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あなたのウチは大丈夫?暖かさの質が冬の健康を左右する

2020.12.18

世界的な新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、在宅ワークという新しい就業形態が広まるなか、長時間過ごすことになる住まいを、「いかに健康で快適な空間にできるか」といった関心が高まっています。東京ガス都市生活研究所は、これまで実施されてきた健康・快適な住まい作りに関する多くの研究をもとに、風邪や感染症対策にもなる「住まいの暖かさと健康の関係」について紹介するレポートを発行しました。今回はその内容を一部ご紹介します。

1風邪・感染症対策には室内の適度な温度・湿度の保持が大切

■冬の風邪・感染症対策、換気・加湿に加えて必要なものは?

東京ガス都市生活研究所が8月上旬に実施した調査において、16歳以上の男女を対象に、冬に向けて「自宅で行いたい住まいの対策」について質問したところ、コロナ対策で注目された「換気」が約7割で最も高く、次いで「加湿」が約5割という回答結果でした(図1)。
換気と加湿の2つは、大多数の方が意識していることがわかります。一方、「室内を暖める」ことへの意識は低く約3割にとどまっています。

図1.自宅で行いたい住まいの対策
図1.自宅で行いたい住まいの対策

冬にむけた住まいの風邪・感染症対策に関するWEB調査 [都市生活研究所2020年8月]

■効果的に加湿するためには、「室内を暖める」ことが有効

空気中の水分が少なく、乾燥した環境はインフルエンザウィルスを活性化させ、人の気道粘膜における異物の除去機能も低下させることから、厚労省ではインフルエンザ対策として室内湿度50~60%RHを推奨しています(図2)。
ここで注目すべきなのが、室温が高いほど空気中に多くの水分を保持することができるという事実です。例えば、同じ湿度表示50%RHでも、室温15℃と25℃を比べると、15℃の場合は、25℃の約半分しか空気中に水分がありません。そのため、加湿とあわせ、室内を暖かく保つ工夫が大切です。G.J.ハーパーが実施したウィルスの生存実験参1)によると、目安として室温20℃以上が望ましいという結果が得られています。空気中の水分を保つために、部屋の温度に気を配りながら加湿することが大事なポイントです。

図2.自宅で行いたい住まいの対策
図2.インフルエンザ対策のための室内環境の目安

出典:厚生労働省令和元年度インフルエンザQ&Aをもとに作成
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html

図3.室内空気の調整方法と効果
図2.インフルエンザ対策のための室内環境の目安

2家が暖かいと風邪の発症率が低下

冬の健康には、家の暖かさが重要ということがわかってきましたが、暖房をしているにもかかわらず、寒さが気になったり、寒さを我慢している方も多いのではないでしょうか?暖かさの質と風邪の関係についてご紹介します。

■室温(空気温度)が同じでも、床や壁が冷たいと、体感温度は低い

暖かさといえば、室温(空気温度)を思い浮かべる方が多いと思いますが、室温と同じくらい床、壁、天井の温度(表面温度)が重要であると言われています。体感温度は以下の通り算定されるので、同じ空気温度でも表面温度が低いと、体感温度が下がり、暖かさの質は低くなってしまします。(図4

表面温度の違いが体感温度に与える影響 模式図
図4.表面温度の違いが体感温度に与える影響参2)
図4.表面温度の違いが体感温度に与える影響 参2)

参考:健康で快適な暮らしのためのリフォーム読本
(暮らし創造研究会 東京大学 前ら 2020.3)をもとに作成

■暖かい家は、風邪をひきにくい可能性がある

家の暖かさを示す指標である「暖かさ得点」は、「風邪の発症率」と相関があることが分かっています※。築40年の寒い家では「風邪の発症率」が63.8%である一方、築5年の暖かい家では35.9%と、約30ポイントも低くなっています(図5)。
また、暖房方式をエアコンなどの気流式から床暖房などの放射式にすると、さらに暖かさの得点が加点され、風邪の発症率は約10ポイントも低くなります。同じ断熱性能でも、足元の暖かい家は暖かさの得点が高いためです。

※ 風邪と住まいの暖かさの関係参4):村上、伊香賀らが開発したCASBEE健康チェックリストの元となる、6097名に対するアンケート調査結果から、暖かさの得点が高いほど、風邪の発症率[%]が低いという相関関係が示されている。
暖かさの得点参5、6):住宅改修シミュレーションで試算された温熱環境の物理量(作用温度、床表面温度、室間温度差)を元に、「暖かさの得点」に換算することが出来る指標が、芹川、田辺、秋元らにより開発された。

図5.家の暖かさの得点と風邪の発症率参3)
図5.家の暖かさの得点と風邪の発症率 参3)

