イメージ映像や音楽で演出して作り込んだ動画を、自社ホームページのトップや専用のランディングページに掲載し、WEB広告・SNS広告から閲覧してもらうような運用方法が考えられます。また、YouTubeにオフィシャルチャンネルを開設する企業も増え、自由な発想でPRを行っています。
ヒノキヤグループでは、グループの公式チャンネルで、俳優の斎藤工氏が出演するテレビCMや、家づくりのアイディア、テクノロジーの解説、IR情報等の様々な動画を公開し、パパまるハウス、日本アクア等のグループ子会社・ブランドごとにもチャンネルを開設しています。また今年7月からは、社長の専用チャンネルを開設しています。「ヒノキヤグループ社長 近藤の考える家」というテーマで、社長自身が家づくりに関する情報や自社の取組について語っています。

SE構法のデザイン住宅のFCである重量木骨の家では、今年10月にYouTubeチャンネル『理想の家が見つかる!重量木骨の家 ハウスコレクション』を開設しました。全国のFC加盟店の施工実例、モデルハウスを紹介する内容で、バリエーションに富んだ実例紹介動画が10月末時点で53本投稿されています。
YouTubeチャンネルは、これまでに接点が無かった視聴者にも自社の取組を知ってもらうきっかけになり、展示場来場者にチャンネル登録をしてもらって、帰宅後に家族で視聴してもらうことで理解を深めてもらうことができます。YouTubeから直接自社のホームページやSNSに誘導して来場予約を取るという即効性は低いかもしれませんが、会社の知名度を高め、イメージを向上するブランディングには有効な手段でしょう。

2物件紹介動画の制作が営業スキル向上につながる…茨城グランディハウス

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YouTubeに投稿するのではなくても、自社ホームページに掲載しているコンテンツを動画に置き換えていくという方法もあります。例えば商品説明や性能、仕様の説明は、写真とテキストだけでなく、設計担当者や営業担当者がその内容を解説する短い動画を掲載するほうが、閲覧者からはわかりやすいでしょう。会社説明やスタッフ紹介も、動画に置き換えるほうが親近感を感じてもらいやすいものです。施工事例やモデルハウスの紹介も、平面の間取り図や写真だけで見せるより、カメラを持って室内を巡回しながら、間取や素材のポイントを解説するほうがわかりやすいのではないでしょうか。
北関東No.1の分譲ビルダーであるグランディハウスの、茨城県での販売を担当する子会社の茨城グランディハウスでは、ホームページに掲載する販売中物件の紹介動画「おウチdeグランディ」の動画投稿を増やしています。きっかけは、緊急事態宣言で集客が減っていた時期に、営業マンの手が空いてしまったことです。接客機会の減った営業マンの時間を有効活用するために、担当する建売物件を撮影して動画を作成してもらうようにしました。あまり長すぎると飽きられて最後まで見てもらいにくいので、1本の動画の長さは2分前後。間取りの特徴や立地、周辺環境等、物件の様々な訴求ポイントを短い動画の中に盛り込むということで、経験の浅い営業マンがそれぞれの物件の特徴を理解し、実際の接客時に物件を説明する際のトークスキルの向上につながったということです。

動画コンテンツは、実際に自社で建てた家に住んでいるオーナーに出演してもらうのも効果的です。ただし、全世界に公開されるYouTubeやホームページに掲載することには抵抗のあるオーナーも多いでしょう。その場合は、視聴者を制限したり、自社に資料請求や見学会予約をした人だけに見せるというクローズな運用をするという方法が考えられます。動画コンテンツが有効であると言っても、何でもYouTubeやホームページに投稿して誰でも見られるように公開するのではなく、オープンとクローズの運用を使い分けることも、WEB戦略として重要になってくるでしょう。

(テキスト/株式会社住宅産業研究所 布施 哲朗さん)

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