住宅&住宅設備トレンドウォッチ

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住宅新商品トレンド 住宅もカーボンニュートラル実現へ

INDEX 2021.10.15

昨今の建設業界において、木材活用が進んでいます。先日の東京オリンピック・パラリンピックにおいては、「杜のスタジアム」というコンセプトで誕生した新国立競技場が話題となりましたが、有明の体操競技場も注目すべき建築物の一つでした。この建物は屋根に鉄骨などが用いられず、北海道、長野県産のカラマツの集成材が構造梁として採用され、世界最大級となる全長約90メートルの木造のアーチが屋根を支える構造が特長です。屋内から天井を見上げると、格子状に並ぶ木のデザインが印象的です。木は大架構の構造だけでなく、外装、観客席にも使用されており、至るところで木のぬくもりを感じることのできる空間になっています。

近年、海外においても木材利用は積極的です。その背景には世界各国が共通目標に掲げるカーボンニュートラルの実現があります。木材はRCに用いられる鉄筋やセメントといった建設資材などと比較すると、資材生産に要するエネルギーが極めて少ない材料と考えられています。そして、特に開発が進んでいるのが、CLTを用いた建設技術です。これまで高層ビル等の大規模建築物においてはRC構造やSRC構造とすることが一般的でしたが、その代替建材としてCLTが期待されています。ラミナを直交させることで出来上がるCLTはRCに劣らない強度を有し、海外では既に10階建て以上の建設事例もあります。欧州に出遅れながらも、日本国内のゼネコンや設計事務所の多くがCLTを用いた建築技術開発に取り組んでいます。
また、国内においては、人工造林によって木資源が増加しているというバックグラウンドがあります。人工造林の樹齢を面積ベースで見ると、40~50年がボリュームで、20~30年の若い人口造林が少ないです。木材が循環資源であるためには、若年の人工造林が多くあることが条件の一つであり、伐採更新が急務です。建設業界にとってカーボンニュートラルの実現と森林環境の回復、維持は、早期に取り組むべき中長期課題と言えます。

1暮らし、健康、環境の持続可能性を追求「Green Infrastructure Model(グリーン・インフラストラクチャー・モデル)」~ミサワホーム

Green Infrastructure Model(グリーン・インフラストラクチャー・モデル)外観

ミサワホームは7月、コンセプト住宅「グリーン・インフラストラクチャー・モデル」を開発・発表しました。同社は、再生可能エネルギーの自家消費率や建物の長期利用、防災性能の向上など、脱炭素に向けたすべての取組みを「グリーン」として考えています。また、エネルギーや水などの生活インフラのほか、働く場所や社会とのつながり、感染症対策など安全で健やかに暮らすための技術、災害に対する安全、緑に囲まれた安らぎなど、人々が安心して豊かに暮らすための基盤すべてを「インフラ」として捉えています。「グリーン・インフラストラクチャー・モデル」は、人々を支えるインフラのひとつと考えるデザイン提案によって、暮らしと健康、環境、3つのサステナビリティを目指したモデルです。
再生可能エネルギーの自家消費率を高める仕組みとしては、屋根・外構に設置した太陽電池、燃料電池、蓄電池による全負荷型3電池連携システムを設けています。エネルギーの自立性向上を図り、停電時にも住まい全体に高出力の電力を供給できるため、災害時でも普段に近い暮らしが可能です。
モデルハウスのプランについては、1階をシェアオフィスとしても貸し出せるパブリックな空間とし、2階を居住空間としています。職住近接の理念をプランに落とし込み、住まいをマルチプレイス化した暮らし方提案が特徴となっています。

2高断熱・高気密を最大限に向上「日本の家・檜の家」~日本ハウスホールディングス

日本の家・檜の家 外観

日本ハウスホールディングスは9月、主力商品の構造を刷新し、国産檜柱を構造躯体に使用する「新木造ストロング工法」を採用した「日本の家・檜の家」シリーズを発売しました。同社は従来より檜無垢材による家づくりを強みとしてきましたが、カーボンニュートラル実現を見据え、気密・断熱性を最大限に高め、エネルギーロスを最小限とした住宅を手掛けていく方針です。
「日本の家・檜の家」シリーズは、グレード別に「館」「極」「輝」「雅」という4タイプに分けられています。グレード別に性能が異なり、最高ブランドの「館」「極」は4寸骨太柱にHEAT20 G2レベルを上回る断熱性能Ua値0.25、C値1.0以下を実現しています。また、それぞれの商品で全棟気密測定検査を実施し、新築全棟でUa値とC値の認定する性能証明を発行することとしました。
プランニングは施主が高齢となっても生活しやすいメーターモジュールをスタンダードとし、デザイン面では檜の無垢床材の他、壁・天井にも檜の突板材を採用し、室内空間の調湿機能、抗菌機能を高めることで、健康で快適に長く暮らせる商品を完成させました。

3木造マンションに挑戦「MOCXION(モクシオン)」~三井ホーム

MOCXION(モクシオン)外観

三井ホームはこの7月、木を構造材に用いた木造マンションの新ブランド、「MOCXION (モクシオン)」を立ち上げました。このブランド名の由来は、「Mitsui Home Original Construction method」の頭文字と「Mansion」と「minus Ion」の語尾をとったものです。注文戸建住宅を主軸にしてきた同社にとって、木造マンションは新たな挑戦であり、中層以上の共同住宅の木造化・ 木質化も促進することで、SDGs や脱炭素社会の実現を目指すとのことです。
MOCXIONの第1号物件は、「(仮称)稲城プロジェクト」です。20年11月に着工し、21年11月に竣工する予定です。断熱等性能等級4、一次エネルギー消費量等級5、劣化対策等級3と、住宅性能評価3項目での最高ランクに加え、ZEH-M Oriented(BELS 認証)も取得しています。建物は5階建てで、耐火性能を考慮して1階がRC造、2~5階が木造の混構造となっています。構造における最大の特徴は、独自開発した高強度の耐力壁「MOCX wall(モクスウォール)」です。これは一般的なツーバイフォー工法の枠組みに構造用面材「パーティクルボード」をクギ打ちしたものですが、壁倍率31倍に相当する耐力を有します。
三井ホームが以前建設した5階建ての木造建築物では、MOCX wallよりも壁倍率の低い耐力壁を2枚並べていましたが、MOCX wallであれば1枚で済むとのことで、工期短縮とコスト低減が期待できます。2階以上を木造としたことで、施工期間における二酸化炭素排出量は同等規模のRC造の住宅よりも半分程度に減らせる見込みです。

(テキスト/株式会社住宅産業研究所 斎藤 拓郎さん)

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