補足)断熱性能がさらに高いG2レベルの住宅における風邪の発症率は気流式で30.3%(13.7点)、放射式で22.4%(15.3点)と試算された。

出典:冬季の住宅における健康性を考慮した断熱改修評価方法の検討
(早稲田大学 田辺ら 2019.9)をもとに作成

※ 風邪と住まいの暖かさの関係参4):村上、伊香賀らが開発したCASBEE健康チェックリストの元となる、6097名に対するアンケート調査結果から、暖かさの得点が高いほど、風邪の発症率[%]が低いという相関関係が示されている。
暖かさの得点参5、6):住宅改修シミュレーションで試算された温熱環境の物理量(作用温度、床表面温度、室間温度差)を元に、「暖かさの得点」に換算することが出来る指標が、芹川、田辺、秋元らにより開発された。

3エアコンなどの気流式暖房を使う場合には、喉の痛みに注意

エアコンなどの気流式暖房は、暖かい気流を送って暖める暖房です。床暖房やパネルラジエーターなどの放射式暖房は、気流なしに直接居住者を暖める暖房です。この暖房方式の違いが身体に及ぼす影響について一部をご紹介します。

■放射式暖房は、エアコンよりせきや痰、喉の痛みが重くなる人の割合が少ない

リビングで気流式暖房を積極的に使った場合と放射式暖房を積極的に使った場合を比較した結果、放射式暖房は、気流式暖房よりも「喉の痛みが重くなる人」「せきや痰がでる人」の割合が少なく、過ごしやすい環境である可能性が示されました(図6)。

図6.喉の痛み・せきや痰の自覚症状の変化参7)
図6.喉の痛み・せきや痰の自覚症状の変化 参7)

出典:冬季の暖房利用が自覚症状に及ぼす影響に関する介入研究(慶應義塾大学 伊香賀ら 2020.3)をもとに作成

まとめ

風邪・感染症対策には、換気、加湿を十分に行うことに加え、室内の暖かさとその質を保つことが大切です。在宅勤務が一般的に捉えられるようになってきたこの機会に、住空間・執務空間について見直してみてはいかがでしょうか。

(参考資料)
参1)Airborne microーorganisms:survival tests with four viruses, J.Hyg.,Camb.(1961),59,479

■図4 表面温度の違いが体感温度に与える影響
参2)「健康で快適な暮らしのためのリフォーム読本(暮らし創造研究会)」をもとに、模式図を作成。ここでは、いわゆる作用温度を体感温度と表現しています。体感には、空気温度、表面温度(放射温度)以外に、湿度、気流、着衣量、代謝量も関りますが、それらを揃えたものとして比較しています。

■図5 家の暖かさの得点と風邪の発症率
参3)「冬季の住宅における健康性を考慮した断熱改修評価方法の検討:空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集2019年9月 若林、田辺ら」をもとに作成。BEST-Hによる、IBEC自立循環型住宅モデル(戸建120m²)住宅での試算、各UA値[W/m²K]S55:2.94、H25:0.87、G2:0.46
参4)「健康維持増進に向けた住環境評価ツールの有効性の検証:日本建築学会環境系論文集2011年76巻670号p.1101-1108、高柳、村上、伊香賀ら」暖かさに関するアンケートは、居間、寝室、浴室、脱衣所、トイレ、廊下の寒さと寝室の乾燥に関する7項目であり、各3点が配点されている。
参5)「CASBEE健康チェックリストの暖かさに関する設問を活用した温熱環境評価法の提案:日本建築学会環境系論文集2018年、83巻748号p.533-542、芹川、田辺、秋元ら」をもとに作成。シミュレーション上の暖かさの得点は、19.5点が満点となる。
参6)「CASBEE健康チェックリストの暖かさに関する設問を活用した冬季住環境評価手法「暖かさの得点」の被験者実験による有効性検討:日本建築学会環境系論文集2019年84巻73号p.845-854、新木、田辺ら」

■図6 喉の痛み・せきや痰の自覚症状の変化
参7)「冬季の暖房利用が自覚症状に及ぼす影響に関する介入研究:日本建築学会関東支部研究報告集2020年3月、光本、伊香賀ら」をもとに作成。平成11年基準以上の断熱性能の住宅において、2018年11月~2月に実測調査を実施。主居室で主にエアコン等の気流式暖房を使用する群45世帯88名、主居室で主に床暖房を使用する群48世帯92名に対し、2週間の介入試験を実施。前半の1週間は通常通り暖房を使用しアンケートを実施、後半の1週間は起床時や日中に居間が十分に暖まるように依頼し介入期間の終了後にアンケートを実施した。合せて、住宅の温熱環境実測を実施した。図6に示すカイ二乗検定の他、多重ロジスティック回帰分析を行っており、個人属性や生活習慣等による影響を調整した場合にも、エアコン群が床暖房群よりも、「のどの痛み」や「せきや痰が出る」状態が悪化する事が示唆された。