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住宅&住宅設備トレンドウォッチ

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制度・マーケット情報 ウッドショックと支援制度終了で住宅市場はどうなる?

INDEX 2021.8.20

コロナ感染拡大が過去最高を更新するというこの状況下においても、住宅市場は比較的堅調な動向を示しています。2021年度に入ってからの各社の受注状況、また着工戸数でも前年を上回って推移し、中には過去最高の受注を達成している住宅会社もあるくらいです。
コロナ前よりも人々が家を求めるようになったという機運があるのは確かです。暮らしに求めるもの、ひいては家に求めるものが以前よりも多様化して来ました。ウィズコロナ仕様とか、ニューノーマル仕様と言われるような、非接触による感染予防対策やテレワークに適した家が求められています。
そんな中、今年3~4月頃からウッドショックという新たな問題が出てきました。米国の住宅ブームが震源となり、またコロナによるコンテナ不足で物流が滞ったことで、日本に輸入材が従来通り入って来なくなりました。またそれに伴い木材価格が急激に上昇し、現在もウッドショックの影響が続いています。収束にはもうしばらく時間が必要だと見られ、盛り上がりつつある住宅市場動向にもマイナス影響を及ぼし始めています。

1ウッドショックの影響で各社価格を見直し

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ウッドショックが深刻だと言われていたのは、先行きが見通せない状況であったためです。コロナ感染拡大当初と同じように、これからどうなるのか分からないという不安な状況が続いていたのが、今年の4~5月頃でした。本当に木材が入らなくなるのか、また価格が何処まで上がるのか分からないなどといった状況で、木材業者もプレカット工場も、また住宅会社も先行きが見通せない状況でした。
5月頃には、住宅価格を上げるところも出てきました。例えば、ヒノキヤグループでは、まず工期に関しては、基礎着工は予定通り行い、着工は遅延しないよう徹底しました。そして一方で5月からの契約に関しては価格を改定し、ブランドによって坪2万円~3万円アップさせて対応しました。また5月頃には材の仕入れが滞ったことで、上棟に関しては待ってもらうケースも出てきたようです。それでも1~2ヶ月経って、7月頃からは予定していた棟数が上棟できるようには改善してきています。

アキュラホームでは、6月契約分より値上げを実施しましたが、一方で価格上昇分を補うキャンペーンを行っています。5.625kWの太陽光標準搭載とし、売電メリットを月々1.2万円、年間15.3万円生み出せることをアピールしました。更にオリジナル全館空調を特別価格として90万円(税抜)で提供し、超空間の家 2,130万円(税込み)として販売。更に太陽光搭載住宅における1年間の光熱費保証の仕組みを取り入れました。独自のシミュレーションにより想定される光熱費を表示し、実際の光熱費が上回った場合に超過分をキャッシュバック。逆に節エネしてシミュレーションよりも光熱費が下回った場合にも、その節約分を支払うというものです。価格上昇分の還元策を取りました。
鉄骨系主力の大手ハウスメーカーでも、一部で木造を手掛ける積水ハウスや大和ハウスは、木造住宅の本体価格で1%程度値上げをするという方向で動いています。プレハブ大手であってもウッドショックの影響で価格変更は余儀なくされています。
一方で、飯田グループでは6月納入分の木材からは価格上昇の影響を受けながらも、海外の拠点を通じて調達ルートを拡充し、一部では国産材利用を進めて、今年度の販売物件に関しては、値上げは踏みとどまったようです。いずれにしても、木材不足に陥らないよう計画通りの事業運営に努めることが重要です。

2受注と着工にどれくらい影響が出ているか

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ウッドショックは確かに住宅業界にマイナスの影響を及ぼしましたが、元々輸入材に頼り過ぎていたり、国産材の利用を進めてこなかったことも問題でした。また材の仕入れ価格もそうですが、職方の単価も上がっていて、本来は住宅価格自体を上げていくことも必要なのかもしれません。
価格を上げたから受注が落ちるのでは、というのは実はあまり関係なさそうです。例えばヒノキヤグループでも、値上げしたために受注が落ちたということはなく、相変わらず受注は好調に推移できています。月次受注動向は、12ヶ月連続で前年比プラスを維持して、今年1~6月の受注実績は累計で前年同期比で52%増、半年累計で2,500棟という過去最高の受注実績を出しました。

アキュラホームも同様で、確かに5月には価格改定前の一種の駆け込みのような動きはあったようで、5月の受注は単月で過去最高を達成しました。ところが価格改定後の6月、7月になっても前年を上回る受注を確保しています。この両社の動向を見る限り、坪単価を上げること自体はほとんど受注に影響はしないと言えるでしょう。
着工に関しても、おそらく大きな影響は出てこないものと見られます。上棟で遅延が発生したというケースはありましたが、足元ではプレカット工場でも従来通りの稼働率に戻ってくる等、材の流通自体は落ち着きを取り戻しつつあります。ちなみに持家着工は今年の6月まで8ヶ月連続で前年を上回り、建売住宅も5~6月は前年比プラスでマイナス圏から浮上してきました。昨年落ち込みが大きかった分、着工は前年比では堅調な推移となるはずで、多少ウッドショックの木材不足影響が出たとしても、大きな着工減ということにはならないはずです。

3まもなく支援制度が段階的に終了、その後反動減は?

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木材の価格面では、もう一段上がってきそうだと見られます。急上昇した木材先物価格は、5月上旬をピークに下落に転じているようですが、日本に入ってくる輸入材は、8~9月くらいにもう一段上がりそうです。建物本体価格に占める木材の価格は10%程度だと言われていますが、会社によってはウッドショック前に比べて50~100万円程度の価格変更が行われることになるかもしれません。

前述の通り、単価上昇と受注に大きな相関関係はないと見られますが、9月末には政府支援制度である住宅ローン減税の延長措置が終了してしまいます。分譲住宅では11月末で終了、また10月契約分でグリーン住宅ポイントのメリットも終了します。9月以降立て続けに支援制度が終了時期を迎え、その時期にウッドショックの価格上昇が重なってくると、住宅市場環境としては少し顧客の動きが鈍くなる可能性はあります。昨年の秋頃から比較的堅調だった住宅市場が一巡して、失速してくることもあり得ますので、秋頃からは何かしらのキャンペーンを打つ等、対策を取っておくことが必要でしょう。
ウッドショックが完全に収束するのかは、米国住宅の勢いが何処まで続くかがカギではあるでしょうが、SDGsの観点からも継続的な木材需要は世界的にしばらく続くと見られます。木材価格自体は大きく下がりそうにはありません。国産材利用などを含めて、いつ何時起こるか分からないショックには備えておく必要があります。

(テキスト/株式会社住宅産業研究所 関 博計さん)