高齢期 どこに住むか?
若い時代に買った家。坂道に面し最寄り駅へはバス、買い物は車で、など当時は何でもなかったことが、高齢になると問題になってきます。50歳になったら、遅くとも65歳までには、30〜40年後を見越した長期計画を立ててみることをお勧めします。高齢になって自立できない時は施設に入るなど、今まで考えたことのない状況が浮かぶかもしれません。
環境と友達が大切
体験から言えることは、高齢期の住まいに大切なことは「環境」と「友達」です。環境は、周りの環境と住まいの環境に分けられます。友達は社会的なつながりと考えてください。そのためにも人が行き来できる仕掛けは大切です。
周りの環境とは立地条件です。買い物、病院、公共施設など暮らしに必要な所が近くにありますか?騒音や交通量はどうでしょう。陽当たりは?条件を整理し同じ場所に住み続けるかどうか見極めるとよいと思います。
耐震・省エネ・バリアフリー
高齢期の住まいにはこの3つが欠かせません。 バリアフリーは段差の解消や手すりの取り付けといった狭義の意味で使われることが多いですが、私は暮らしのなかで不便に感じることや危険なことなども含めていますので、地震も1つのバリア、高い光熱費も広い意味でのバリアといえます。寝室だけでも地震に強い構造にしておくことが大切です。陽当たりや風通しをよくすることは健康的な暮らしのためだけでなく、光熱費の節約にもなります。断熱性とともに設計に取り入れたいものです。
逆算の設計方法
間取りは特に重要です。最終的には昼間の生活の主な場所となるリビングダイニング、キッチン、寝室、トイレや浴室などの水回りを同じ階にすることが大切です。2階に分かれる時は、将来的にエレベーターがつくよう考えておくことも必要です。ヘルパーが入ることも想定しておきましょう。
最終的な形を考え、それを土台にして今の生活に合った間取りを考えるのが逆算の設計方法。そうすることで長く自宅で暮らせます。例えば便器を廊下と平行に置くことで、介護スペースを生み出せます。
日常の動作、動線を重視
寝室からトイレへの動線を短くしたり、動線にそって物の収納を考えておいたりすれば、自立した生活が長く続けられます。動線にそって室温の計画をすれば冬でも動きやすくなります。
手すりは動作が変わる箇所に必要です。棒状の手すりだけでなく、写真のような何気ない手すりをつける配慮があれば事故も減らせます。
「高齢期でも自宅で住み続ける」をサポートするために
今回は自宅リフォームで気づいたことを挙げましたが、新築の企画設計でも役に立つことと思います。
高齢期の住まいに欠かせない視点として、「新バリアフリー15か条」もあります。改めて見直しておきたい、自宅で住み続けるためのバリアフリーのポイントを是非ご参考ください。
https://www.kourei-sumai.com/01npo/pdf/sbf15-2016.pdf
テキスト=吉田 紗栄子(一級建築士/バリアフリーコンサルタント)
監修=リビングデザインセンターOZONE