1大手各社20年度上期、見通し共に減収減益相次ぐ
大手ハウスメーカー各社の2020年度上期決算は、ほとんどのメーカーが減収減益となりました。1割程度の減収、利益は落ち込みが大きくなりました。特に戸建事業は苦戦していて、増税とコロナによる受注減の影響が表れた決算でした。減収減益ではなかったところと言えば、住友林業と旭化成ホームズ。住友林業は利益で二桁増益できていますが、これは米国戸建事業がほとんど稼ぎ出しているためです。また旭化成ホームズが若干の売上プラスとなったものの、これは好調だったグループの旭化成不動産レジデンスが牽引したことが大きな要因です。本業の戸建住宅は厳しい結果となりました。
ただ期初計画や第Ⅰ四半期の頃から比べると明るさも見えてきています。まず最悪状況を想定した大和ハウスは計画を全セグメントにおいて大幅に上方修正させていますし、大東建託も上期は期初予想以上の業績を出すことができました。戸建受注も一応、今は上向いていますし、減収減益とは言え、戸建や賃貸住宅も最悪期は脱したという雰囲気があります。また緊急事態宣言解除後から急速な回復を見せ、いわゆるコロナの追い風を受けた分野も出て来ていることも確かです。
2好調だった部門は何処か 分譲、海外が全体を牽引
好調分野の筆頭と言えるのが、「戸建分譲住宅」です。コロナ禍で最も勝ち組となったのが分譲系ビルダーで、5月以降、その契約動向の好調は続いています。最大手の飯田グループの第Ⅱ四半期決算は増収増益。12.4%増収、13.6%増益という好決算とし、分譲戸建の販売棟数は半期で24,000棟を超えました。第Ⅰ四半期時にもWEB閲覧数が1.8倍になるなど、戸建分譲へのニーズは確実に動いています。売れ行きの好調さは、未契約在庫数の減少にも表れていて、2019年12月時には完成在庫約1万棟を含む32,000棟分に達していた在庫数は、この9月末には20,716棟まで減少しました。
9月本決算のオープンハウスも増収増益、8期連続で過去最高を更新しました。売上高は6.6%増収の5,759億円、営業利益は7.5%増益の621億円となり、やはり牽引したのは主力の戸建住宅です。仲介契約件数の状況は極めて好調で、特に今年7~9月の四半期においては前年比47.8%増の2,129件、2年前の実績から比較すればほぼ倍増というところまで増えています。テレワークのしやすい戸建需要、それも教育とか飲食等のインフラのことを考えると、やはり郊外よりも都市部に住みたいというニーズをしっかりと捉えていると言えるでしょう。
ケイアイスター不動産も売上利益ともに14%プラスの大幅増収増益と過去最高を更新し、4期連続の最高益更新です。販売価格も上がり、契約は順調さを維持、オープンハウス同様に7~9月の第Ⅱ四半期の契約は45%増と大きく前年を上回りました。10月単月でも金額で49.7%増、受注棟数で36.3%増と堅調を維持しています。同社の場合は、郊外の埼玉、群馬、栃木等での子育て世帯の需要が高まっているようで、都市部、郊外型共に戸建需要は活性化しています。
その他好調なのが「海外事業」です。特に米国での戸建事業が業績を支えている代表が住友林業です。米国の好調さにより、住林の決算は大手の中でも最も良く、大和ハウスも国内は厳しいですが、海外の戸建事業が牽引しています。住林にとって海外事業はグループ全体を牽引する柱となり、海外に進出していたことが、大きくプラス効果を生んだ好例と言えるでしょう。既に年間1万戸体制を築いています。
大和ハウスも同様に米国の住宅売上が堅調であり、第2四半期の中で増収となったセグメントは、戸建事業と商業施設ですが、国内の戸建は1割ほど減収、伸ばしたのは海外です。20年度上期の大和ハウスの海外戸建売上高だけで見ると、587→826億円と40%も増収させています。
3オンラインでの集客好調の住友林業、タマやヒノキヤも受注プラス推移
住友林業は国内戸建受注も好転している1社です。WEBへの集客が好調に推移していて、4月以降のWEBからの集客は7ヶ月連続で前年を上回っています。特に「マイホームパーク」という10のモデルハウスを見学できるWEB展示場の評判は良く、9月末までの期間限定だったものを、集客の良さからこれを常設化していくという方針に切り替えたようです。これら集客効果もあって、受注ベースでは上期は前年を上回り、他のハウスメーカーとは一線を画すくらいに回復しています。
またローコスト系大手やビルダーは、このコロナ下においても好調な受注動向で推移しています。全国区大手のタマホームの第Ⅰ四半期決算(6~8月期)での住宅事業は、引き渡し棟数が上場来最高の2000棟超えで、このうち分譲は217棟で58.4%プラスとなりました。着工平準化策が順調に進み、平均1,757→1,835万円と単価上昇による収益改善も図られ、第Ⅰ四半期の住宅事業としては初めて営業黒字化(昨年7億円赤字、今年1.5億円黒字)を達成したようです。集客自体も7月以降、昨年を上回り、第Ⅰ四半期の集客数は前年比11%増。受注では棟数で2,625棟の10.1%増、金額で12.1%増となりました。
ヤマダ電機のグループとなったヒノキヤグループも受注は好転しています。ヒノキヤグループの9月受注は65%増まで跳ね上がり、10月も4割程度のプラス。ヒノキヤ20年12月期のうち1~9月の第Ⅲ四半期までの決算では、注文住宅の受注棟数は6.8%増の2,573棟、受注金額でも5.7%増となりました。同じグループであるヤマダホームズもコロナ禍でもプラス圏での推移が続いており、タマも含め3社とも受注は好調です。ヒノキヤの場合もLINEやインスタグラム等のSNSの活用は進んでいて、今年1~6月の資料請求件数は昨対で2.2倍となっています。WEBやSNS、そしてオンラインをうまく活用した企業は、コロナ禍でも受注を回復させ、前年を上回まわるペースで推移していると言えそうです。危機時には、あらゆる変化への対応力が求められています。
(テキスト/株式会社住宅産業研究所 関 博計さん)